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フェイタリズム  作者: 倉木元貴


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番外編 1

 2019年8月10日。山の日を前にしたこの日は、僕の命日になるかもしれない。

 何でだろうか。何故僕は、如月さんに急に誘われたのだろうか。相手が相手ならデートのような気分が上がって楽しいものだが、それは、如月さんだけには当てはまらない。

 本当に何誘われたか分からない。もしかして僕を殺すためにこんなことをしているのかもしれない。それ以外に如月さんに誘われる理由が分からない。

 まさか、2人きりとかじゃないよな。そんなの違う意味で僕の心がもたない。想像してみろ、あの如月さんと2人きりだぞ。

 思ってはみたものの、割と如月さんと2人きりになる機会かあったことを思い出した。

 毎回何とか乗り切っていたわ。

 どの時も、集中が必要な別のことをしていたから、如月さんと2人きりだと言う意識はまだ少なかった。でも、今回は違う。ほぼ確定の2人きり、ほぼデートだ。それとも密かに他の誰かが来てたりするのかな。それはそれで、殺意以外に合わせる理由がない気がする。

 朝起きて、如月さんから来ていたメッセージが夢だったのではないかと思っていたが、如月さんとのトーク履歴にはしっかりと今日のお誘いのメッセージが残っていた。どうやら逃げ切ることはできないようだ。そう考えて諦めた僕は簡単に身支度を済ませた。

 自転車に跨ったのはいいものの、ペダルに足を乗せたくない。何なら漕いで自転車を進ませたくない。こんなに足取りの重い日は、今までで今日が初めてだ。でも、遅れて行けば、それこそ大問題になりかねない。鬼か蛇かの二択。鬼に金棒で殴られれ即死にするのか、蛇に噛まれて時間差で死ぬのか。選びたくない究極の選択。選べるのなら後者の方がマシかもしれない。よく考えると、僕には選択肢はない。行くの一択だった。

 意を決してペダルに足を掛け、自転車に乗り始めてまだ間もない子供のように、フラフラと運転をしながら、僕の最寄り駅に向かった。

 元々予定していた汽車は、あと二分で出てしまう。最悪次の便でも送れないから早めに出て正解だった。まあ、時間を掛けてしまったのは僕だけど。

 この時はまだよかったと思っていたけど、真夏の昼前に、冷房も効いていない駅で待つことは、地獄の様な時間になると想像できなかった。間違いなく如月さんのことを意識しすぎたせいだ。

 ただ暑い中、二十分も汽車を待った。これは失敗だった。スマホを見ようにも、炎天下で日光が明るすぎてスマホがいまいち見えない。太陽光の反射もうざい。イヤホンはこんな時に限って鞄からなくなっていた。そういえば、合宿に行くのに別にいらないからと机の上に置いていたのだった。

 しかもこの駅は超を付けたいほどの田舎。

 少し歩けば大きめのショッピングセンターがあって、駅の目の前には高層のマンションがあるが、駅構内の待合室から見える景色は、田園風景にポツンとパチンコ店があるだけだ。今までに何度も見ていて、特に変わりなく同じ景色が広がっているから、ものの数秒で見飽きる。

 ああ、一番右端の田んぼが耕作放棄地こうさくほうきちになっているな。それ以外の変化はない。

 暇ついでに、スマホのバッテリーも勿体無いから、時計で時間を確認するために無人の駅舎に戻る。

 汽車が来るまではあと10分ないところか。さてその10分どう時間を潰そう。

 何もすることがない僕は、駅舎で5分だけ時間を潰して、改札と言えるのか怪しいただの扉を通り抜けて、駅構内に戻る。

 屋根のある場所に居場所を定めるが、守れているのは頭だけ。足は直射日光にさられていた。

 何で、駅舎の方で時間を潰さないのか疑問に思う人もいるだろう。理由は簡単だ。駅舎の方が暑いからだ。無人で人の利用も少ない駅舎には、もちろん冷房なんかはかかっていなくて、日陰は作られているが、なんせ風の通りが悪い。構内に行く扉から外に出る扉まで一直線で作られていて、その通路は確かに風が吹く。だけどそこはあくまで通路。5歩くらい歩いたところには少なからずのベンチがある。座りたい欲望には勝てないのだ。ベンチがあるのに座らないなんてベンチに失礼だとは思わないだろうか。座ってあげないとベンチの存在意義がなくなる。だけど、ベンチに座れば風の当たらない蒸し暑い駅舎で過ごすことになる。蒸し暑いのもあるけど、南向きにある何で作ったと言わずにはいられない大きな窓のせいで、直射日光にもさらされるのだ。冬はすごくあったかいから悪いことばかりではないのだけど。

 まあ、つまり、そういう理由僕は夏でも校内で待つのが好みなのだ。こっちは目の前に田園風景が広がっているから、運がよければ田園からの涼しい風が吹く。それを時々身体に受けて、気持ちが晴れるからそっちの方がマシなのだ。

 考え事をしている間に、ガンガンに冷房の効いた汽車が到着し、中に乗り込む。入った瞬間は生き返る様に涼しかった。だけど、さっきまで暑いところにいたせいで、次の駅に着く頃には汗も乾いて寒くなってきていた。

 物理的な寒気に加えて、精神的な寒気も感じていて、もはや熱でもあるくらい寒かった。

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