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フェイタリズム  作者: 倉木元貴


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地学部合宿会 2

「いやー、特にこれと言って特別な話なんかしとらんよ」

 

 岡澤君が山河内さんに答えた。だが、僕でも分かるような、何かを隠してます。と言っているこの言動に、僕は一人挙動不審のようになっていた。

 

「そうなんだ。これからの話でもしていたの?」

 

 山河内さんは明らかに隠し事をしている岡澤君の言葉を信じた。と言うか、あまり興味がないようだった。

 

「そ、そうやねん。な」

 

「な」と僕に言われても……何で僕に振るんだ。

 

「そ、そうなんだよ。今日は何するのかなって話していたんだよ……」

 

 僕も嘘は下手の方だから、こんな簡単な嘘が精一杯だ。それでも山河内さんは信じてくれてた。

 

「確かにね。何するか詳しく聞いてないから気になるよね」

 

「よなよな」

 

「先輩に訊いてみようか?」

 

「あ、いやいや、ええねんて……先輩もサプライズするために隠しとんかもしれへんし、ほれに楽しみは最後に取っとくべきやろ」

 

「それもそうだね」

 

 岡澤君が口が達者で助かった。もし岡澤君じゃなく僕だったならば、山河内さんに流されて、お願いします。って言っていただろうな。大した問題ではないけど、その後の絡みとかが増えるから、コミュ障の僕にはきついものだ。

 

「で、大智。取り敢えず難局は去ったんやけん、そろそろ話してもらおうか?」

 

「何でそうなるんだよ」

 

「中田君だけ話さないなんてずるいよ」

 

 さっきまで無言を貫いていた中村君が突然割り込んた。

 

「二人も話してないじゃんか。僕だけ話すなんてできないよ」

 

「俺らは大智に半ば強制的に言われとるねん。ほなけん、大智も話してくれな不公平やろ。世の中は平等であらなあかんねん。ほら、大智も言ってみ」

 

「平等であるなら二人とも認めるってことでいい?」

 

 僕がそう言うと、中村君は焦っていた。

 

「ぼ、僕は違うからな……」

 

「なら、僕も違う。岡澤君は?」

 

「俺も違うで……」

 

「じゃあ、この話は終わり。もう絶対にしないでね」

 

 二人に念を押したからこれで大丈夫だと思っていたけど、もう一人この話題は知らないけど、僕らを疑問視していた人物がいた。それは山河内さんだ。

 

「ねえ、そんなに気になるなら訊いてきてあげるよ?」

 

 こんな場面を乗り越えられるのは岡澤君しかいない。僕は岡澤君の方を見た。岡澤君の奥には中村君が座っていてたまたま視界に入ったが、中村君は無の感情で外を静かに眺めていた。

 僕もこのまま振り返らないようにしようと、岡澤君の方をじっと見つめていた。

 

「え、大丈夫、大丈夫。何するんか楽しみやなって三人で話し取ったんよ。俺らのことは気にせんといてや。せっかく堺さんと話しとるんのに時間は大切にせんとやで」

 

 どんな様子なんだろうと、そっと山河内さんの方を見ると、山河内さんではなく堺さんが笑っていた。

 

「碧。私、面白い話聞いてしまった」

 

 堺さんのこの衝撃的な発言に、堺さんから目が離せなくなっていた。

 

「それってどんな話?」

 

「う〜ん……言ってもいいのかな?」

 

 堺さんは僕らの方を見ていた。もし本当に堺さんに話を聞かれているのなら全員まずいが、何より岡澤君が致命的だ。

 岡澤君の方を見ると、目を見開いて開いた口が塞がっていなかった。

 もう岡澤君はダメだ。ここは僕が……僕に何ができるって言うんだ。堺さんのあの笑みは、話を全て聞いている時の顔だ。もう僕らは終わった。

 

「ははは、堺さん面白いこと言うやん……」

 

 岡澤君はもう壊れていた。考えることを止めていて、堺さんの方を見ずにそう言った。

 

「真咲、何聞いたの? めっちゃ気になるんだけど」

 

「詳しい内容は言わなくていいのなら、教えてあげる」

 

「うん。それでいいから聞かせて」

 

「中村君の好きな人聞いちゃった」

 

 僕が中村君の方を見ると、岡澤君も中村君の方を見ていた。逆に中村君はさっきの岡澤君のように目を見開き、顎が外れそうなくらい口を開けていた。

 

「え⁉︎ それって誰?」

 

 山河内さんは興味津々だった。尻尾を振って遊びたがっている犬のようにテンションを上げていた。

 

「詳しい内容は言わないって約束」

 

「そこを何とか……」

 

「中村君に聞いてみれば?」

 

 堺さんにそう言われて、山河内さんは動いている汽車の中で立ち上がり、吊り革をつ足りながら中村君の横に座った。

 

「中村君。真咲から好きな人に名前聞いてもいいかな?」

 

「な、何のこと?」

 

 中村君はしらを切る作戦にでた。

 

「中村君好きな人がいるんでしょ?」

 

「そ、そんなのはいない……」

 

 中村君、分かりやす過ぎる。詰め寄られて目を逸らすのはもはや自白と同等だ。まだ名前を知られていないからよかったけど、山河内さんに知られれば最後、如月さんに伝わることはほぼ確実だろう。今のうちに手でも合わせてあげよう。

 そうして中村君を拝んでいると、背後から小声でこんな声が聞こえた。

 

「中田君は碧なんだ」

 

 声の主は堺さんだ。僕は焦って勢いよく振り返った。すると堺さんは笑っていた。人差し指を口と鼻の前に立てて、少し淋しげな表情を見せて堺さんはこう言った。

 

「安心して、言わないから」

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