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フェイタリズム  作者: 倉木元貴


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合同合宿会 8

 僕の後ろには山河内さんがいる。

 山河内さんは難なくレシーブをし、僕も短くトスを上げた。山河内さんはアタックの体勢をとり、堺さんはブロックの体制をとっていた。

 これは流石に決まったと思ったが、山河内さんのアタックは堺さんに阻まれ、ボールは僕らのコート内に落ちた。

 高さのある堺さんに山河内さんは敗北した。

 

「ごめん、止められちゃった……」

 

「いや、僕こそごめん。準備していれば、リバウンド取れていたと思う……」

 

 堺さんは初めからこうするために柔らかいパスのようなプッシュをしたのか。僕が立てた作戦は悉く堺さんに見破られている。それも、その上で作戦を立てられている。

 

「次、どうする?」

 

 このままいけば僕らは敗北する。堺さんを崩すことは、多分僕にはできないことだ。

 いや待て、そう言えば僕らが二点目を取った時、堺さんのブロックは間に合っていなかった。あれは、山河内さんが無理やりアタックを打ったからで、僕もまさかあの位置から打つなんて予想してなかった。僕が立てた作戦は最も簡単に見破るのに、突発的な山河内さんの行動は防げなかった。

 これを作戦と呼ぶのは、違うかもしれないけど、山河内さんに全てを任せる。

 相手のサーブは必ず僕を狙う。

 

「山河内さんが自分の判断でツーアタックができそうだと思ったら、迷わず打って。無理そうだったら僕にトスを上げて。決められるかわからないけど、こっちの方が可能性が高いと思う」

 

「つまりは、臨機応変にってこと?」

 

「まあ、要約するならそう」

 

「わかった。でも、大丈夫?」

 

「何が?」

 

「私に合わせられる?」

 

「多分大丈夫。人に合わせるのは得意だから」

 

「わかった。じゃあ、任せるよ」

 

「うん。任せて」

 

 次は中村君のサーブからだ。

 狙いはもちろん僕なんだろうが、中村君が放ったボールは僕と山河内さんの間に上がっていた。

 これはチャンスボール。

 僕はすかさず、山河内さんにボールを任せて前に出た。山河内さんは華麗にサーブレシーブをきめ、さっきと同じ流れ、僕も低くトスを上げた。

 さっきは堺さんにアタックを止められたが、今回は上手く決まった。

 山河内さんのアタックは堺さんのブロックの隙間を通り、中村君の右横で地面を抉った。

 

「やった!」

 

「碧ちゃんさすが。うまいね」

 

「真咲もだよ。おかげでいい戦いになっているよ。でも負けないから!」

 

「私も」

 

 この終わりの見えなさそうな戦いも、ここからは早送りのように僕らが得点を稼いでいった。

 原因は中村君の疲労だ。疲れが溜まりすぎて、山河内さんのアタックはもちろんのこと、早めのプッシュも触れることさえできていなかった。

 そんなフラフラな中村君を狙うのはいじめのようだけど、勝つためには仕方ない手段。

 

「堺さんごめん……」

 

 中村君は元から背は小さいが、それよりも物理的にじゃなくて精神的に小さくなっていた。堺さんと中村君のペアの敗因は言うまでもなく中村君だからだ。

 

「負けたのは悔しいけど、仕方ないよ。疲れたよね。それに今回は相手が悪かったよ。ね!」

 

「……う、うん。山河内さん強かった」

 

 主に作戦を立てていたのは僕なのに、僕は弱かったのだろうか。

 まあ、そんなことはどうでもいい。山河内さんと優勝できたのだから。おかげで過去一番に山河内さんと触れ合えた。今日はお風呂に入りたくないな。

 そうは言っても、水着から私服に替える時にシャワーは浴びなければならないから、山河内さんの感触を脳内に残すだけにとどめておこう。

 着替えを終えて、男子三人は先に海を見ながら日陰で座り込んでいた。

 

「バレー疲れたな」

 

「本当。もう足がガクガクで動けないよ」

 

「僕ら地学の勉強のために来たのにこんなに遊んでいていいのかな」

 

「ええんよ、ええんよ。八月のまた来るときに、ほの時に全部するけん今は遊ばんとや」

 

「そうそう。遊べる時に遊ばないと、遊ぶ時間がなくなるよ」

 

「そんなのですから、夏休みの宿題がギリギリまで終わらないのですよ」

 

 如月さんは突然僕らの会話に入ってきた。

 まあ、事実だから何も言い返せなかったけど。

 

「さ、帰りますよ。帰って宿題をしますよ」

 

 中村君だけは素直に立ち上がったが、僕と岡澤君は体が急に重くなって立つことができなかった。

 

「子供ですか? 置いて帰りますよ……」

 

「如月さん。疲れたけん帰って休憩させてくれへん?」

 

 岡澤君は切り込んだ。

 如月さんに切り込んだ。

 

「ええですから、帰って身体は使わずに頭を使うのですよ」

 

 如月さん。それは休憩とは言えないのではないか。そう言いたかったが、僕は如月さんに屈した。如月さんの、怒りを滲ませながら笑った顔に屈した。

 

「はあーー。わかったわ、俺も帰るわ……」

 

 何の覚悟を決めたのか、ため息は聞いたことがないくらい深く長かった。

 

「勉強が嫌でしたら、海老ヶ池の周りを探索するというのもありですよ?」

 

 この流れはまずい。

 今海老ヶ池の探索をしたいと思っているのは山河内さんと如月さん。堺さんはどちらでもない。に対して、男子三人と相澤さんが探索を拒否して、多数決の結果海に行くことになったのに、岡澤君が拒否派から抜ければパワーバランスが崩れる。ただでさえ発言権の弱い僕ら三人ではなす術がない。

 岡澤君よ。宿題をしたくないのは理解ができるが、身体的精神的疲労を加味して間違えないように答えを見定めてほしい。

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