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フェイタリズム  作者: 倉木元貴


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合同合宿会 12

 如月さんは、どうしても僕と二人きりになりたいようだ。

 当の僕はこれ以上心を折られると、海にでも身を投げてしまいそうな精神状態だと言うのに。

 だが、僕は折れた。

 心ではない。如月さんのウザ絡みに嫌気がさしたからだ。渋々炭を一緒に捨てに行くことに了承した。

 

「で、あんな言い訳してまで二人きりになったのには、何か理由があるんでしょ」

 

 如月さんは、不思議なものを見ているかのような顔を浮かべ首を傾げていた。

 

「特に理由なんてありませんよ。もう一度言いますか、初心者には捨てる場所が難しいので教えるために来ただけです」

 

 如月さんはこのまま白を切るつもりのようだ。

 普段の僕だったら絶対にこんなことは聞きもしないはずなのに、どうしてだろうか今日の僕だけはおかしかった。

 

「夕食を食べる前に僕が話したこと、その……怒っているんじゃないのか?」

 

 つい言ってしまった。

 こんなどうでもいいことなのに。

 それでも、如月さんは表情ひとつ変えることなく、また首を傾げていた。

 

「私が怒っている? どう見ればそう感じ取れるのですか? こんなかわいい美少女が怒るわけないですよ」


最後の文章はとりあえず無視をした。

 

「いや、だって……『気持ち悪いから聞かなかったことにする』って言ったじゃん」

 

「ああ、そのことですか。気持ち悪いのは事実じゃないですか。でも、怒ってなんかいませんよ」

 

 如月さんの笑った顔は今まで散々見てきたが今日の笑顔は別格だった。

 もしその顔を、あと数秒でも見つめていると、僕の心臓は高鳴りを打っていたかもしれない。山河内さんと言う心に決めた人がいながらも、不純に手を伸ばす自分の性別に嫌気がさすところだった。

 そんな僕が正常に戻れたのは、如月さんの顔から目を逸らしたのもあるが、それよりも『気持ち悪いのは事実じゃないですか』と言われたセリフだった。

 このセリフだけはいつもの如月さんだった。

 

「はあー。心配して損した」

 

「ほう、『損した』とはどう言う意味ですか?」

 

 安心しきっていた矢先僕は墓穴を掘った。

 

「いや、だから……如月さんが怒ってなくて良かったって意味で他意はないんだけど……」

 

「へえー。そうですか」

 

 今回ばかりは確実に怒っている。

 何か起こる前に謝罪をしておこう。

 

「ごめん……」

 

「何がですか?」

 

「今は流石に怒っているでしょ?」

 

「怒っていませんよ。中田さんだから言っておきますが、私は今までほとんど怒ってきたことはありませんよ。それに怒れば先に手を出しますから、手を出していない時点で怒っていないと判断できますよ」

 

 如月さんは野生動物か何かなのか。

 

「はっ! 今、中田さんからテレパシーで『猿かよ』なんて言葉が聞こえました。中田さんレディに向かっていい度胸ですね」

 

 如月さんは両手に拳を作り仁王立ちをしていた。その姿は如月さんの言う猿よりはゴリラのようだった。……なんて言えない。

 

「言ってない、言ってない。思ってもいない。如月さんにそんなこと言うわけないじゃん」

 

「口に出さなくとも、脳内で私に散々文句言っていますよね?」

 

 何故それを……。

 

「い、言ってない……」

 

「そんなはずはありませんよ。文句言わない人間なんて、この世に存在しませんから」


 如月さんに諭されて僕はあっさり肯定をしてしまった。

 

「それはそうかもしれない……」

 

「そんなことでいちいち怒っていたら私の気が持ちませんよ」

 

「でも、今は流石に怒っているでしょ?」

 

「それは私への悪口を、脳内で言ったと言うことでしょうか?」

 

 如月さんの罠に僕はあっさりと引っ掛かってしまった。

 

「いやいや。言ってはないよ。言ったはないけど、怒っているのかなって思って」

 

 言い訳が見苦しいがこれ以上の言葉なんて焦って出てこなかった。

 

「ちょっと海までお散歩でもしますか?」

 

「それは恐ろしいお誘いだな」

 

「そうでしょうか?」

 

「殴る気満々じゃん」

 

「えー、バレていましたか」

 

 僕は冗談のつもりで言ったのだが、如月さんは何故か残念そうな顔を浮かべていた。

 

「そろそろ戻ろうか」

 

 長話は危険だと咄嗟に感じ取った僕は、炭を管理棟横にある廃棄ボックスに入れて一人早足で歩いた。

 

「歩くペース早くないですか?」

 

「そ、そんなことないよ」

 

 如月さんには感づかれていたが、管理棟から僕らのコテージにはそう遠くないから帰りはほとんど会話することなくコテージに戻った。

 コテージの中に入ると、リビングで全員が集合していた。

 

「やっと帰って来た。早くお風呂の順番決めよう」

 

「そうですね。遅くなりすぎてもいけませんしね」

 

 全員が集められているもんだから、全員でじゃんけんでもして決めるのかと思っていたが、如月さんによって男子は問答無用で最後の三枠になった。

 

「俺らはじゃんけんでいいよな?」

 

「そうだね、。別に何番でもいいよ」

 

「うん。最後は最後でお湯がぬるいくらいだよね」

 

「あ、言い忘れていました。最後の人はお風呂場の掃除お願いしますね」

 

 テキトーにじゃんけんで順番を決めようとしていたが、如月さんのその一言で本気のじゃんけんになり変わっていた。

 

「俺いつも、家で一番風呂しか入ってないねん」

 

「僕も一番に入ることが多いよ」

 

「お湯はぬるいよりあったかい方がいいしね」

 

 男子三人んによる正々堂々とした熱い戦いがそこにはあった。

 じゃんけんをした結果、チョキを出した僕が一人勝ちをした。あとの結果はどうでもいいが、岡澤君が勝利し、中村君が最後になった。

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