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フェイタリズム  作者: 倉木元貴


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合同合宿会 11

「それよりも、みなさんのところへ行きましょうか。お腹が空いて倒れそうです」

 

「あ、ああ、そうだね……」

 

 いつもと何も変わらない笑顔を浮かべ、平然としている如月さんが余計に怖かった。

 これならもっと冷たくあしらわれた方がまだマシだと思った。

 それもそれで心に深く傷ができるけど、高熱を出した時のような寒気に襲われている今よりはマシだ。

 幸いにも如月さんが用意した夕食はバーベキューで、各自で肉を焼いて自由に食べていたから、如月さんと話す機会は極端に少なかった。

 暑い夏のバーベキューのはずなのに、僕だけは汗をかかず寒気を感じて暑さを感じず涼しかった。

 

「如月さんこの肉うまいな。どこでこんなん手に入れたんで?」

 

「それは秘密ですよ。知られていない名店の方が美味しいこともありますから」

 

 そんな会話を聞きながら僕は黙々と夕食を食べた。

 だが、ついに如月さんに話しかけなければならない時がやってきてしまった。それは、夕食を終えてのことだった。食器類を全員で片付けて、山河内さんと堺さんが洗い物をしてくれている間に、男子はバーベキュー台の後片付けをしていた。そうこの、炭の後処理だ。これだけは如月さんに訊かなければ僕一人ではできない。処分するのか、前のように水に浸けておくのか、僕には判断できない。

 岡澤君か中村君のどちらかに如月さんに訊きに行くのを頼んでもいいけど、それはそれで如月さんに「なんで中田さんが訊きにこないのですか?」と言われそうな気がする。余計な争いの火種を生まないためにも、ここは僕が行くしかないのか。

 僕は覚悟を決めた。

 覚悟を決めた途端に急に腹痛が僕を襲った。

 そんな腹痛に襲われながらも、如月さんのもとに足を運んで僕は訊いた。

 

「き、如月さん。炭はどうしたらいい?」

 

「管理棟の横に炭捨て場があるので、金属製のバケツに炭を入れて後で一緒に捨てに行きましょう」

 

 僕の予想とは裏腹に如月さんは至って普段通りの対応だった。

 

「さっきからじっと見つめて、私の顔に何かついてますか?」

 

「いや……なんでもないよ……。じゃあ、じゃあ、また後で」

 

 走ってはいないが、僕は一目散にこの場を離れた。如月さんに呼び止められないように。

 如月さんのいるところから僕らのいるところまでは、数メートルしか離れていないから呼び出そうと思えばいつでも呼び出せるけど、問題は距離ではない。一人の時間が少なければいいんだ。

 僕は息を切らしながら岡澤君と中村君が後片付けをしているところにやってきた。

 

「おお、おかえり。ほんで如月さんはなんて?」

 

「捨てる場所があるから後で持って行くって。だから、金属のバケツに入れておくだけでいいって」

 

「ああ、ほんで入り口のところに金属製のバケツがあったんかいな」

 

 そう言われてみればそんなのがあった。入り口の、それも隅に置いてあるから気にも留めなかったし、僕はてっきり傘を入れるものだと思っていた。

 

「俺はてっきり傘入れやと思っとたわ」

 

 同じことを思っていた仲間がいた。

 

「とりあえず、バケツに炭を入れて片付けの続きをしよか」

 

「そやな」

 

 岡澤君と共に入り口に向かい、隅に置いてあった金属製のバケツを持って中村君のいる中庭に向かった。

 バケツは一つしかないのに何故二人で取りに行ったのかというと、前述した通り僕が一人にならないためだ。

 中村君と二人で中庭に残っても良かったのだが、もしその二人で残って如月さんが来た場合、如月さんの照準は間違いなく僕に向く。岡澤君といれば、如月さんの照準はどちらにも向くから生存確率は上がるというものだ。

 この時の僕はこれからが地獄の始まりだと言うことをまだ知らなかった。

 岡澤君とともに中村君がいる中庭に戻ると、そこには如月さんんと相澤さんがいた。

 

「如月さん。バケツってこれで良かったんかいな?」

 

 岡澤君はバケツを掲げ如月さんに見せつけた。

 

「それで大丈夫ですよ」

 

 如月さんがそう答えている間に、僕はバーベキュー台のところまで無言で近づき、炭用のトングを使って無言で炭をかき集めた。

 

「ほい、これに入れて」

 

 岡澤君はバケツを僕に差し出していた。

 

「そんなことより手伝ってくれよ」

 

「はいはい」

 

 僕はトングを使って燃え残った炭をバケツに移した。岡澤君はスコップを使い炭の燃えかすを集めていた。

 作業効率は圧倒的にスコップの方が早く、僕が集められた炭は精々両手で数えられるくらいだった。

 そんな岡澤君は、スコップでこれだけ集めたのだからあとは任せた。と言いたそうな顔で僕にバケツを差し出していた。

 本当は受け取りたくないが、確かに仕事量は僕の方が少ないから、仕方なく炭の燃えかすが入ったバケツを受け取った。

 

「捨てに行きましょうか」

 

 如月さんは僕がバケツを受け取った瞬間にそう言った。

 

「場所さえ教えてくれれば一人で行くよ」

 

「強がらないでください。迷子になりますよ」

 

「ならないよ」

 

「いえ、なりますよ。今は夜ですから方向感覚が鈍るものですよ」

 

「炭を捨てる場所はそんなに遠いの」

 

「ええ、管理棟の隣にあります」

 

「管理棟ってあれだよね?」

 

 僕らのコテージは管理棟の二つ隣にあり、管理棟から全てのコテージが見渡せるように、遮蔽物がなく建てられていた。

 

「炭を捨てる場所が初心者には難しいのですよ」

 

 如月さんにしては見苦しい言い訳をしていた。

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