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フェイタリズム  作者: 倉木元貴


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合同合宿会 5

「やったね。中田君」

 

 両手を頭の上で広げて笑顔で待っている山河内さんにハイタッチをした。

 

「碧ちゃん。強すぎる。あんなの私じゃ取れない。岡澤君、この試合多分負けた」

 

「奇遇やん。俺もそう思った」

 

 二人はなぜか意気投合し、固く手を握り合っていた。

 そんな様子を見ていた見ていた僕に山河内さんは背後から小声で話しかけた。

 

「次どうしようか。さっきのが綺麗に決まりすぎたから、次は中田くんが狙われるよ」

 

 そうなのだ。僕がサーブレシーブを取れば山河内さんはトスを上げるセッターになる。僕はアタックなんて打てる自信はない。ツーアタックという手もあるが乱用は避けたい。僕がセッターに自然となれる方法を考えなければならない。

 この戦いで一番嫌なパターンは、山河内さんのアタックを取られた時。僕はブロックに回りたいが着地したばかりの山河内さんを動かしまくるのは戦力の低下につながりかねない。僕が後ろに回ればセッターは必然的に山河内さんいなる。この場合はツーアタックをするのが得策だろうがそればかりだと、山河内さんの疲労と批判ばかりが集まる。僕がアタックを打てれば全ては解決するが、それが原因で負けたくはない。

 どれだけ考えてもいい案は出てこなかった。結論、僕がアタックを打つ。それができれば負ける気はしなかった。ただ、タイミングの合わせ方が山河内さんのように上手くいくか自信はない。

 まあ、今度は僕らのサーブからだ。敵からのアタックのレシーブは、山河内さんに任せるしかない。

 

「とりあえずサーブは相澤さんを狙おう。岡澤君のアタックなんて止められる自信がないから」

 

「分かった」

 

 そんな時に僕は閃いた。これからずっと僕らが点を取り続けたらレシーブは山河内さん、トスは僕の形が作れる。相澤さんと岡澤君には酷だけど、零対十五の形をとらせてもらう。

 

「よし! じゃあいくよー」

 

 山河内さんのサーブは相澤さんの左へ抜け、サイドライン上に落ちた。

 サービスエースだ。

 

「やった! 二点目だ!」

 

「ナイス山河内さん」

 

 僕らはまたハイタッチを交わした。

 

「また同じような作戦でいいかな?」

 

「うん。相澤さん狙いでいいと思うよ」

 

 山河内さんのサーブはまた相澤さんの左に向かって飛んでいった。サービスエースなんて奇跡は二回も続かない。今度の相澤さんは、山河内さん並みに華麗なサーブレシーブを取った。そのボールを岡澤君が高くトスして相澤さんがアタックを打った。僕はブロックをしたけど間に合わず、手に擦っただけに終わった。

 

「タッチ!」

 

「ナイス!」

 

 山河内さんはこれもまた見事にレシーブを行い、僕は最初の時と同じような短いトスを上げた。山河内さんのアタックを今度は岡澤君がブロックに入ったが、指の上を擦り相澤さんを大きく超えて線の外に出た。

 

「やった! 三点目!」

 

 ハイタッチに飽きたのか今度はグータッチを山河内さんは要求していた。僕はそれにもちろん応える。

 

「今回もうまくいったけど、そう何回も同じことでは通用しないよ。次はどんな作戦にする?」

 

 山河内さんは、僕が立てた作戦が功を奏したような言い方をしていたが、そうじゃない。全ては山河内さんのおかげなのだ。山河内さんでなければ、三連続もポイントを取れていない。この戦いの鍵は山河内さん自身なのだ。だから僕はまた山河内さんを主軸に作戦を立てる。

 

「山河内さん。難しいと思うけど、岡澤君と相澤さんの間にサーブ打ち込める?」

 

「うん、風が吹かない限り大丈夫だと思うよ。でもどうして」

 

「二人を見てて思ったんだ。あの二人仲が良さそうに見えるけど、まだ連携が取れていない。あの二人間、それもお互いどちらが手を出すのかが悩ましいところにボールを落とせば二人とも躊躇するんじゃないかって」

 

「要求増えているじゃん。まあいいよ。負けたくないからやってみせるよ!」

 

 山河内さんは僕の言った通りのところにボールを打ってみせた。そのボールから相澤さん岡澤君お互いに手を引き合い、コートの真ん中に落ちた。

 

「やった! これで四点目!」

 

 今度はハイタッチを、山河内さんは要求していた。僕はそれに応えて、次の作戦を話す。

 

「次はまた相澤さんを狙って。三点目の時のようにうまく行けばいいけど、取られたらまた作戦を変えよう」

 

「分かった」

 

 要求した通り相澤さんの前にボールを飛ばし、相澤さんのサーブレシーブは岡澤君の真上へ飛び、岡澤君はネット際にトスをして相澤さんがアタックを打った。それを僕がブッロクし、相手のコート後方に落とした。

 

「よしっ!」

 

 思わずガッツポーズをしていた。

 

「やったね!」

 

 山河内さんからはタッチの要求はなかった。

 多分僕からしろということだと思い、右手を顔の高さに差し出した。その僕の要求に山河内さんは応えて、僕の右手と山河内さんの右手がぶつかり、ぱんっと音を立てた。

 

「もう一回同じ作戦で行こう」

 

「次は対策されるかもよ」

 

「そうなったならそうなったで仕方ないよ」

 

「分かった。もう一度相澤さんを狙えばいいのね」

 

「うん。それで行こう」

 

 僕らの作戦は二人に読まれていた。

 山河内さんはさっきと同じようなところにサーブを飛ばしたが、走ってきた岡澤君にサーブレシーブを取られた。

 

「相澤さん任せたで!」

 

「まかせろ!」

 

 この掛け声からツーアタックを警戒したが、相澤さんはトスを上げるだけでアタックは打たなかった。一歩遅れた僕は岡澤君のアタックのブロックに間に合わずに決められてしまった。

 初めての失点だった。僕の作戦がうまくいかず、ついに点を取られてしまった。

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