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フェイタリズム  作者: 倉木元貴


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合同合宿会 6

「ドンマイ。一点くらい大丈夫だよ。それよりも次は必ず中田君が狙われるよ、どうする?」

 

「もし僕にボールが飛んで来たなら、山河内さんはトスを上げると見せかけてツーアタックを打ってほしい」

 

「ほう。なるほど。すごい無理難題を押し付けるじゃん」

 

「ごめん。できそう?」

 

「任せて!」

 

 予想通り岡澤君は、僕を目掛けてボールを飛ばした。ここまでは作戦通り。ここからは僕がどれだけ上手くサーブレシーブをできるかにかかっている。ここで僕がミスをすれば、山河内さんのツーアタックは多分失敗する。できるだけネットに近いところにボールを運ぶ。

 僕のサーブレシーブは中央付近に上がったがネット際のいい位置に飛んだ。

 

「中田君!」

 

 山河内さんはやはり上手い。ここで声を出すことによって、岡澤君の意識を僕に向けていた。

 意識が僕の方に向いていた岡澤君は、山河内さんのことなんてしかに入っていないようだった。ブロックをすることもなく、近づこうともせずただじっとしていた。だから、強いアタックでなくても、山河内さんのプッシュでも岡澤君と相澤さんの間にボールは落ちた。

 

「やった!」

 

「これで六点目だね」

 

 僕らはまたハイタッチを交わした。

 

「あと九点だね!」

 

「まだ折り返しでもないのか……」

 

「でも大丈夫だよ。五点差もあるから」

 

「だといいけどね」

 

 この僕の不安な予想は当たらなかった。

 ここから十五点まで一回も点を取られることなく僕らは十五対一で勝利した。その全ては山河内さんのアタックで決まった。

 

「もう無理やわ。二試合連続はしんどいわ」

 

「本当。もう燃え尽きた……」

 

 試合を終えて、相澤さんと岡澤君は日陰で倒れ込んでいた。

 

「次、決勝戦! 堺・中村ペア対山河内・中田ペア!」

 

「お願いします!」

 

 対戦する四人の中でやる気があったのが山河内さんだけだった。

 堺さんは相変わらず真顔。中村君は休んでいたはずなのにヘトヘトになっていた。が、その気持ちわかる。僕もさっきの試合で全てを出しきった。もうこれ以上は動きたくない。

 審判如月さんの笛が鳴り、無情にも試合は始まった。

 最初のサーブは山河内さんから。狙いは言わずとも中村君。堺さんには岡澤君のような機動力はないと見て、中村君の前にボールを飛ばした。中村君はそのボールを取り逃し、一点目は呆気なく僕らに入った。

 

「幸先いいね!」

 

「でも、毎回こう上手くはいかない」

 

「そうだね。作戦を考えないと。試しに真咲に向かって打ってみるのもいいかもね」

 

「そうだね。堺さんのアタックがどんなものか直接見てみたいしね」

 

 そんなわけで、一か八かの賭け。堺さんに向かってボールを飛ばした。

 堺さんのサーブレシーブは山河内さんと張り合えるくらい上手かった。中村君の頭上に上がったボールを、中村君はぎこちなくトスした。

 審判の人のよっては、ダブルコンタクトの反則を取られていてもおかしくないくらいぎこちないトスだった。

 そのフラフラと上がったボールを堺さんは豪快にアタックをした。

 僕のブロックはかろうじて間に合ったが、堺さんはそれを読んでいたのか、指先を狙われた。僕の指先に当たったボールは、山河内さんを大きく超えて僕らのエンドラインの外に落ちた。

 

「やったね。中村君」

 

「あ、ああ、ありがとう」

 

 やはり堺さんは強敵だった。前の試合のように簡単に崩せるものではなかった。

 

「決められちゃったね」

 

「うんでも、これではっきりした。僕らはん何がなんでも中村君を狙わないといけない。堺さんにボールを渡すと決められる」

 

「そうだね。中村君には悪いけど、勝ちたいもんね!」

 

 相手のサーブはまずは堺さんから。狙いは僕だろう。そこまでは読める。問題はその先。前の試合での常套手段は、僕がサーブレシーブを受けてツーアタックで山河内っさんが決めるというもの。この作戦の欠点としては奥を狙われたらサーブレシーブの成功率が下がるところ。もし奥を狙われたら、僕がアタックを打つしかない。

 山河内さんは僕のタイミングに合わせるのが上手い。だが僕は違う。アタックを打てずに軽いパスなようなものになるのだけは避けなければ。それを堺さんに取られて、アタックを決められれば多分取れない。僕らが勝つには僕がアタックを決めることそれが最低条件だ。

 堺さんのボールは予測した通り、僕に目掛けて飛んで来ていた。それも深く。オーバーハンドでなければ取れないサーブだった。

 オーバーハンドで山河内さんがアタックを打てるようにボールを上げようとすれば、必然的に滞空時間が長くなる。そうなれば相手のブロックもそれだけ容易になる。いきなり僕がアタックを打たなければならない時が来たか。

 僕がサーブレシーブをしたボールは高く上がり、ネットから遠い位置で落下を始めていた。

 僕は頭の中で、山河内さんに合わせる。山河内さんに合わせる。と繰り返し脳内再生しながらボールが飛んで来そうな位置まで走った。

 だが、山河内さんは、僕の予想に反してネットから遠い位置にも関わらず、中村君目掛けてアタックを打った。そのボールが中村君の顔面にぶつかり、地面に落ちた。これで僕らは二点目を獲得した。

 

「ご、ごめん……大丈夫?」

 

「あ、ああ。平気だよ……」

 

 僕としては中村君よりも山河内さんの方が心配だった。中村君の顔面に当ててしまったことで気を病んで、中村君を狙わなくなってしまわないか心配だった。

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