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フェイタリズム  作者: 倉木元貴


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地学部合宿会 3

 堺さんのことは信用したいけど、そう簡単には信用できないのだ。もし……もし、如月さんに知られれば……と言うか、如月さんにはもうとっくに知られているのだった。と言うことは、堺さんは山河内さんに言わないと言ったのか……なら安心……なのか? 何にしろ知られてのはまずいのでは……

 悩んでいた僕は返す言葉を見つけられなかった。堺さんの言葉を頭の中で読み込みながら、今何が起きているのか状況を整理していた。堺さんは中村君の話と僕の話を聞いている。と言うことは、岡澤君の話を聞いていてもおかしくない。いや、確実に聞いている。

 僕のことは認めないとして、話の話題を変えられる話を……

 

「お、岡澤君の話も聞いたの?」

 

 これが僕の限界だった。

 

「さあ、それは聞こえなかったな」

 

 これ絶対に聞いているやつだ。

 堺さんは僕の目を一点に見つめていた。女の人は嘘をつく時に、男とは違い目を逸らさないと聞いたことがある。堺さんの目は正しくそれだった。そんな目で堺さん見られて、その眼光に負け自然と僕から目を逸らしていた。

 

「そ、そうなんだ……へえー」

 

 僕は山河内さんにに視線を送った。僕の視線に気が付いたのか、山河内さんはまた吊り革をつたって堺さんの隣に帰ってきた。

 

「中村君教えてくれなかった……」

 

「それは残念だね。でも私も言わないよ。中村君から許可がないと言えないから」

 

「ケチだな、真咲は」

 

「ケチで結構よ。私は誰かを貶めるようなことはしたくないからね」

 

「はいはい。真咲はいい子いい子」

 

 山河内さんんは堺さんの頭を撫でていた。堺さんはそんな手を優しく振り払った。

 

「もう子供じゃないんだから、そんなことされても嬉しくないよ」

 

「大人だね、真咲は。高校生なんだからまだ子供でいいんだよ」

 

「数年すれば大人の仲間入りなんだから、悠長にしている暇はないよ」

 

「そんな正論言わないでよ。今は遊んでおきたいの」

 

「はあー、うちの学校大丈夫かしら。こんなのが一位で」

 

「こんなのとは何だ。私だって家ではめっちゃ勉強しているんだからね」

 

「はいはい。碧は偉い偉い」

 

 今度は堺さんが山河内さんの頭を撫でていた。山河内さんはその手を除けることはせずに、撫でてもらっていることに喜んでいた。

 

「えへへ〜もっと言って」

 

 甘い隙を見せていた山河内さんに堺さんはデコピンをしていた。

 

「痛っ! 何すんの!」

 

「調子に乗らないの」

 

「はーい」

 

 おでこを押さえていた山河内さんは、そんな二人の会話をガン見しながら盗み聞きをしていた僕に気が付いて、堺さんと席を入れ替わり、僕の隣に座った。

 

「そう言えばさ、中田君?」

 

「な、何ですか?」

 

 突然のことに思わず敬語になってしまっていた。

 

「中村君のお話だけど、三人で話していたのだったら中田君も聞いているんだよね」

 

「ま、まあ……」

 

 と言うか、僕が発起人だ。

 

「私にも教えてくれないかな?」

 

「いや……そ、それは……」

 

「ねえ、早く!」

 

 僕が押しに弱いことは既に知っているのか。山河内さんにそんなことを言われたら、言ってしまいそうだ。もし僕が話してしまったら、中村君が反射的に僕のことを言ってしまいそうでそれが怖い。中村君は本人がここにいないけど、僕は本人が目の前にいるんだぞ。それだけは避けなければ。それだけは避けなければ。

 

「で、でも、中村君が……」

 

「許可は取った!」

 

 何でこの後に及んでこんな嘘を。堺さんとの会話を全部聞いていたから知っているのに。

 山河内さんに迫られている僕に救世主が現れた。

 

「こら、碧! 戻ってきなさい。中田君が困っているでしょ。中村君だって聞かれたくないいんだから、もう諦めなさい」

 

「真咲だけ知ってるなんてずるいよ! 私だって乙女なんだからそんな話の一つや二つ聞きたいの!」

 

 山河内さんはまるで駄々をこねる子供のようだった。流石の堺さんもそんな姿を見て頭を抱えていた。

 

「それだったら、交換条件として今ここで碧の話をすればいいんじゃないの?」

 

 堺さんがとんでもないことを口にした。とんでもないことと言うのは、僕にとっての話であるが、僕としては是が非でも聞きたい話だ。

 

「そ、それは……」

 

「できないの?」

 

「それとこれとは話が違うから……」

 

「どちらも恋愛の話だよ」

 

「そ、そう言う意味じゃなくて……続きは夜にお願いします……」

 

 もう昼が近づいていると言うのに顔を赤く染める山河内さんは、普段では絶対に見れるものではなく、僕はその光景を脳裏に焼き付けていた。脳の記憶領域にそう焼き付けながら、左脳で山河内さんのことを考えていた。

 こんな簡単に頬を赤らめると言うことは、山河内さんは恋をしている、その相手は間違いなく僕ではない。僕なんて初めから希望的観測のようなもので、如月さんは恋愛を手伝うなんて言ってくれているけど、僕が告白したところで振られるのは明確だ。僕よりもっと相応しい人はごまんといる。今この場で、山河内さんの恋愛事情は聞かなくて正解だったかもしれない。もし、本当に好きな人がいるのだったら、僕はもう立ち直れない。最悪、山河内さんと二度と会話ができなくなる。如月さんとも気まずくなって、いずれ僕は孤立する。最悪のシナリオだ。

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