出会いの形は最悪だ 4
入学早々そんなネタで笑えるか。多分だがクラスの大半はそう思っていたに違いない。すごく不思議な先生が担任になってしまった。クラスにはそんな雰囲気が漂っていた。
「では気を取り直して出席番号一番の君から、俺のように自己紹介を始めてくれ」
そして、すごくマイペースで切り替えの早い先生だとも思った。
田村先生がそう言って、一番の子から順番に自己紹介が始まった。自己紹介に関しては、小学校でも中学でも何度も経験しているが、ゴタゴタした人は必ず現れる。でも今回は違う。田村先生が規範を見せてくれることによって過去類を見ないくらいスムーズに進んでいた。
「出席番号一番、相澤一花です。誕生日は十一月十六日で、趣味はサイクリングです。部活は明確には決めていませんが、恋愛科学研究会かクイズ研究会に入ろうかと考えています。みなさん一年間よろしくお願いします」
一番手だということもあって拍手は疎だった。でも彼女は、そんなこと微塵も感じてなさそうな顔を浮かべていた。全てに興味がないと、馴れ合いなどしないと言いたそうな顔。
「出席番号七番、如月歌恋です。誕生日は二月十七日で、趣味はランニングです。入る予定の部活は恋愛科学研究会です。みなさん一年間よろしくお願いします」
朝の前科があるからもっと盛大に自己紹介をすると思っていたが、意外とお淑やかに済ませていた。
「出席番号十一番、佐古樹です! 誕生日は七月五日です。趣味は、運動? 体を動かすスポーツは全体的に好きです! 一年間よろしく!」
樹は本当に変わらないな。このクラスのみんながもうバカだと気づいたのではないか。
他人をどれだけ羨んだって自分のコミュ障が治るわけではないけれど、何も思わず平然とできるやつが羨ましいよ。
「しゅ、出席番号二十二番、中田大智です。誕生日は九月二十三日です。趣味はスマホでゲームすることです。部活はまだ決めていません。一年間よろしくお願いします」
何度経験していても緊張するのには変わりない。だけど、終わった後の安心感はこれを乗り越えなければ体験できないものだ。
「出席番号三十五番、吉野川学です。誕生日は八月九日で、趣味は読書です。よろしくお願いします」
淡白だ。そして誰より短い自己紹介だった。
全員の自己紹介が終わって、田村先生が話を進めていた。その話が退屈でも、ある特定の人物を見ていたわけでもないけど、左斜め前をふと見ていると、如月さんと目が合ってしまった。すぐに目は逸らしたが、彼女は逸らす直前、僕の方を向いて笑った。