出会いの形は最悪だ 5
誰かとのアイコンタクトだと思い目を逸らした際に僕も斜め後ろを見たが、誰一人こちらを向いていなかった。僕より前の人間にアイコンタクトした可能性も低い。僕と如月さんの席の直線上には男子しかいない。それに一人は、同じ中学のやつ。もう一人はずっと前を向いていて怪しい動きはなかった。つまり、あの微笑みは僕に向けられたものだけど、どんな意図があるのか。僕が想像できるのは一つしかなかった。それは……朝のことだろう。あの微笑み方は、いいものを見てしまった。そんな顔だった。僕の人生本気で終わったかもしれない。如月さんとはできるだけ絡まないようにしよう。
絡まれないように意図的に避けていたけど、そもそも今日初めて会ったのだから話す機会さえもまずなかった。休み時間に気を張っていたが完全な無駄骨だった。
昼休みの昼食を終えて、最後のホームルームが始まった。今日の午後は部活見学の時間だからじっくりと選ぶように田村先生からお達しがありホームルームも終えた。入る部活には悩んでいるけど、最初めに行く場所は決めていた。
「君、一番好きな映画は何?」
「えーっと……パイレーツとか?」
「ふっ。君まだまだだね。まあよろしいこれからとくと知っていくが良い。その映画も名作だが、本当の名作というものは影に埋もれて……。ちょっと、君! どこに行くのだ? もう少し待ってくれー!」
映画研究会はやめよう。こんな感じなら幽霊部員になるのも時間がかかりそうだ。となれば次に行こうか。
「ねえ、君はこの中でどの子が可愛いと思う? 綺麗なオレンジ色のポピー? それとも薄紫が綺麗なアネモネ? それとも春の風物詩の桜かな?」
女の先輩は少し美人で、話しかけられたのは嬉しかったけど、話についていけそうになかった。園芸部雰囲気は良かったけど、庭いじりなどしてこなかった僕がいられる場所ではなさそうだった。
というわけで外から中へ戻り、地学部が部室として使用している特別教室二を目指した。そう遠い距離ではないけど、三階にあるのなら最初に行くべきだったと後悔をしながら階段を登った。大抵の人はどこかで部活の説明を受けているのか、同じ学年の人とはほとんどすれ違わなかった。だからと言ってはなんだが、単純に道に迷ってしまった。
だが、おかしいのだ。僕は栞に示された通りに道を歩いたのに、どうして目の前の教室は真っ暗になっているのだ? 教室の名前も部活名も何も書かれていない。単純に階を間違えたのか? いや、踊り場はしっかり二回通過した。ということは、ま、まさか、学校の七不思議というやつに巻き込まれたのか?
現実にそんなことが起こるわけもなく、階段を挟んだ隣の教室は同じ階にある物理実験室としっかり書かれていた。それを根拠にここは間違いなく三階だった。