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フェイタリズム  作者: 倉木元貴


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地学部合宿会 27

「え、えっと……その、嫉妬したって言うのは、つまり……どう言うこと?」

 

「嫉妬」と言う、山河内さんの姿がずっと脳内に浮かんでいるせいで、どう言うことなのか全く理解ができていなかった。ただ、山河内さんが言った「嫉妬」だけが今ある事実だ。

 僕はもう、この言葉にずっと囚われていた。いい意味で。

 

「ち、違うから。そう言うのとは違うから! ただ、真咲と楽しそうに話していたから、ちょっとモヤモヤしただけ……ま、真咲と一番仲がいいのは私だからね!」

 

 僕の脳みそはまだ理解できていなかった。「真咲と一番仲良いのは私だからね」そう言った山河内さんの言葉を、五回脳内で再生してようやく理解できた。山河内さんは、僕と楽しそうに話している堺さんに嫉妬を向けたのではなくて、堺さんと楽しそうに話している僕に嫉妬の心を向けていた。

 

「なんだ……そんなこと……」

 

 あからさまにがっかりした表情を浮かべていただろうけど、山河内さんは僕の方を見ていないから、多分気づいていない。見られてなくてよかった。もし見られていて、問い詰められたら弁明の余地はなかっただろうからな。危ないところだった。

 山河内さんは俯いたまま、悲しそな表情を浮かべて、小さく口を開いた。


「一番の友達だから、真咲に告白すのなら、教えて欲しい。何か協力できることもあるかもしれないから……」

 

 また盛大な勘違いを山河内さんはしていた。

 どれだけ違うって言っても、一向に信じてくれなかった山河内さんだから、今回も似たような流れになりそうだ。

 

「ちょっと待って。勝手に話を進めないで。僕は堺さんに告白するつもりなんてないよ」

 

 僕の言葉を聞いて、山河内さんはポカンとしていた。

 前から思っていたけど、どうしてそんな盛大な勘違いをして、違っていたら思考が停止するんだ。違うと言っても信じないし、山河内さんって勉強はできるけど、意外と頭が硬いよな。

 

「え⁈ だって、あんなに楽しそうに話していたのに⁈」

 

「どこをどう見て、僕と堺さんが楽しそうに話していたって言うんだ……」

 

 側から見たら楽しそうにしていたのだろうか。そうだったなら、自覚してないだけで、僕はドMだ。あんなに詰められていたのに、楽しそうにしていたなんてあり得ない。まあ、山河内さんは天然キャラでもあるから、そう見えていたと言われても、全然信憑性がないけど。

 

「だって、真咲が楽しそうに跳ねていたから……」

 

 それを見て楽しそうにしていると言うのだったら、僕は全く見られていないと言うことだ。だって、堺さんとは相反する表情を浮かべていたであろうから。

 些細なことだろうけど、こんな些細なことでも、経験のないお年頃の男子は、心を盛大に抉られるってことを山河内さんは知った方がいいよ。僕のハートはガラスでできているんだから。

 

「そ、それで……そう……思ったんだ……」

 

 僕のライフは残り1の状態だ。

 頭の中で、さっきまでずっと聞こえていた「嫉妬」と言う言葉はどこか遠い海の先に消え去り、僕は山河内さんの眼中には入っていない、と言う事実だけが重く、脳を圧迫していた。

 

「うん……だって、あんな真咲見たことなかったから……」

 

 それには同意だ。堺さんは、山河内さん以上に大人っぽく、いつも冷静で、物静かな人だ。今の今まで……たったの五ヶ月くらいだけど、堺さんがはしゃいでいる姿は見たことがなかった。そんな堺さんが、ガッツポーズをしながらぴょんぴょんと飛び跳ねたんだ。勘違いしてもおかしくはないのか。嫉妬もそれで。山河内さんにもそんな子供らしい一面があるってことを知れただけで、僕としてはいい収穫だったけどな。

 

「山河内さんって前から思っていたけど、頭はいいバカだね」

 

「バカって?」

 

 機嫌を損ねて顔を膨らましている山河内さんも一段とかわいい。

 呑気にそんなことを思っているが、山河内さんは白い目を向けて僕を見ていた。これは本格的に怒らせてしまったようだ。

 

「違うって……そう言う意味じゃなくて……」

 

「そう言う意味以外にバカって言葉に使い道がないと思うけど?」

 

 頭が回らないのに何でこんなことを言ってしまったんだ。ああ、ほんの数十秒でいいから過去に戻りたい。過去に戻って、言わななかった世界線に変更したい。

 

「本当にそう言う意味じゃなくて……」

 

「じゃあ、どう言う意味なのか、ゆっくりと説明してもらおうか」

 

 顔は笑っているが、目が笑っていない。ついでに心も、態度も怒りながら、山河内さんは言った。

 

「だから……つまり……えっと……」

 

 当然のように僕は言葉に詰まった。こんな時は堺さんくらいがいれば、上手いこと代わりに説明をしてくれそうだが、今は頼れないし、他人を頼ることもしたくはない。僕自身の口から、僕自身の言葉で山河内さんに伝えたい。でも、馬鹿正直に言うしかないけど、話せば余計に機嫌が悪くなりそうだ。

 ああ、今この瞬間に一センチの隕石でいいから、僕の頭上に降ってこないかな。山河内さんはできるだけ巻き込みたくないし……というか、僕は何を考えているんだ。こんなくだらないことを考えるのではなくて、山河内さんに言う言い訳を考えなければならないんだ。何かいい案ないかな……。

 

「落ち着いてゆっくりでいいから、話を聞かせてね。朝まで時間はたっぷりあるから」

 

 これは僕が何かを言わない限り、返してくれないパターンだ。

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