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フェイタリズム  作者: 倉木元貴


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合同親睦会 19

「みなさん準備はよろしいですか?」

 

「ばっちしやで!」

 

「私も大丈夫!」

 

「では、せーので送信ボタンを押してください。せーの!」

 

 投票の結果、一番に選ばれたのは山河内さんの写真だった。

 内訳はこうだ。相澤さん、堺さん、そして僕が山河内さんに。如月さん、岡澤君が堺さんに。中村君は如月さんに。山河内さんは何故か僕に入れていた。

 この結果を見てわかったことがある。男子は全員人で選んでいると言うことだ。

 

「やった! 私が一番だ!」

 

 山河内さんは喜んでいた。子供のように飛び跳ねてはしゃいで、時々お臍を見せながら。

 その微笑ましい姿を目で追って見ていたら、如月さんに肩を殴られた。

 

「痛っ! 何すんの?」

 

「最低です」

 

 如月さんにはバレていたようだ。

 

「明日も早いですしそろそろ寝ましょうか。明日の朝は六時半に起こすので覚悟してくださいね」

 

 僕らはコテージに戻った。戻ってまず何をしたかと言うと、誰がどこに寝るかの部屋割りだ。

 二階建てのこのコテージは、二階部分に部屋が二つあり、その部屋を男女で分けるのだと思っていたが、その部屋が女子四人で寝るには狭く、男子は問答無用でリビングで寝ることになった。

 

「今日一日過ごして、何回か同じこと思ったけど、如月さんって男子の扱いひどない?」

 

 リビングに布団を敷いて横になっていると、岡澤君は突然そんなことを呟いた。

 

「それは同感。如月さん過去に男関係で何かあったのかな?」

 

「もしなんかあったんやとしたら、この行動納得できるな」

 

 中村君は僕らの会話を止めにかかる。

 

 「そんなことよりも早く寝ようよ。もう零時だよ。朝も早いから寝た方がいいよ」

 

「ほれもほうやな。六時半に強制的に起こされるんやろ。今日は疲れたけん、早起きしたあないな」

 

「起きなければ如月さんに叩き起こされるだけだよ」

 

「ほれはほれで怖いな……よっしゃ、ほな寝よか」

 

 こうして僕らは眠りについた。はずだったが、僕だけ眠れなかった。

 心臓の鼓動も言うほど早くはない。トイレに行きたい気分でもない。枕が変われば人は眠れなくなるというが、僕は今まで家族旅行でも修学旅行のホテルでも眠れないと言う経験はない。なんなら、修学旅行なんて僕が一番に寝ていたくらいだ。それなのに眠れなかった。

 虫も気になるほど騒いではないし、風も全くと言えるほど吹いていない。昨日だって早く寝て朝も早く起きた。それから寝ていないし、今日一日動きっぱなしで足には疲労が溜まっている。頭も疲労を感じているはずなのに眠れなかった。


 眠れない原因も見つからないし、今の感覚的に眠たいと言う感情もない。目を瞑って羊を数えても50を超えたくらいで飽きる。とりあえず目を瞑るだけ瞑っていても、気づけば自然に目が開いてぼーっとしていた。

 眠れないから、とりあえずトイレにでも行って用を足してから再び眠りにつこうと考えて体を起こすと、微かにだが玄関付近で足音がした。時刻は深夜の一時を回ったところだった。

 普通に考えてみれば、女子の誰かがトイレに降りてきた。としか思えないけど、僕は階段を降りる足音を聞いていない。ずっと起きている僕がその足音を聞いていないのは変だろう。となれば、上で寝ている女子四人以外の人間になるのだが、岡澤君も中村君も僕の隣でぐっすり寝ている。全く知らない別の誰かの可能性が出てくるが、ここのコテージは出入り口は一つ。玄関の扉は開けば軋む音が鳴るが、そんな音は聞こえなかった。トイレの窓も人が通れるような大きな窓ではない。階段の途中にも窓はあるがそこははめ殺しの窓で開閉は不可能。脱衣所にも窓はあるが、面格子の付きの窓で人の出入りは不可能だった。残る窓は、ここリビングの掃き出し窓だが、ここから人が入ってくれば僕が気づかないわけがない。

 昨日も何度も恐怖体験をしたと言うのに、日付が変わって早速、恐怖体験がやってくるとは僕も運がないものだ。

 玄関付近で足音を立てた人物は、最小限の軋む音を立てながら扉を開き外に出た。

 鍵を閉める音は聞こえなかったから、多分戻ってくるつもりだ。怖く恐ろしいけど、僕は掃き出し窓のカーテンを少し開け、その人物が見える範囲に来るのを待った。

 もしこれで全く知らない人がそこにいたならば、警察に連絡するべきなのだろうか。それともまずは如月さんに言っておくべきだろうか。如月さんに電話をして出てくれればいいけど、出なかった時は如月さんが寝ているその部屋に突入するしかないのかな。入ったその瞬間に僕の命が尽きそうだけど、それで山河内さんの……いやみんなの命が守られるなら、この命惜しくもない。

 恐る恐る窓から外を覗くと、そこにいたのは変な人でも泥棒でもなく、山河内さんだった。

 足音の正体が泥棒でなかったことはよかったが、山河内さんはこんな時間に何故外なんかに出たのだろうか。

 後をつけたいわけじゃないけど、山河内さんが何をしているのか気になって僕も外に出た。

山河内さんは芝生の地面で、一人体育座りをして星空を眺めていた。

 

「あ、ごめん……起こしちゃった?」

 

 扉を閉める音に山河内さんが反応し、僕の方を向いてそう言った。

 

「大丈夫だよ。眠れなかっただけだから」

  

「そっか。実は私もなんだよね。修学旅行でも眠れなかったことなんてなかったのに、今日だけは眠れないんだよね」

 

 山河内さんは星空を眺めながらそんなことを呟いていた。

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