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フェイタリズム  作者: 倉木元貴


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合同親睦会 18

 振り返ると、如月さんは目を細くして作り笑いをしながら僕にこう言った。

 

「何故、三人だけでミルクコーヒーを飲んでいるのですか?」

 

 ミルクコーヒーを飲もうと言い出したのは僕じゃなかったけど、そんなことを言える雰囲気ではなかった。

 

「ねえねえ、歌恋。歌恋も何か飲まない? いちごミルクもあるよ」

 

「私は子供ではありません。私もミルクコーヒーを買います」

 

 そう言って、如月さんは僕らから離れて自動販売機の方へ向かった。

 山河内さんのおかげで、僕は九死に一生を得た気分になった。

 

「いやー怖かったわ。如月さんだけはほんまに怒らせんとこ」

 

 この場でそんなことを言える岡澤君もなかなかなやつだと僕は思った。

 

「ねえ、歌恋。本当にミルクコーヒーでよかったの?」

 

「は? どう言う意味ですか? そんな碧ちゃんこそ、いちごミルクにしなくてよかったのですか?」

 

「私はコーヒー飲めるから大丈夫だよ!」

 

「私だってコーヒーくらい飲めますよ」

 

「コーヒー飴食べられないのに?」

 

「それとこれとは別です。飲料としてのコーヒーは飲めますが、お菓子のコーヒーは苦手なんです」

 

「そんな言い訳して、甘くないコーヒー飲めないくせに」

 

「それは碧ちゃんも同じじゃないですか! 私は砂糖スティック一本あれば飲めます!」

 

「私だって一本入れれば飲めるし!」

 

 このくだらない言い争いに終止符を打ったのは相澤さんだった。

 

「私はコーヒーブラックで飲めるから、私の勝ち」

 

 それがどうした? と言いたくなるようなこの言葉でも二人には効果があった。山河内さんも如月さんも、相澤さんの言葉を聞いた途端に何も話さなくなった。

 さすが相澤さんだ。中学からの仲だけあるな。二人の扱い方をよくわかっている。僕もいずれなった時のために見習っておこう。

 くだらない言い争いはさて置き、ミルクコーヒーを飲み終えた僕たちは再びコテージに戻った。

 コテージでは天体観測の準備として、全身に虫除けスプレーをふり、星を見るには物足りない倍率の低い双眼鏡を準備した。

 

「皆さん準備は整いまいたか? では、天体観測会を開始いましょう!」

 

 如月さんのその合図で僕らは外に出た。

 外に出ると、そこには満点の星空が広がっていた。

 まあ、肝試しの帰りも温泉の帰りにも綺麗な星空は広がっていたから、特段驚くようなものではないけど。だけど、ここは僕が普段いる家よりも高度にあるから星が多く見える。辺りも暗いしそれが一層星を美しく見せていた。

 この無数にある星の中で、僕は如月さんに言われた星を探していた。春の大三角と春の大曲線。この二つの見つけ方はこうだ。まずは、おおくま座の北斗七星を見つける。北斗七星は、柄杓のような形をしているから見つけるのは簡単だ。北斗七星が見つかれば、柄杓の持ち手部分の星から下に扇状に線を描き、適当なところにあるオレンジの明るい星、それが春の大三角を形成する星の一つ、うしかい座のアークトゥルス。さらに、線を扇状に描いていき、明るく光る星がおとめ座のスピカ。

 春の大曲線はここで終わりと言う人もいれば、この先にあるどれかわからないようなからす座を含める人もいる。如月さんは一応からす座も含めていたから、おとめ座のスピカの右下辺りにあると言うことだけ言っておく。


 春の大曲線と春の大三角のうちの二つの星は見つけた。あとは見つけた二つの星から線を描き正三角形になりそうな星がしし座のデネボラ。

 如月さんに言われた星は全部見つけた。

 だけど……

 

「やっぱり、ここからだと星が綺麗に見えるね」

 

「そうだね……」

 

「私の家は県道の真ん前にあるから、街灯がいつも照らしていて、星は綺麗に見えないんだよね」

 

「私も……家から星なんてほとんど見たことない……」

 

「時代の進化に犠牲はつきものだね」

 

「うん……そうだね」

 

 こんな会話をしている山河内さんと堺さんの間に僕が入る余地などなかった。

 男子は三人ともほとんど話すことなく、ただぼーっと双眼鏡を使って星を見ていた。

 

「男子のみなさんもこちらに来てください」

 

 如月さんに呼ばれて僕ら三人は、如月さんの元へ向かった。

 

「これから星空写真をみんなで撮りたいと思います。つきましては、このアプリをみなさん入れていただきたいのです! このアプリがあればスマホで簡単に星空写真が撮れるのです!」

 

 如月さんは、僕らに[星撮らな]と言うアプリを入れるように勧めた。

 如月さんのことだからまた変なアプリなのではと疑いながらアプリを入れたが、単なる星が撮れるだけのアプリだった。

 

「みなさん入れてくださいました? では、誰が一番綺麗な写真が撮れるのか勝負しましょう! 今度は私じゃなくてみなさんで一斉に投票しましょう!」

 

「ええなあ、ええなあ。おもろそうやんか」

 

「一番になれるように頑張らなくちゃ」

 

「みなさん準備は整いましたか? 制限時間は二十分間ですよ。ではよーいスタート!」

 

 一斉に各所に散らばり、みな写真を撮りはじめていた。

 僕はどんな写真を撮ろうか悩んでいた。

 シンプルに星空の写真を撮っても、綺麗に写るこの星空をより綺麗に撮るにはどうすればいいのか。答えは簡単、より多くの星を収められればいい。星空以外の何もいらない。

 撮った写真は一枚に絞り、各々でグループに載せた。

 如月さんはシンキングタイムとして五分の時間を用意した。みんな綺麗に撮れているが、僕と同じことを思った人も数人いた。

 シンキングタイムの五分が過ぎて、いよいよ投票の時間がやってきた。

 投票の仕方は簡単だ。全員がグループを開き、票を入れたい人の名前を入力する。如月さんの合図で、全員が一斉に送信ボタンを押す。これで忖度なしの投票ができるそうだ。

 僕はもちろん山河内さんに票を入れる。正直言って、みんな綺麗に撮れていたから一番なんか選べなかったから。だから人で選んだ。

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