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フェイタリズム  作者: 倉木元貴


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合宿の予定を 1

 合同親睦会が終わって、二ヶ月と少しが経った七月初旬。今度は地学部での合宿について、話合いを行っていた。


「夏休み中の地学部での合宿についてだけど、どこに行きたいか、みんなに意見を出してもらいたいと思います。行きたい場所がある方は挙手をお願いします」

 

 一番最初に手を挙げたのは、地学部の副部長で地上班の副班長、三年の山本太陽先輩だった。

 

「俺としては、去年も行った大浜の丘オートキャンプ場がいいんじゃないかなと思う。海も近くにあるし、紫谷地方唯一の天然池でもある海老ヶ池もあるし、この辺の海岸は国定公園でもあるし、地学部にとってはもってこいの場所だし」

 

「去年も行ったから、道とかまだ覚えているもんね。他にはどうかな?」

 

 今度は山河内さんが手を挙げた。

 

「私は美里キャンプ場を推薦します。目の前にある吉野川は遊泳も可能で使用料を払えば釣りもできます。さらには、近くには大きなサービスエリアがあり徒歩での入場が可能です。そこには温泉もあり、疲労を癒すのには最適だと思います。また、山間部にあるので川は透き通ってとても綺麗で空にも近く星も綺麗に見えます」

 

 山河内さんはマジだった。

 と言うか、この間行ったばかりだと言うのにまた行きたいのか。どれだけ山河内さんは美里キャンプ場がお気に入りなんだ。

 

「他の案はない?」

 

 他に手を挙げる者は現れず、この二つのどちらかを投票することになった。

 

「投票は匿名で行われるように、ノートの切れ端を渡すので、そこにどちらがいいのか記入し、二回折りたたんで私に渡してください」

 

 此花先輩からノートの切れ端をもらい、行きたいキャンプ場の名前を書き、二回折りたたんでから此花先輩に渡した。

 僕はもちろん、美里キャンプ場の名を書いた。何があっても山河内さんの味方であるために。

 だが、結果は大浜の丘オートキャンプ場になった。

 この結果は何となくそうなるのではないかと感じていた。だって、僕ら一年生は一番人数が多いと言ってもたったの五人だ。対して先輩達は、二年生が四人で三年生が二人。副部長である山本先輩の意見に此花先輩が乗っかったような状態で僕らに勝ち目はない。それに、紫谷地方唯一の天然池は地上班の人からしてみれば魅力的だと思う。山河内さんには酷な結果だけど、これは出来レースだったと思う。

 

「合宿をする場所は大浜の丘オートキャンプ場に決まったけど、日程も決めないとだね。今からだと予定はわからないことも多いと思うけど、予めここだけは絶対にダメっていうのがあったら教えて」

 

「おっす、このせん。私は、夏休みの終わりの二週間。十九日から家族旅行に行くのでそれ以前にお願いします」

 

 と、乃木先輩が言った。


 続けて堺さんも、手を挙げた。

 

「私も十九日からの二週間予定が詰まっているのでそれ以前にお願いします」

 

「なになに〜真咲君も家族旅行?」

 

「私はそんな大それたものではないですよ。単に出張に行っている父が帰ってくるので家族団欒を楽しむだけですよ」

 

「いいね! 楽しそう〜」

 

「乃木先輩の方がよっぽど羨ましいですよ。私は家族旅行なんてしたことないですから」

 

「それはなんかごめん……ひどいことを言ってしまったよ……」

 

「大丈夫ですよ。慣れてますから」

 

「二人とも。そろそろいいかな」

 

 乃木先輩と堺さんが楽しく会話しているところに此花先輩が水を差した。

 

「このせん。すんません」

 

「すみません。つい楽しく話をしてしましました」

 

「今は先に決めることを決めましょ」

 

「は〜い」

 

「他のみんなはどうかな?」


 地学部に入ってから三ヶ月経ったが、ほとんど話したことのない石川拓哉先輩が肘を机に置きながら手を挙げた。

  

「俺は八月二十一日以外ならいつでも。その日は新作のゲームの発売日だから、朝から並ばないといけないんだ」

 

 石川先輩には冷ややかな視線が集まっていたが、

新作ゲームの発売日は人生における一大イベントの一つだと言うことをみんなにも知ってほしかった。だが、このアウェイな状況下でそんなことを言えるわけもなく、僕も傍観者に加わった。

 石川先輩は、何もダメージを受けてないのか平然としていた。そんな強メンタルの先輩が少し羨ましかった。

 今度は副部長の山本先輩が手を挙げた。

 

「俺は七月中に課題を終わらせておきたいから八月にするのがいいと思う」

 

「そうだね。私も七月中に課題終わらせたいから八月がいいかな。今の所の話を整理すると。八月前半か半ばってところかな」

 

「あ、あの……」

 

 続いて大原先輩が申し訳なさそうに手を挙げた。

 

「お盆の間は祭りで踊るからそれ以外の日にしてほしいです……」

 

「そうだね。お盆の期間は急に予定が入るかもしれないから開けておいたほうがよさそうだね。そうなれば、八月の前半ってことになるね。他の人は予定とか大丈夫?」

 

 今度は山河内さんが静かに手を挙げた。

 

「私はお盆以外に予定はありませんが、土日よりは平日の方がいいと思います。ただでさえ混んでいる夏休み期間なので、休日は人が多くて動きずらいと思います」

 

「それはそうだね。じゃあ、八月前半の平日のうちの十日間。パターンとしては七通りだね」


 岡澤君も静かに手を挙げた。

 

「あの……八月の三日にバイトの面接あるんでそれ以外の日なら」

 

「そうなってくれば、八月の第二週だね。どの日がいいかまた投票でもしようか。一泊だから日付けを続けて書いてね。またノートの切れ端渡すね」

 

 またノートの切れ端を渡されて、適当に日付を書いてその紙を二回折って此花先輩に渡した。

 正直、僕は予定なんてなくて暇だからいつでもよかった。だから、六日と七日と書いた。

 

「投票の結果、八月の六日と七日になりました。場所の予約なんかは私のほうでしておくので、必要物品等の準備だけみなさんはお願いします。持っていくものは、纏めてまたグループの方で連絡します。合宿の予定も決まったし、今日の部活はこれくらいにしておきましょうか」

 

 此花先輩がそう言って今日の部活は終わった。

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