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フェイタリズム  作者: 倉木元貴


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地学部合宿会 6

 昼食を食べ終えて此花先輩は、海岸に行くのにこのまま直接行くのか、一度荷物を整えるために戻るか多数決を取った。結果は一年生全員と此花先輩が直接行く方に手を挙げて、直接行く方に決まったが、山本先輩はどうしても取りに行きたい荷物があるようで、結局、二手に分かれることになった。

 

「みんな一年生なのに凄いね。荷物重たくなかった?」

 

「つい最近も似たようなことをしていたので、慣れたんですかね」

 

 山河内さんの答えに、此花先輩は驚いていたが、僕らはたった二週間前にもっと厳しくてストイックな、とある人に連れられこの場所を訪れていた。その人は歩くの早いし、全然休まないし、口を開けば文句のようなことばかり言っていて、今よりあの時の方が断然しんどかった。もう思い出したくな記憶になってしまっている。あれははっきり言ってトラウマだ。

 そんな如月さんに付いて行けたこの二人は、本当に人間なのかいまだに疑いたくなる。山河内さんは普段から明るくて元気で活発で、運動神経も抜群だからまだ分かるけど、堺さんは物静かでか弱いイメージがある。体育の授業でも目立った活躍はしていなさそうだし、身体測定も女子の平均といったところだった。肌も白いし運動部っぽくないから、いくら運動音痴とは言え、元運動部だった僕より遥かに体力があるとは思えない。実は、体型維持のために毎朝ランニングをしています。の可能性はあるけど、そうでなかったらどこからその体力が出てくるのか不思議だ。謎多き堺さんらしいと言えば堺さんらしい。そんな謎が多いほいがいいと隠れながらのファンも多いとか。岡澤君もその一人だ。彼の性癖を否定するつもりはいが、とんだ物好きだなと常々思っている。性癖と言えばもう一人、中村君も性癖は偏っているよな。あんな凶暴で意味深なことしか言わない如月さんのどこがいいのか。理解し難い。

 深く考え込んでいて気がついたら海岸まで歩いていた。

 

「それじゃあ、木陰で太陽君たちが来るのを待っていようか」

 

「そうですね」

 

 細波の音と海鳥が鳴いている声が微かに聞こえる、海岸からは30メートル離れた遊具も何もなく、ベンチが四つだけがある公園で先に休んで山本先輩たちが来るのを待った。岡澤君は天を仰ぎながら座っていて、中村君は俯いて口からしんどい息を吐き出していた。することがなくて暇だった僕は、何も考えていないふりをして女子の会話を聞いていた。

 これは変な思惑があってしているのではない。汽車の件もあり、堺さんは要注意人物だから僕のことを話さないか心配してのものだ。話さないとは堺さんは言ってたけど、もし話されたら僕は終わるのだからこのくらいは見逃してくれ。

 女子の会話を聞きつつ、顔は女子の方に向けないように気を付けながら話を聞いていた。その会話のほとんどが地学の話だった。それも僕が混じることはできないであろう難しい地学の話。ブラックホールが初めて撮影されたやニューホライズンとか何とかが合体した天体の撮影に成功したとか、そんな話をしていた。

 僕が懸念をしていた恋愛の話には到底なりそうにはなかった。

 でもここで気を抜いて、堺さんが話しているのを逃してしまったら、ここまでして来たのが全て水の泡になる。堺さんの話にはまだしばらく注意しておく必要がある。岡澤君には気づかれないように、堺さんの行動を監視しながら、これから石拾いをするのか。そんな器用なこと僕にできるのだろうか。多分できないな。だって、意図的に堺さん近づいて石拾いをしていれば、岡澤君や堺さんに限らず、先輩方からも怪しまれる。怪しまれた時点で僕の負けだ。堺さんに嫌われて、その内山河内さんからも嫌われて、僕の人生は奈落の底に落とされる。そうなるのだけは避けたい。もっと平穏に、何事もなく人生を過ごしたい。もうすでに手遅れなのかもしれないが、これからは平坦な道を進めるようには願っている。

 話がそれてしまったが、僕らが休憩をしだして20分くらいが過ぎた頃に、ようやく山本先輩たちは姿を現せた。

 

「太陽。遅かったね」

 

「此花……僕らが歩いている頃にずっとここ休んでいたのか」

 

「うん。まあ、そうかな」

 

 二週間前の僕らも同じようなことになっていたから、山本先輩の気持ちは大いに理解できる。本当、お疲れ様です。

 

「このせんずるいっす! 私も休みたいです!」

 

 暑さの影響か乃木先輩が壊れた。駄々をこねる子供のようになっていた。

 僕らは日陰にいるのに乃木先輩が暴れているせいで暑さを感じていた。そんな乃木先輩を宥めるために此花先輩は乃木先輩の頭を撫でながら言った。

 

「じゃあ、みんなは少し休んでいて。私が一年生を連れて先に始めておくね」

 

 乃木先輩は一瞬のうちにおとなしくなった。子供から大人へ一気に成長したかのように清々しい顔をしていた。

 

「このせんがそう言うのだったら休んでいます」

 

 僕らが座っていたベンチに座った乃木先輩は、ベンチにお尻が張り付いてしまったのか一歩も動く気配はなかった。

 

「僕らもそうさせてもらうよ」

 

 山本先輩に楠木先輩、石川先輩に大原先輩もベンチに座り、僕らは此花先輩に連れられて日陰から日向に移った。

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