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フェイタリズム  作者: 倉木元貴


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地学部合宿会 4

 いや、落ち着け、僕。いつもいつもそうやって深く考え込んで、あるかもしれない未来に憂いているけど、山河内さんだって年頃の女の子なんだ。好きな人の一人や二人いてもおかしくないだろ。そうやって割り切らなければ、いつまで経っても成長しないぞ、僕。

 そう言い聞かせてみるが、不安な気持ちの方が断然強く僕の心はもう既に折れそうになっていた。

 

「大智、何か目死んどるけどいけるんか?」

 

「大丈夫大丈夫……」

 

 口ではそう言ってみたものの、全然大丈夫なんかじゃなかった。それから大浜の丘オートキャンプ場に着くまで、ずっと山河内さんの言葉が頭から離れなかった。

 

「何日かぶりやな! またやって来たで、大浜の丘オートキャンプ場!」

 

 岡澤君は何故かテンションが高かった。

 

「前に来た日忘れているんでしょ。2週間ぶりだよ」

 

 それを中村君が冷静に対処していた。

 

「もうほんなになるんか。年取ったら一日がほんまに短いな」

 

「僕らはまだそんな歳じゃないでしょ」

 

「そうやって言えるんも今のうちやで。気が付いたらもう卒業。高校ってそんなもんや」

 

「岡澤君……君は高校二回目なの?」

 

「んなわけあるかい。初めてに決まっとるやん」

 

「だよね。もし二回目ならどうしようかと思ったよ」

 

「何や、ほんなことで友達辞めるんか?」

 

「いやそうじゃなくて。そうなったら先輩になるだろ。先輩なら敬語で話さないといけないから、対応を改める必要があるだろ」

 

「……お前って変なところ律儀やな」

 

「うるさいな」

 

 この二人本当に仲良いな。

 何度か会話に入ろうとしたが、コミュ障だと言うこともあって間に入れなかった。二人が仲良くなるのはいいけど、何だか疎外感がある。男子が三人だと言う奇数だからそれも仕方ないか。あと一人男子誰か入ってくれないかな。

 僕らがそんな会話をしている間に此花先輩が受付を済ましてきてくれて、一本の鍵を山本先輩に渡した。

 

「鍵預かって来たから、取り敢えず荷物を置いてみんな外にもう一度集合ね」

 

 此花先輩がそう言って、男女で別々のコテージに分かれた。

 

「先輩方。今日はどんなことするんか知っとりますか?」

 

 荷物を置き終えて少し休んでいると、岡澤君がそう言った。岡澤君の問いに対して、副部長である山本先輩が答えた。

 

「此花は気紛れで何をするか正確にはわからないが、多分浜辺に行って石拾いでもして一日潰すんじゃないか。そんで明日は、海老ヶ池を二周も三周も回るんじゃないかな」

 

「へえー。此花先輩ってそんな感じの人なんすね」

 

 岡澤君も中村君も先輩方も平然としていたけど、僕の耳にはしっかりと聞こえた。海老ヶ池を二周も三周もするって。そんなの冗談じゃない。確か、海老ヶ池の外周って四キロだったはず。もし三周回れば約十二キロにもなる。この炎天下の中そんなことをするのは自殺行為そのものだ。ただ、地学部に入ったばかりの僕にはそれを止める権力はない。僕に残された道は大人しく従うことしかない。

 女子がコテージから出ていったタイミングで、男子も全員慌てて外に出た。

 

「此花。男子は全員揃っている」

 

 外に出て一番に山本先輩はそう言った。

 

「女子も全員揃っているわよ」

 

「そうか。それなら、今日の予定を頼む」

 

「ええ。では今日の予定を発表します。今日は、海岸に行って石拾いをして、海で少し遊んで夜になれば天体観測を行います。ですが、その前にお昼ご飯を食べます。近くの食堂を予約していますので、これから徒歩で向かいます」

 

「やっほー! 飯だ!」

 

 何故か乃木先輩が両手で拳を作り、空に向けて叫んだ。この辺りはリアス海岸が続いていて、国定公園に指定されている。大浜の丘も目の前に海があり、小高い丘にキャンプ場が建てられていて、背後には登るのが大変そうな大きな大きな山脈がある。そんな場所で叫べば必然的に声は響く。この場でそんなことをしているのは乃木先輩ただ一人で、乃木先輩には申し訳ないけど、他の利用客に同じ団体とは思われたくなかった。

 

「クレちゃん。こら叫ばないの」

 

「すいやせん。このせん」

 

「もう。恥ずかしいからそう言うのやめてね」

 

「あい……」

 

 乃木先輩はしっかりと此花先輩に怒られて、僕らは此花先輩を先頭に昼食を食べる食堂に向かった。

 此花先輩曰く、僕らが目指す食堂は港の方にあるから少し歩くらしい。

 炎天下の中、大浜の丘から延びる山道を下っていると、分かれ道が現れた。ここを右に行けば海岸に向かう道になっているらしいが、僕らが向かうべき先は港だ。港に行くにはこの分かれ道を左に進むそうだ。もういっそのこと海岸直行でもいいんじゃないかと思いながらも、昼食のためだと自分に言い聞かせながら、さらに港へ向けて坂道を下って行った。港に向かうに連れて次第に風が強くなっていた。大浜の丘オートキャンプ場ではそう感じなかったが、髪の毛がオールバックになるくらい風は強く吹いていた。

 

「やっぱり、海が近いと風が強いね」

 

 山河内さんが突然そんなことを言い出した。

 

「だね。海風きついね。夜になったら陸風が吹いて寒くなりそうね」

 

 山河内さんと堺さんの会話に僕はついていけなかった。

 海風くらいは簡単には聞いたことがあるけど、陸風って何だっけ? 聞いたことがあるような気はするけど、思い出せない。まあ、頭のいい二人の会話だから、僕が知らなくて当然か。そう思えばいくらでも割り切れた。

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