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人は見かけによらないものだ

「カツラが飛んだら記憶も飛んじゃうタイプの人なんですよ。その日、たまたま強風でカツラが飛ばされてそれをずっと探していたようです」


「何だそれ」


因みに今回のダンジョン破壊の件はその師範に伝えられ、大目玉を喰らったそうだ。


たまたま出会した時、怒られると思ったので咄嗟に水でカツラを吹き飛ばしたらしい。


「ところで橘さん、本当でよく無事でした!」


「あんたがそんなヘマこくから橘くんが死にかけたんだからね」


七瀬はエリスにこれまでの事の顛末を話す。するとエリスは想像以上に橘に迷惑をかけていた事を知り、話の後半になるにつれて徐々に顔が青ざめてくる。


「で、どう落とし前付けるつもり?」


七瀬は怒った表情でエリスに詰め寄る。エリスは冷や汗を掻きながら七瀬の圧に押されている。


「そ、そういえば橘さん、剣持ってませんでしたよね?プレゼントします!」


慌てて橘の方に駆け寄り、禊の提案をする。


「剣ってどうして?」


「橘さん戦闘系なのですから、剣が無いと最大限の力を発揮できないんですよ」


エリスはこれまで聞いた事のない早口で橘に力説する。


「魔法使いは杖ってイメージがあるように、戦闘系といえば剣なんです!お詫びも兼ねて1本プレゼントさせてください!」


「そ、そういうなら是非」


橘は別にエリスに対してそこまで恨んでいるわけではないし、何となく剣というと高そうなイメージがあったのでラッキーと思いながら提案を受けることにした。


「で、ではさっきお話しした私の師範のところへ行きましょう〜!」


「全く調子がいいんだから」


七瀬のお小言などお構いなしといった様子でエリスを先頭にお城に向かって3人は歩き出した。


そういえばこんな明るい時間に正面からお城に入るなんて初めてだ。何だか男心をくすぐるようなシチュエーションに内心ワクワクしている。


ふと七瀬の方を見ると、同じく目を輝かせ内心ワクワクしているんだろうといった表情をしていた。


城内の警備をエリスの顔パスで通過し、師範がいるという部屋に向かっていく。


エリスはどこか能天気に手を前後にぶらんぶらんしながら鼻歌を歌い歩いていた。


「エリス、今日は大人しくしとけと言ったよな?」


しかし、突然後ろからの威圧的な声にエリスの動きはピタッと止まった。


「え、そんなこと言ってましたっけ?」


「お前ってやつは!」


エリスのすぐ隣に剣が突き刺さる。ただならぬ雰囲気、ただならぬ風貌、橘と七瀬はその雰囲気に威圧され何も手出しすることができなかった。


そのまま時が止まる。心なしかどこか風も強く吹き、緊張が走る。


しかし次の瞬間、高圧的な声の主のカツラが空高く飛んでいったのだ。


すると


「へぁあ?」


っと腑抜けた声がしてきた。声の主は先ほどまで鋭い眼圧で威嚇していた男だ。


「えっと〜あ〜何してたっけ?」

その腑抜けた声に対し


「「何だこれ!!」」


橘と七瀬は思わず突っ込んでしまう。


「あ〜えっと〜彼が私の師範、ライネルさんです。」


あぐらをかいて鼻くそをほじり出したつるっぱげの男性を見て何となく見覚えのあるような感覚を覚える。確かにあの時エリスが水をかけた男性にそっくりだ。


遠くから走り寄ってくる女性が、黒っぽい物体を持ってこちらに走ってくる。


「これ、ライネルさんのじゃないですか?」


彼女は駆け足でさっき飛ばされたカツラらしき物体を手に持って走ってくる


「あ、すいませんありがとうございます!」


その様子を見たエリスはヒソヒソ声で橘に耳打ちする。


「ねえ、橘くん。これってさっき言ってたカツラの?」


「多分」


エリスはカツラを受け取り、深呼吸をする。


そしてまるで王冠を授与する女王の如く、その男性の頭にカツラを被せる。


するとなんということでしょう〜!


「ゴラァァァア!」


これまで生気を感じなかった物体に命が宿りエリスを怒鳴りつけているではありませんか〜!


「「そうはならんやろ!!」」


橘と七瀬は再びハモりながらツッコむ。そんな二人をよそ目にエリスは


「ら、ライネルさん!外出禁止を忘れていたの、本当にごめんなさい!」


ここでエリスは幼少期より学習した必殺技、先手謝罪を繰り出す。


「まぁ、気をつけろよ」


もう少し一悶着あるかと思ったが意外とすんなり謝罪を受け入れたことに二人は目が点になる。


「で、コイツらは何だ?」


突然こちらを振り向き、鋭い眼光で睨みつけてくる。その眼圧に思わず七瀬は


「ヒィッ!」


っと強張った表情をするのだった。


「この方々は私は異世界から連れてきた方で〜〜」


エリスは俺たちの説明、そして自分が迷惑をかけてしまった事を説明する。


するとライネルは二人に近づき、再び鋭い眼光で二人の目を交互に見る。


橘は怯え膠着し、七瀬は相変わらず強張った表情で冷や汗をかいている。


怒られるか、殴られるか、それとも殺されるかもしれない。そんな緊張感が走るが、またもや意外な言葉が発せらる。


「うちのエリスがすまなかった」


まさか謝罪されると思わず、面を食らった表情をする。


「い、いえ!僕たちもエリスのお陰で・・・」


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