出会いの形は最悪だ 4
そんなわけで、入学のしおりを鞄から取り出しこの学校の部活について書いてあるページを開いた。数多くある部活の中で名前からして楽そうなものを選定し、候補を三つにまで絞った。それは、地学部、園芸部、映画研究会だ。どれも地味そうで、いずれは幽霊部員になれそうな名前だ。でも安心するのはまだ早い。見学で本当に安全かどうかを確認してからだ。たまに妙に熱心でこだわりの強い部とかあるからな。それだけには絶対に当たりたくない。高校でどれだけ頑張ったって、そのまま躍進できるのは所詮一握りの才能がある人間だけなのだから。
部活の選定も休み時間も終え、チャイムが鳴り響くと同時に教室に入ってきた教師が言った。
「起立! 礼! 着席!」
クラスの人間は皆言葉の通り行動し静かになっとところで教師は再び喋り出す。
「えー、今日はあとホームルームをして終わりになります。ホームルームでは、自己紹介と学校の説明を主に行なっていきます。疑問や質問があるものは、その都度挙手をしてください」
「はい、先生。質問があります」
と、話し終えた途端だったが、早速手を挙げた猛者がいた。それは、朝のチャイムギリギリで登場し、全力で滑った如月とか言う女子。
「おう、言ってみろ」
「私たちはまだ先生の名前を知りません。私たちが自己紹介をする前に、先生が自己紹介をして、お手本を見せていただきたいです」
何を言い出すかと思えば、こいつ本当に猛者だ。普通の人ならそんなこと先生に訊けないよ。
「いいだろう」
クラスの誰もが逆鱗に触れたと思い浮かべていたけど、教師はいたって穏やかな表情でそう答えた。
「まず、自己紹介とは相手に自分のことを知ってもらうためにするものだ。名前から始め、誕生日、趣味か特技、入ろうと考えている部活、簡単な挨拶。高校生はそんなものでいいだろう。俺の場合は教師の立場上部分的に変えて行う。まずは名前からだが、名前は田村和馬。年齢は二十八歳。趣味はゲーム。担当科目は体育。顧問をしている部活はライフル射撃部。担任を持つのは二回目でまだ慣れていないが、一年間よろしく頼む」
深くお辞儀をして、顔を上げるなりすぐに口を開いた。
「これでいいか?」
「はい、よろしいですとも」
如月という少女はどうしてこうも挑発的な発言ばかりするのか、僕には不思議でしかなかった。
「そうか、それでよかったのか……」
田村先生は、顎に手を当てて不思議ような顔を浮かべていた。
「教師だから少し変えると言っておきながら、誕生日ではなく年齢を言ったのは面白いと思っていたが、そうではないのか。やはりお笑いというのは難しいな」