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フェイタリズム  作者: 倉木元貴


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地学部合宿会 28

 山河内さんは僕が逃げないようにか、左腕を掴んでいた。普段なら女子から腕を掴まれるなんてことはないから、叫び狂いたくなるくらい嬉しいことだけど、今だけは違う。叫び狂って、走ってこの場から去りたい。

 

「だ、だから……その……なんていうか……も、もちろん、山河内さんのことはすごいとは思っているけど……」

 

「思っているけど……何?」

 

「……思っているけど、その……き、如月さんのこととか……今だって、堺さんに告白がどうとか言っていたじゃん……そう言う勘違いしているところのことを言ったまでで……」

 

 言ってしまった。真実は言わないつもりだったけど、言い訳が思いつかなくて言ってしまった。あーあ、これは終わったな。ここでも地獄、帰っても地獄だ。

 

「そう……なの……」

 

 僕が思っていた以上に山河内さんはダメージを受けていた。

 

「いや、だから、違うから……山河内さんは頭も良くて、運動神経も良くて、誰にでも優しくて、人としては同学年だけど、すごく尊敬しているよ。それだけでも、常人にはできないことだから、誇りに思って……」

 

 何言っているんだ僕は……自分の口で言っておきながら、何を知っているのか全くわからないい。何だこの安い慰めは。それ以前にこれは慰めになっているのかさえ怪しい。とりあえず、走り去って海に飛び込みたい。恥ずかしすぎて、山河内さんの顔が見れないや。

 

「そんなに褒めてくれるんだ……ありがとう……」

 

 あれ、もしかして、山河内さん照れている? 顔を見てみたいけど、今は見れない。と言うか、何で山河内さんが照れるんだよ。余計に恥ずかしいわ。

 

「じ、実はさ……歌恋にも似たようなことよく言われるんだよね……もっと周りを見てって」

 

 なるほど、ショックを受けていたのはそれが原因か。それにしても如月さん。対応の温度差が激しすぎる。山河内さん相手にはオブラートに包みすぎだろ。僕の時は直接しか言わないのに。

 

「山河内さんはそのままでもいいと思うよ。自分に素直で、まっすぐなところも山河内さんの長所だし。それに、性格ってそう簡単に直せないよね。でも、これだけは言わせて、僕は堺さんのことは、人としてはすごいって思っているけど、恋愛の好きではないから」

 

 山河内さんはキョトンとしていた。そうなんだ。これが僕がバカだと言ってしまった所以だ。何でいつも勝手に思い込んでいるんだ。

 

「だ、だって……真咲があんな嬉しそうに……ってことは、まさか逆だった……」

 

「それはないから!」

 

 頭がいいが故に深く考え込んでしまうのだろうか。ここまで勘違いされるのも困るけど、山河内さんも完璧な人間じゃないと分かれば、なぜだ安心する。

 

「そ、そうか……中田君は確か歌恋だったもんね」

 

「それもない」

 

 これは前から何度も誤解だと言っているのに、一向に信じてくれないんだよな。僕ってそんなに信用ないかな。

 

「だって……歌恋といつも仲良いし、二人でヒソヒソ話なんかもしているじゃん。恋愛じゃなければ、何でそんなことをしているの?」

 

 ヒソヒソ話をしていることは認めるけど、それはどちらかといえば、脅されているような時が多い。と言うか、僕の顔を見ればわかると思うが。そんな楽しそうな顔をしてヒソヒソ話なんてしたことがないぞ……多分。

 

「しゅ、主従関係……」

 

「主従関係?」

 

「でも、どちらかといえば、従者じゃなくて奴隷だけど……」

 

「奴隷? 何のことを言っているの?」

 

 まあ、当然こうなるわな。でも、言えないんだよ。如月さんと僕のことは。言ったら最後、僕は山河内さんに見放され、如月さんに粉々にされる。間違いなく。

 山河内さんに秘密にしておくのは心苦しいが、言えないものは言えない。僕は平穏で退屈しない日々を望んでいる。問題はできるだけ起こしたくないのだ。ただ、今の僕は余計なことしか言わない。このピンチはどうやって乗りろうか。「奴隷」なんて言葉、どうして言ってしまったかな。こんな言葉の弁明なんてもうないだろ。奴隷は奴隷以外の使い道なんてないよ。揶揄する言葉でもないし、逃げ道なんて……あったかも。

 

「いや、勝手に僕が思っているだけで、実際はそうじゃないんだけど。ほ、ほら、最近よくある過大な揶揄表現の一つだよ。実はさ、僕に地学部を勧めてくれたのはなんだかんだ言いつつ如月さんなんだよね。そのおかげで、山河内さんや堺さん、岡澤君に中村君に出会えたんだ。だから如月さんには頭が上がらないというか。何か言われたら二つ返事をしてしまうんだよね。それで“奴隷”って言っただけ。それ以上でも以下でもないよ」

 

 我ながら頑張った方だ。嘘と真実をうまいこと織り交ぜれている。早口で少し臭い言葉も混じっっているが、それは今は良しとしよう。

 

「そうだったんだ……でも、前に、星が好きだからって言ってなかったっけ?」

 

 僕は言葉を失った。

 これだから頭のいい人は苦手だ。何でそんなどうでもいいことを覚えているだ。言った本人すら忘れていたんだぞ。はあー、何で毎度毎度こんなことになるのかな。本当に運がない。いや、僕がもっと対策をしていれば、こんなことにはならなかったのか。今度はなんて言い訳しよう。

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