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フェイタリズム  作者: 倉木元貴


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合同合宿会 7

 中村君には悪いけど、僕らが勝つには狙わせてもらうしかない。

 

「山河内さん……作戦なんだけど……」

 

 山河内さんはやる気を失ってはなかった。

 

「大丈夫。次は側面を狙う」

 

「うん。よろしく」

 

 さて、僕はどうしようか。この回は僕のサーブから始まる。定石通りなら中村君を狙うが、堺さんがツーアタックをしてこない保証はない。まあ僕が全力で戻ればいいだけの話だけど。それでもさっきの、僕のブロックに対するアタックの打ち方は秀逸だった。いっそのことブロックなしに、二人でレシーブをする方が堺さんのアタック対策としては得策かもしれない。

 アタックレシーブは、多分触れるのが精一杯。ネット際のアタックを打てる場所にボールを運ぶことは困難。山河内さんのツーアタックは運次第。そうなれば、堺さんは間違いなく僕を狙う。僕が堺さんの立場だっても同じことをするだろう。となれば、やはり中村君を狙うのが得策。サーブで中村君のミスを誘えればいいけど、僕にはそんな山河内さんのような技術はない。中村君を狙うとして、僕が最大限にできること。それはロングサーブだろう。エンドラインの手前を狙うことで、中村君のミスを誘いやすく、尚且つロングサーブは滞空時間が長い。僕がネット際に戻る時間が稼げる。これしかない。

 僕は、中村君に向けてオーバーハンドでなければ取れないようなロングサーブを放った。それも高さのあるサーブだ。

 ここは海辺。海から陸に流れる風の影響で高く上がったボールは風に煽られる。煽られればエンドラインを超える可能性もあるから、一か八かの賭けだけど、ボールを追うことしか頭に入っていない中村君はサイドラインもエンドラインも視界には入っていない。アウトになるボールも取ると見越しての作戦だ。

 僕の予想通り、アウトになりそうな怪しいボールを、中村君はぎこちないオーバーハンドでサーブレシーブをした。そのボールは飛距離が足りず、ネットには遠い位置に低く上がった。

 流石の堺さんもこのボールはアタックできないと思っていたが、堺さんはアタックを打つ動作をとった。だから僕は慌ててブロックの体勢をとったが堺さんのその動作はフェイクだった。アタックを打つと見せかけて、中村君に低めのトスを上げたいた。その堺さんの後ろには走って来ていた中村君の姿があった。

 今僕は空中だ。中村君がアタックを打つなら僕は間違いなく間に合わない。堺さんは初めから僕がこうすること予想していたというのか。作戦が完璧すぎる。さすが頭がいい人間は違うな。山河内さんごめん。今回も僕の作戦ミスで点を失う。

 中村君のアタックは、アタックと呼べるのか怪しいアタックだった。だが狙いは完璧だ。僕と山河内さんの間。どちらも取りにくい位置に落としていた。

 僕は半ば諦めていたけど、山河内さんは違った。


「中田君!」


 ヘッドライディングをしながらネット際にボールを上げた。

 その姿には僕も感銘を受けた。そう簡単に諦めてはいけないと。

 でも、問題はここからだ。アタックしようにも目の前には堺さんがいる。僕のアタックは堺さんなら止められるはずだ。だからと言って、堺さんのように指先を狙うような器用さはない。堺さんのブロックを躱わすにはフェイクしかない。

 僕は叫んだ。


「山河内さん!」


 あたかも山河内さんにトスするような掛け声と体勢をとって。

 ここでもしブロックされても大丈夫なように強めのプッシュをした。

 堺さんは読んでいたのか高さのあるブロックを繰り出していた。だが僕も高さではまだ張り合える。

 僕のボールは堺さんを超えて、コートの左奥へと飛んでいった。弱く取られそうだけど、中村君は間に合わず、ボールは地面に落ちた。


「やった! 三点目!」


 決めた僕より山河内さんの方が喜んでいた。

 今回のは偶然に近い。中村君は、堺さんに右を頼むと言われていたのか、ずっと右寄りに守っていたから上手く決まっただけだ。堺さんもそれには気付いただろう。次からは別の作戦が必要だ。


「山河内さん次の作戦だけど……」


 山河内さんは僕の言葉に被せた。


「わかっているよ。また中村君を狙うんだよね。今度は手前でも狙うの?」


 山河内さんに気付かれているということは、堺さんも気付いていてもおかしくはない。


「まあ、そう……」


「後ろは任せて!」

 

「任せた!」

 

 僕は計画通り、中村君の手前にボールを落とした。手前に落とすと言うことは、堺さんがツーアタックを打ちやすくなると言う欠点があるが、それ以上に中村君のミスを誘える。

 まあ、僕がネットに掛ける可能性も高まるが。

 改めて息を整え、中村君に向かってボールを打った。

 このボールを堺さんに取られたらどうしようかとヒヤヒヤしていたが、堺さんは自分の持ち場から動くことはなかった。

 僕が放ったボールは中村君の手前に飛んで、手を伸ばした中村君の指先に当たり、ネットの下を通って僕の足にぶつかった。

 

「よしっ!」

 

「やったね!」

 

 これで四対一だがまだ、まだ気は抜けない。単純に堺さんが厄介だ。

 また僕のサーブから。狙いはもちろん中村君だが、次はどこを狙おう。さっきは手前を狙って上手くいった。次も手前で上手くいくと言う保証はない。それ以外のリスクも考えて奥を狙う方が理にかなっていると思う。

 そんなわけで、僕は中村君の顔面辺りを目掛けてボールを打った。

 ボールは放物線を描き、一歩下がった中村君はサーブレシーブをほぼ自コートの中央に上げた。流石の堺さんもこの位置からのアタックは不可能だったみたいで、ほとんどパスのような柔らかいプッシュで僕のブロックの上を超えた。

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