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フェイタリズム  作者: 倉木元貴


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地学部合宿会 

 今日八月六日は地学部としての初めての合宿会の日だ。今日の合宿会は先輩達とお泊まりをするから、如月さんが主催してくれた時とは違う緊張感があった。あの時とは違って、集合時間もお昼前だし時間に余裕があった。だけど、心には全く余裕がなかった。

 夏休みだってこともあり、いつもより遅めに起きて荷物の確認を終えて、駅へ行くと、僕より先に石川先輩が着いて座っていた。

 

「お、おはようございます……」

 

「ああ、うん。おはよう」

 

 こう言う場合は僕はどこに座るべきなのだろうか。先輩の隣? それとも正面? 悩んだ末に僕は券売機の一番近くの席に座った。先輩からは右手の遠くに僕が、僕からは正面に先輩がいる微妙な位置に座った。

 石川先輩はそんな僕に目もくれず、ずっとスマホを触っていた。何よりも他に誰もおらず、僕も同じようにスマホに打ち込んでいたが、無言でたまに吹く風の音が大きく響いていたのが気まずかった。

 念のためとは言え十五分も早く駅に着くのではなかった。

 この後ももちろん無言のまま汽車の到達を待った。

 汽車が来て乗ってからは、一年生も全員揃っていて、先輩も何人かいて気まずさを感じることはなかった。

 

「大智、昨日は寝れたか?」

 

「え、あ、うん……ぐっすりできたよ」

 

「ええな〜俺寝られへんかったけん、寝不足で辛いわ〜」

 

「中田君。岡澤君はその話全員にしているから、あんまり真に受けなくてもいいと思うよ」

 

「何てこと言うねん、悠俉君。こっちは辛い思いしとるって言うのに……ひどいわ」

 

「あはは……」

 

 この茶番に僕は苦笑いをすることしかできなかった。

 この間、同じようにして大浜の丘キャンプ場に向かったのが、遠い昔のように感じて、どこか懐かしい気持ちになっていた。

 

「歌恋がいないと変な気分だね」

 

 山河内さんがそう言った。僕は反論をしそうになったけど、山河内さんの口から如月さんに伝わったらまずいと思い口を閉ざした。

 

「そうだね。この間まで一緒だったからいなかったらちょっとだけ気持ちが悪いね」

 

 堺さんまでそう言っていた。僕はこの場に如月さんがいなくてよかったと心の底から思っているのに。この場に如月さんがいなくてよかったと思っているのは僕だけなんだろうか。とりあえず岡澤君にでも訊いてみようか。

 

「岡澤君は如月さんがいなくて寂しいとか思う?」

 

 岡澤君は驚いていた。なんて事訊きやがるんだ。と言いたそうな顔をしていた。

 

「まあ……ほら……おった方が楽しめるんとちゃうかな……」

 

 岡澤君からは、曖昧すぎる返事が返ってきた。なら次は、中村君にでも訊いてみよう。

 

「中村君はどう?」

 

「べ、別に……いてもいなくても僕には関係ないし、どっちでもいいかな」

 

 うん。この反応は違う感情を抱えているやつだ。

 僕は追加の質問を中村君にした。

 

「いつから気になりだしたの?」

 

 中村君は驚いて目を見張っていた。おまけに中村君とは思えない速さで僕の方に顔を向けていた。

 

「な、何のことかな……」

 

 徐々に小さくなる声。これはほぼ断定できるな。

 

「女子の2人には言わないから」

 

「ぼ、僕はそんなことには興味はない」

 

 慌てて目を逸らしているけど、それは逆効果だってことは理解しているのかな。

 

「ええこと聞いた。中村君そうやったんや」

 

「違うって……そんなんじゃないって」

 

「ええと思うよ。まあ、俺は応援するけん。告白する時は教えてよ」

 

「岡澤君には絶対に教えない」

 

「何でや、人集めてフラッシュモブでもしたんよ」

 

「だからだよ」

 

 岡澤君ならほんとにフラッシュモブをしかねないな。そんな状態で振られたら全員気まずい。地獄のような空気が作られるんだろうな。考えるだけで恐ろしいや。

 中村君ばかり責められるのも不公平だから、この話題岡澤君にもしよう。

 

「そう言う岡澤君は堺さんのことを気にしているんだよね」

 

「ちょ、大智なんてこと言うねん」

 

「へえー。そうなんだ。いいこと聞いたな」

 

「中村君。そんな不気味な顔せんといてや。何企んどうか知らんけど、絶対に何もせんといてや」

 

「いやいや。僕にも告白する時は教えて欲しいなって思っただけだよ」

 

「それ絶対に邪魔する気やん」

 

「大丈夫だよ。フラッシュモブをするだけだから」

 

「振られた時恥ずかしいけん、それだけはやめて」

 

「僕の時はフラッシュモブをするつもりなのに?」

 

「もう分かったって。せいへんから許してや。ほんでこの話ももうしまいや。あー、あっつ。余計なこと考えすぎて変な汗出てきとるわ」

 

 矢張り僕の思った通りこの二人はいいコンビだ。

 

「そう言う大智は山河内さんやろ?」

 

「そうなの?」

 

「え⁉︎ ち、違うよ……と言うか何で? もう終わりにするって言ってたよね」

 

「それは俺と中村君の話や。大智の話はまた別や」

 

「それは卑怯だよ」

 

「何や、何が卑怯や。俺も中村君も大智に言われたんやから」

 

「そうだそうだ。中田君も白状しろ」

 

「白状って……中村君は認めてないじゃんか」

 

「ああ、だって僕は違うからね」

 

「そっちこそ白状しろよ。今日はいないんだから本人にバレる心配もないだろ」

 

「そう言う問題じゃないだろ」

 

「さっきから男子三人で何コソコソ話しているの?」

 

 山河内さんにそう言われて僕ら三人は口をつぐんだ。

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