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フェイタリズム  作者: 倉木元貴


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地学部合宿会 8

「分かった。教えてあげるから取り敢えずベンチにでも座らない?」

 

 堺さんは不穏な笑みを浮かべていた。その笑みを見て、僕はまた間違えたのだと察した。

 堺さんに言われるがままに、石拾いをしている他の人からは見えない位置のベンチに座った。そこはトイレから一番近い距離のベンチで、トイレの右側にあるベンチで、時折風向き変わると、トイレの異臭が匂ってきていた。

 初めはただのトイレの筈が、結果として休憩をしているようになり、何故かすごく悪いことをしている気分になった。

 ベンチに座ってから一分くらい経ったのに、何も話さない堺さんに僕は痺れを切らして自分から訊いた。

 

「それで、堺さんは何で、その……や、山河内さんのことだと思ったの?」

 

 堺さんの目を見れば、全てが見透かされそうな気がして顔さえも見えなかった。堺さんとは逆の方向を見ると、そこにはトイレがあって異臭を直に嗅いでいるようで、仕方なく正面の20メートルはありそうな木を見ていた。

 

「その前に一つ。前にも似たようなことがあったの?」

 

「え⁉︎ な、何で?」

 

「その時は歌恋だったのでしょ?」

 

「だから何で?」

 

「簡単な推理ってやつだよ。私が『教えてああげようか』と言った時、中田君は深く考え込んで随分と葛藤していた。目を右にも左にも動かして動揺していた。この話は聞いて大丈夫なのかって考えていた。だから、前に何かがあったのかなって思って」

 

「すごいね。それだけの情報で……でも、何で如月さんって?」

 

「それも簡単。中田君ってクラスの子とあまり話さないでしょ。でも、中学からの友達の二人とは仲が良くてよく話している。中村君とか岡澤君とも仲がいいから、何かあるのだったら歌恋かなって」

 

 何だろうか……間接的にめっちゃディスられている気がする。

 

「へえー、すごい……」

 

「ごめんね。悪く言うつまりはなかったんなだけど、そう聞こえたよね……」

 

「え⁉︎ ご、ごめん……顔に出てた?」

 

「うん。ずっと……」

 

「ずっとって?」

 

「汽車に乗っている時からずっと顔に出てたよ」

 

 顔に出やすいことはある程度自覚はしているが、顔に出やすいプラス交友関係が少なかったら、ここまで特定されるのか。如月さんのことをエスパーだと思っていたけど、そう言うことだったのか。タネは堺さんに明かしてもらったが、だからと言って僕にできることはない。今まで幾度と顔に出ないように練習をしていたが、咄嗟に訪れるそのタイミングに意識なんてできるわけもなく、幾度と失敗を繰り返してきた。何度も何度もうまくいかなくて、僕はついに諦めたのだ。もう顔に出やすい性格ってことでいいや。と、割り切った。それからは変に意識することもなくなって、人生が少し軽くなった気がしていたが、まさかここに来てこんな弊害が生まれているとは思ってもいなかった。これはまた顔に出ないように練習を再開させるしかないか。

 

「そ、それよりも……何で、僕が、その……山河内さんのことを考えているって……」

 

 言っている途中で恥ずかしくなり、最後の方は堺さんには聞こえているのか微妙だ。

 それでも堺さんは答えた。

 

「初めは、碧と石拾いをしているから、碧のことを見ているんだろうなって思っていたけど、碧が少し離れても私の方をチラチラと見ていたから、用があるのは私かと思ってね。どう言うつもりだったのか訊いてみようと思って中田君を追いかけて、中田君に問い詰めてみると、顔は焦って目はキョロキョロしていて、モジモジとしている雰囲気だったから、何か心配事があるんだなって。そう言えば、汽車に乗っている時に私が『中田君は碧なんだ』って言った時のに中田君は焦った顔を見せていたから、中田君は碧のことが好きなんだって仮定をして、そして心配事と言えば二つ。私が碧に汽車でのことを話してしまわないかと碧にもジロジロ見ていたことを見られていないかだろうなって。でも中田君は私の話を聞いた瞬間は固まっていたから、何で見ていたことがバレたのか。ってことを頭の中で思っていた。それなら心配事は後者。碧にもジロジロ見ていたことを見られていないか心配してたってこと。どうかな、私の推理は?」

 

「ぜ、全問正解です……」

 

「やった!」

 

 堺さんはガッツポーズを取って喜んでいたが、僕は初めて堺さんの内面に触れられた気がして何だか怖かった。でも、普段は真顔で過ごしている堺さんが笑顔を見せている。僕自身堺さんの笑っている顔を見たことはほとんどない。怖い反面貴重なものが見れたと少し嬉しかった。

 

「ところで……」

 

 堺さんがそう言い出したのに対して横槍を入れる人物が現れた。

 

「サボり?」

 

 僕ら二人に白い目を向けていたのは山河内さんだ。

 

「ち、違うって。単にトイレに来ただけだよ」

 

 僕が弁明をしても山河内さんは全く信用していない顔を浮かべていた。

 

「ふーん。それで?」

 

 あ、これはやばい。山河内さんめっちゃ怒っている……

 山河内さんは白い目を向けることを辞めず、徐々に眉間に皺がよっていっているのが身に見えていた。

 

「それで……僕がトイレに入るのを躊躇っていると堺さんも来て……そんで、このトイレ入りにくいねって話してた……」

 

「へえー、そうなんだ」


 山河内さんの怒りは鎮まることを知らないようだ。

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