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フェイタリズム  作者: 倉木元貴


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合同親睦会 15

 不安と恐怖に飲み込まれ、残った全員でただ暗闇を見つめていると、突然中村君と思しき悲鳴が僕らの元に届いた。

 

「だ、だだ、大丈夫かな?」

 

 山河内さんは緊張と恐怖で声までも震えていた。

 

「しょ、所詮は如月さんの仕掛けだよ。本物じゃないから大丈夫だよ……」

 

 待っている間も、恐怖と不安が募っていき暗闇をただ愕然と見つめることしかできなかった。

 

「な、なあ……誰かおもろい話できひんの? 今の空気重たすぎて心が持たへんわ」

 

 それができれば苦労はしないのだけど、こんな時に思い付く面白い話なんてない。それに、面白い話をしたところでこの雰囲気、空気が変わるとも思えない。だが、この重たい空気が耐えられないのは僕も同じ。だけど、どうすればいいかなんて何も思いつかない。

 岡澤君のその言葉以降、僕らは口さえ開かなくなった。

 そんな時にまた、中村君の悲鳴が聞こえたのだ。今回の悲鳴は前回に比べて長い。それに徐々に近づいて来ているかように、悲鳴は大きくなっていた。

 

「な、なんかあったんかいな?」

 

「だ、大丈夫なのかな?」

 

 中村君の悲鳴はまだ響き続けていて、次第に一つの明かりがこちらに近づいて来ていた。

 もちろんそれは中村君で、息を切らしながら僕らにこう訴えた。

 

「カ、カカ、カッパが……」


 焦りで心拍数を高めている中村君を、相澤さんと岡澤君が必死に落ち着かせようとしていた。

 

「まあ、一旦落ち着きや。それも如月さんの仕掛けやろ」

 

「それよりも堺さんは?」

 

 どうやら僕も焦りすぎていたようだ。

 ペアで行ったのに一人でに帰ってきた中村君に違和感というものがわかなかった。

 これについて何よりも山河内さんが焦っていた。

 

「ま、まさか、真咲、連れ去られたとかじゃないよね……」

 

 それに対しして、落ち着きを取り戻しつつあった中村君が弁明した。

 

「それなら多分大丈夫だと思うよ。如月さんと少し話すって言って本堂のところに残ったから。カッパを見たのだって、帰ってくる途中に僕一人だったから……」

 

「そんなことより堺さんいけとんか?」

 

「カッパ見て卒倒してないといいけど」

 

「真咲、大丈夫かな……」

 

 僕以外の全員は、落ち着きを取り戻しており、焦りの感情よりも心配の方が優っているようだった。だが、僕だけは違った。何故なら如月さんに言われた仕掛けにそんなものはなかったからだ。

 川が見えるところは、スピーカーから女の人の唸り声というのが僕の知っている情報。如月さんなら偽の情報を言ったとしてもおかしくはないが、聞かされていた情報と違いすぎる。

 プラスで情報を集められればいいかとばかり思っていたが、どうやらそれだけではダメなようだ。今回は如月さんは本気だ。本気で僕たちを驚かせに来ている。

 それにしても、カッパの仕掛けなんていつ用意したんだ。少しではあるが僕だって仕掛けは手伝った。その時にそんな大掛かりなものを用意していた記憶はない。まさか、あの黒光りの車の運転手。あの人に頼んだのか。

 僕の計画はこの時点で破綻しているが、そのことは山河内さんには言えない。これだけは秘密だ。

 

「堺さんのことが心配やから俺ら行ってくるわ」

 

「堺さんは私たちが連れて帰るから、安心して待ってて!」

 

 学校以外のところではあんなに気怠けなのに、今の相澤さんは僕の目にかっこよく映った。岡澤君も頼りないと思っていたけど、頼り甲斐のある男に見えていた。


 こうして、二番目の相澤さんと岡澤君のペアが出発した。

 ただでさえ口数の少ない男子二人と、怖さで口数の減っている女子一人のこの場に、もちろん会話などなく三人で同じ暗闇をただただ眺めていた。

 しばらくして、いや体感時間は長かったが実際の時間では五分くらいして、相澤さんと岡澤君の悲鳴が聞こえてきた。

 

「だ、大丈夫なのかな?」

 

 不意に二人を見ると、完全に固まっていて僕の声なんて聞こえてないようだった。

 それからまた五分くらいして、二つの明かりが僕らの方へ近づいて来ていた。

 その二つの明かりは相澤さんと岡澤君のスマホライトの明かりだった。

 

「二人とも、大丈夫だったの?」

 

 二人はあんな悲鳴を上げながらも、平然としていた。

 

「ああ、如月さんにカッパがおったこと報告しようと思って、本堂のところで如月さん呼んだら、背後の草むらから急に出てくるけん、驚いて声上げてもうたんよ。でも、それ以外はいけるでよ。ほこらのお化け屋敷と何ら変わらんかったよ」

 

 相澤さんも岡澤君も、行く前に浮かべていた不安な顔はどこかに消えており、お化け屋敷を存分に楽しんだ後のようだった。

 

「そ、それよりも真咲は?」

 

 そう言えば、連れて帰るとか言っていたけど、確かにいない。

 

「ああ、それなんだけどね……ネタバレするのは趣味じゃないんだけど……堺さんは、歌恋ちゃんと共謀して碧ちゃんを驚かすつもりなんだ。途中のどこかに隠れていると思うんだけど、詳しい位置は……ごめん、教えてくれてなかったんだ。でも堺さんは、碧ちゃんがこう言うのダメってことまだ知らないと思うから、倒れられる前に言っておこうと思って……」

 

 堺さんは物静かなキャラだから、こう言うのイベントには参加したがらないものだと思っていたけど、その逆でノリノリだったのか。と言うか、山河内さんは倒れるくらいこう言うのがダメなのか。

 もし、それが本当なら、悪いことした気分だ。でもこれだけは知っていてほしい。僕も如月さんの被害者であることを。

 

「やっぱり行きたくない……」

 

 山河内さんは、行く気を失っていた。

 それは、堺さんが脅かし役に増えたことだけが因子ではないようだ。どうやら僕の采配ミスが一番の原因らしい。

 僕としては、前述している通り一番最後にして、どんな仕掛けがついているのか教えてもらってからにしようと思っていた。だが山河内さんは、みんなの悲鳴や薄暗い空間で過ごすうちに恐怖を募らせたみたいだ。

 

「山河内さん。さっさと行ってサクッと終わらせようよ。本当は僕もこんなこと言いたくないんだけど、あの如月さんが途中退場なんて許してくれるとは思えないんだよ。本心で言えば僕だって行きたくないよ。でも、行かざるを得ないと思うんだよ」

 

 僕は何故山河内さんを説得してしているのだろうか。山河内さんの気持ちを汲むなら、一緒に行かない選択肢を選ぶのがベストじゃないか。ああ、それよりも如月さんのペナルティの方が僕は怖いんだ。

 

「うん……わかった……」

 

 山河内さんは、行きたくなさそうだが、嫌々重たい足を動かしていた。

 僕と山河内さんは、スマホの明かり二つだけを頼りに暗闇へと足を進めた。

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