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第二話:聖女様は失恋旅行

失恋した聖女様は旅に出るのですが、もうトラブル臭しかしません。

果たして目的のステキな旦那様を見つけられるか?


「エマリアル様、どうしたってんですかぁ?」



 神殿でぐったりとしているエマリアルにその昔娼館から救い出された少女、リーリアはかわいらしい容姿に赤い短めの猫っ毛の髪の毛を揺らしながら聞く。

 エマリアルは涙で赤く目を腫らした顔のままリーリアに言う。



「私、アルベルトにフラれてしまいましたわ! もう生きていくことが辛いですわ!!」


「いや、失恋したくらいで大げさな。しかもアルベルト様は十五歳で私の一つ年下じゃ無いですか? エマリアル様は二十五歳ですよ?」


「ぐっ! やっぱり年ですの? 男はみんな若い()が良いのですの!?」


「いや、需要はあると思いますが、聖女様相手に言い寄ってくるのは恐れ多いと言うか」


「では聖女を辞めればいいのですわね?」


「いやあんた、そうそう聖女様なんて辞められないでしょうに」


「でもアルベルトは振り向いてくれないし、このままでは女としての幸せを(つか)むことなく枯れる華になってしまいますわ!!」


「ああ、めんどくさいなぁ。で、エマリアル様はどうしたいんですか?」


「それは、その、ステキな殿方を見つけて女の幸せを(つか)みたいのですわ」


「それで好みの男性は?」


「それは、アルベルトのような少々幼い感じが残る、『お兄ちゃん♡』って呼べるような男性が////」


「こじらせてんな。良いですかエマリアル様、自分のお年を考えてください。アルベルト様って言ったら十五じゃないですか!!」


「出来ればもっと下でも私としてはドストライクですわ!!」


「いやそれ、犯罪だから! とは言え、それ相応の御仁の話なんてこの神殿いる限り無いだろうしなぁ……」


「では私諸国漫遊の旅に出ますわ! そしてこの失恋の傷を(いや)しつつ新たな出会いを求めるのですわ!!」


「いきなりかよ!? いや、いくら魔王倒したからって言っても女一人で諸国漫遊とか危ないですってば!」


「では誰かついて来てください。ここにいたらお婆ちゃんになっちゃいます!」


「ああ、もう。言い出したら聞かないんだから。仕方ない、私も付いて行きます。エマリアル様には恩がありますし。そうだ、護衛にケルスあたりもついて行かせましょう。あの男は聖女様には憧れてるし、おっさんだけど筋肉隆々の武僧侶(モンク)だから強いし!」


「いいですわね! では早速最大司教様にお話して出発ですわ!! 待ってってね、未来のダーリン♡」


「はぁ~、ホントめんどくさいお方だ……」



 こうしてエマリアル含め元娼婦の付き人リーリアと武僧侶モンクのケルスによる諸国漫遊の旅が始まったのだった。


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