出会いの形は最悪だ 3
僕も同じ行動を取っているけど、他の生徒のような不純な理由ではなく、記憶を思い出すために仕方なくやっているのだ。同じ行動だけど同じにされたくはないね。
さてさてそんなんことより、彼女との面識を僕はようやく思い出した。きっかけは、彼女が席につく前に僕の方を見て不思議そうな顔を浮かべた時だ。あの顔を見るのは、今日は二回目だ。直近の記憶ではあるけど、思い出したくない記憶。
それは、今朝の女の子を蹴りかけた時にチラッと一瞬見えた顔そのものだった。それに気付いた瞬間から僕の背中は寒くなり、自分でも気が付くほど放心状態だった。まあ、そんなわけだから対面式がどんな感じだったのか僕の記憶は少ない。
対面式がわけもわからず終わり、僕ら新入生は一度体育館から退き教室へ戻った。
「大智、顔色悪いけど大丈夫か?」
「あ、ああ。大丈夫、大丈夫」
樹のこういう時の勘は本当に鋭い。だけど、もちろん欠点もある。
「なんだ。じゃあ、昨日夜通しでしたゲームの話でもしようか?」
勘は鋭いのだが、気は利かないのである。
聞く前からくだらないのが想像できるし、顔色悪い人間に話す話でもないだろう。第一、夜通しでゲームしたなんて全く持って興味がない。勝手にしてろよ! って感情しか湧かない。まあ、バカな話をして笑わせてくれようとしているところは認める。だけどそれは今じゃない。
「樹、またゲーム夜更かししてたんだ。それでよくそんな元気でいられるよね」
ああ、やっぱり、綾人は救世主だ。樹との会話をこれ以上続けるのは困難だったから本当に助かった。
「本当に。どうしたら毎日そんな元気でいられるんだよ」
楽しい休み時間はあっという間に過ぎていき、チャイムが鳴り響いた教室は、あっという間に静けさを取り戻していた。
「これからもう一度体育館に行って、今度は部活の紹介があるからな。座っているとこ悪いが、また廊下に並んでくれ」
教師の合図で、ガチャガチャと音を立てながら僕らは廊下に二列で並んだ。今回はさっきと違って少し自由だった。ちらほらと会話が聞こえてくるが、教師たちは誰も注意しない。注意されないとわかれば、会話をする人は次第に増えていった。あちこちで話し声が聞こえているけど、僕は近くに樹も綾人もいないからそもそも話し相手がいない。そして今回も、並んでからの出発が遅い。結局、列が進んだのは並び終えてから五分後くらいだった。
僕らは対面式の時と何ら変わらない席に誘導されその場に座った。この時にふと思ったことがある。僕はてっきり座る場所が変わるから教室に帰されてのだと思っていた。だけど実際は何も変わっていない。なぜ僕らは一度教室に帰らされたのだ?