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フェイタリズム  作者: 倉木元貴


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合同親睦会 13

 僕が全問正解するのが先か草が全て集め終わるのが先、かいい対決になりそうな予感がしていた。如月さんもいつの間にか草刈りを終えて、草集めに徹していた。それでも問題を出すのはやめずに、僕が連続で全問正解するまでずっと問題は続いた。

 僕は、何とか草集めが終わる前に、連続全問正解を達成した。

 

「草刈りはこれにて終了です。ここからは買い出しに行きますよ」

 

 ここまでしてまだ買い出しがあるのかと落胆していたが、どうやら想像している買い出しとは少し違うようだ。

 僕はてっきり、ここから最寄りのスーパーまで徒歩で移動し、重たい荷物を持ちながらキャンプ場に向かうものだと。

 見晴らしのいい道路に出たところで、僕らの前に黒光の高級そうな車が止まったのであった。その車の後部座席の扉を如月さんは平然と開け、中に乗り込んだ。

 

「中田さんも乗ってください」

 

 本心では、こんな怖い車に乗らず、みんなのいるキャンプ場まで全力で走って逃げたかったけど、そんな行動はもちろんとれることはなく、素直に車に乗り込んだ。

 

「き、如月さん。か、買い出しは?」

 

 恐る恐るではあるがそう訊くと。

 

「草刈りに予想以上の時間を使ったので時間短縮です。買い出しに行ったていですよ。荷物は後ろのトランクに積んでありますよ」

 

 つまりは、買い出しはみんなへの言い訳ということだ。そこまでするとは如月さんやっぱり恐ろしい子だ。

 それ以上に僕には気になることがあった。

 この黒光の車は眼鏡を掛けた初老の男性が、白の手袋を装着し運転していた。服装もタキシードというのか、正装という言葉が似合う服装を着ていた。

 如月さんはもしかしなくても、お嬢様というやつなのか?

 気になるけど、今この場でも、コテージに戻ったとしても如月さんに訊けない。それを訊けば、下手したら罵詈雑言しか返ってこない。山河内さんに訊けばわかるかな。でもそれはできないのだった。黒光の車に乗ったなんて言葉には出せないし、それ以外に如月さんがお嬢様だと物語る証拠もない。この話はまたどこかで相澤さんにでも訊こう。

 そんなことを考えているうちに黒光の車は、美里キャンプ場の前に着いたのであった。

 

「あ、ありがとうございました」

 

 黒光の車から降りお礼を伝え、トランクからスーパーのビニール袋を二袋取り出した。

 

「ありがとうございます。ではまた」

 

 運転席に如月さんが向いその一言だけを伝えると、黒光の車は走り去っていった。

 

「私たちもコテージへ行きましょうか」

 

 如月さんがそう言って、僕らはコテージへと戻った。

 

「おかえりなさい。遅かったね」

 

 帰って早々、山河内さんのお出迎えを受けた。草集めの疲労が、その言葉一つで消え去るくらいに僕は幸せな気持ちになっていた。

 

「何を買おうか悩んでしまって、とりあえず肉とお米とお野菜とジュースはたくさん買ってきました。二人での“買い出し”も大変でしたよ」

 

「ありがとう! でもこんなにたくさん食べられるかな。もう“買い足し”なら言ってくれれば付いて行くのに」

 

「あ・お・い・ちゃーん。それ以上言うなら、私のスマホに保存されているこの恥ずかしい写真をばら撒きますよ」

 

 如月さんは、山河内さんにスマホの画面を見せていた。


 如月さんが「恥ずかしい」と言うから、どんなものかと拝見をしたかったが、さすが如月さんだ。遠くからは見えないように鏡面の保護シールをスマホの画面に貼っていた。

 

「うっ……ごめんなさい。歌恋、それでけは勘弁して……」

 

 山河内さんがここまで屈するその写真に、僕は興味しか湧かなかった。

 

「“買い足し”ね。確かにそう言うのが正しいね。ねえ歌恋ちゃん」

 

 相澤さんは如月さんに向かってそう言った。

 僕にはその言葉の意味がよくわからなかった。だがそれは僕だけではなく、男子の全員が軽く首を傾げていた。堺さんも何のことやらと言いたそうな顔をしていた。

 

「一花ちゃん。君も同じですよ」

 

「私は碧ちゃんと違って恥ずかしい写真なんてないよ」

 

 如月さんは、今度は相澤さんにスマホの画面を見せていた。さっきの場所より少し如月さんよりに移動をしていたが、今度は光の反射に拒まれて写真を見ることはできなかった。

 と、ここで一つ弁明したい。僕は、山河内さんの写真も相澤さんの写真も、本気で見ようとはしていない。間接的に見えたらいいなと考えているだけで、断じて変態などではない。

 と、そんなことは置いといて、相澤さんの顔はみるみるうちに険しくなっていき、この後の言葉は誰もが予想できたものだった。

 

「如月様、申し訳ございませんでした」

 

 相澤さんは土下座をていた。

 

「分かればいいのですよ。分かれば」

 

「ははー。二度と申しません」

 

 相澤さんはまだ土下座をしていた。

 

「もういいですから。みなさんで夕飯の準備でもしましょう。班分けはお昼と同じでよろしいですか?」

 

 まだ十七時になったばかりだと言うのに、如月さんは夕飯の準備だと言った。

 

「さすがに早すぎん?」

 

 岡澤君のその意見には僕も賛成だ。割とさっき食べたような感覚で、お腹が空いていないのは事実。

 

「今回は、お昼と違って準備や調理に時間がかかるので早めにするのが最適だと思いますよ。それと、この辺は山なので夜行生物が動き出す前に食べ終わるのがいいのですよ。虫もたくさん出てきますし」

 

 如月さんの最後に一言に、僕と女子全員が賛成し、夕飯の準備が始まった。

 まずはバーベキューコンロの組み立て。如月さんの助力が欲しいけど、「男子だけで頑張ってください」と言われ、三人で取扱説明書をじっくり見ながら、コテージを出てすぐのところで組み立てた。その間女子は何をしていたのかと言うと、コテージの台所で、四人で肉や野菜を切って準備をしていた。バーベキューコンロを立て終えると、ここからは僕の出番。炭と書かれた箱から小さな炭を取り出して、新聞紙で包みコンロの中へ並べた。

 如月さんに言われた通りに並べ終えると、如月さんに声を掛けた。

 

「如月さん。こんな感じで大丈夫?」

 

「ええ。それで大丈夫ですよ。よく一日で覚えられましたね。でも、今回のコンロは向こうで使ったのとは少し違うのでこのように、右半分には炭は多めに、その隣の左半分のその半分には少し減らして、さらにその隣のスペースには少なめに炭を用意すると、強火、中火、弱火が完成します。ここまでできたら百点満点でした」

 

 口では「へー。そうなんだ」と言いながら、心の中では、そんなことできるか。と叫んでいた。

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