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フェイタリズム  作者: 倉木元貴


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合同親睦会 10

「多分だけど……慣れじゃないかな?」

 

「それは違うよ」

 

 僕の感情について話し合っているはずなのに、相澤さんは明確に否定した。

 

「何も違わないよ。ここ数日でどれだけ如月さんに振り回されたと思っているの。そんな人間を好きにはなれないかな」

 

「だから愛なんだって」

 

「それは絶対にない」

 

 これ以上は言い合いになりそうだったが、相澤さんも引くつもりはなさそうだ。

 

「ないとは言い切れないよ」

 

「それは何で?」

 

「実はこことは違うパラレルワールドでは二人は結ばれていて、その記憶から引き寄せあっているのかもしれないよ」

 

「僕と如月さんが結ばれている世界なんて、例え何が起きようともあり得ない。それに平行世界なら同じように歳をとっているんじゃないの? 僕らはまだ高校一年生だよ。結婚なんてできないよ?」

 

「それはどうだろうか。パラレルワールドの世界が、こちらと同じ時間経過だとは限らないよ。今私たちの世界は一日が二十三時間と五十六分だけど、その半分の時間で一日が過ぎているのかもしれないよ。そうすれば同じ日に生まれたとしても、倍の年齢になっている頃だよ。それに昔のまま、制度が何も変わっていなければ、十代同士の結婚だってあると思うよ。だから安易に否定はできないと思うよ」

 

「恒星日と太陽日の話は一旦置いて、パラレルワールドなんて非現実的だよ」

 

「例え非現実的だとしても、私たちは観測したことがないから、あるともないとも断言はできない。あるかないかは誰にもわからない」

 

「何度も言うけど、例えパラレルワールドがあったとしても、如月さんと僕が結ばれることはないよ」

 

「そうとは限らないよ。パラレルワールドは実は鏡の世界で、文字も反対で左から右ではなく右から左に書いているのかもしれないよ。だから食べ物が飲み物で、飲み物が食べ物だったそしても変じゃないと思うんだ。『肉食べよ』なんて至って普通の言葉が『肉飲みよ』なんて言葉になっているかもしれないんだよ。もしそんな世界があるなら私は行ってみたいと思うよ」

 

 山河内さんも如月さんも、相澤さんとは話せば面白いと言う意味がわかった気がする。如月さんとのことはどうしても認めて欲しいみたいだけど、パラレルワールドなんて空想の話だけど悪い話ではない。もしも本当にパラレルワールドがあるなら僕だって行ってみたいものだよ。

 そう思いながら僕は空を見上げていた。何故かというと、相澤さん、悪い人ではないのだけど、とにかく話が長い。僕への質問をしていたのがいつの間にか相澤さんの一人語りに変わっていた。それに時々頷きながら話を聞き流して過ごした。だけど、興味のある分野だけはしっかりと聞き耳を立てた。それは宇宙についての分野。いつか山河内さんと話せたらと思いながら聞いていた。

 

「宇宙には幾多の星々があるけど、私たち以外の生物は見つかっていない。でもそれは見つかっていないのではなくて、単に私たちが見つけられていないだけ。遥か彼方の星では私たちは見つかっているのかもしれない。接触してこないってことは、侵略を企んでいるか単に興味がないかどちらかと思う。その場合どちらも私たちより文化も技術も進んでいるはず。勝てない戦いなんて挑まないと思うし、衰退している技術にも興味は湧かないよね。私たちより発展している技術って一体どんな感じだろうね」

 

「僕に聞かれてもわからないよ」


「私たち人間はハビタブルゾーンなんてものを作って、そこにある惑星に生物のいる可能性が高いとしている。だけどそれって、人間が考えた生物がいる可能性だからそれ以外に生物が居たっておかしくないと思わない。人間は潜水艦や建物がなければ水中で暮らせないけど、魚や鯨、貝類なんかも水中で生活している。北極も南極も同じ、ペンギンやホッキョクグマは生活できているけど、人間は建物と火ががなければ生きていけない。人間が住めないってだけで、そこに生物はいないなんて安直な考えだと思はない。もしかしたら酸素がなくても生きていける生物もいるかもしれないよ。そんな生物いるなら見てみたいね」

 

 ようやく終わったのには理由があった。

 僕と相澤さんが話をしているこの場に山河内さんと堺さんが戻ってきたのだ。

 

「二人も遊んできなよ!」

 

「僕はいいよ。久しぶりに早起きして疲れたから」

 

「私も。碧ちゃんに朝早く起こされたから眠くて、もう動きたくない」

 

 相澤さんに似たもの同士と言われて、そうだろうかと密かに思っていたけど、どうやら僕らは本当に似たもの同士のようだ。

 

「もう二人とも。せっかく来たのに見ているだけじゃつまらないでしょ?」

 

「そんなこともないよ。楽しそうに遊んでいるみんなを見ていると、こっちまで楽しいい気持ちになるから。それだけで充分だよ」

 

 相澤さんは頷いていた。

 

「はしゃぎたい人もいれば、それを静かに傍観したい人もいるんだよ。私たちは後者ってだけだよ」

 

 山河内さんは納得していなかったけど、静かに僕の隣に座った。

 

「碧ちゃんが、二人が楽しく話しているのを見て嫉妬しているだけだから気にしないで」

 

「ちょ! ちょっと! 変なこと言わないでよ! 全然そんなんじゃないから! 中田君真咲の言うことなんて信じないでよ!」

 

「ああ、うん」

 

 言葉ではそうは言ったが、本心では踊りだしたくなるくらいに嬉しかった。顔がにやけないように必死に堪えて、うるさく鳴る心臓を深呼吸しながら落ち着かせた。

 

「単に疲れたから休憩しに来たんだよ。今度は私たちが休んでおくから、二人は遊びに行ったら?」

 

 そんな気まずいことできるか。と言いたかったがその言葉は生唾と共に飲み込んだ。

 

「休憩だったら、さっきの昼食の時のオレンジジュース余っているから飲む?」

 

「え! 飲む飲む! 真咲は?」

 

「じゃあ、私も貰おうかな」

 

 僕は二つの紙コップにそれぞれオレンジジュースを注いだ。そして、その二つの紙コップを山河内さんと堺さんに手渡した。

 

「私の分は?」

 

 相澤さんが何も言わずに手だけを出していたのは知っていて不思議に思っていたけど、それがまさかジュースを入れろだとは思いもしなかった。

 渋々ではあるが新たに紙コップを取り出して、そこにオレンジジューズを注いで相澤さんに手渡した。

 

「今度は私の分も入れてください」

 

 タイミングを見計らっていたのか、蓋を閉めきったと同時に如月さんはそう言った。

 如月さんが戻ってきたと言うことは、岡澤君や中村君も一緒だと言うことだろう。また閉めきった時に言われるのだけは勘弁だ。だから、新たに紙コップを四つ出し、その全部にオレンジジュースを注いだ。一つはもちろん如月さんの分。残りは僕を含めた男子三人の分。

 

「ありがとうございます。遊び疲れてちょうど喉が乾いていたのですよ」

 

「お! 中田君気が利くやん。ありがとう! いただきます」

 

「あ、ありがとう」

 

 僕はオレンジジュースを入れただけなのに三人はお礼の言葉を口にした。

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