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フェイタリズム  作者: 倉木元貴


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合同親睦会 9

 僕は河原をうろうろとしながら、テキトーに石を拾っては、周りの石と見比べて良さそうな方を岡澤君に持って行っていた。だが岡澤君はなかなか首を縦には振らない。それは自分にも中村君にも一緒だった。

 如月さんにより集合の合図がかけられお互いに集めた石を見せ合った。僕らは岡澤君が化石のようなものを見つけてそれだけを見せた。一方女子の方は、半透明な白い石。これは勝ったと思ったが、如月さんの軍配は女子のグループ方に上がった。理由を尋ねると。

 

「岡澤さんが持っているその石は、忍石ですね。またの名を偽化石とも言います。外観は化石に似てますけど、化石じゃないんですよ。対して私たちの石は、石英と言ってごく普通にそこら辺に落ちている石ですが、透明度が高いものはスマホのガラスなどに使われていて、半透明なものはなかなか見つからないのです。なのでレア度で言うなら私たちの方が上です」

 

 石に詳しくない僕らは何も言い返すことができなかった。

 この茶番に一番に飽きた岡澤君は、中村君を連れて川へと入っていった。その様子を見て如月さんも川へ入り、山河内さんも堺さんを連れて川で遊んでいた。

 僕も誘われたが割と疲れていたから断って、河原で座り込んでいた。

 岡澤君と中村君と如月さんは、川遊びから水切り対決に舵を切り替え、平な石を探しては川に投げていた。山河内さんと堺さんはお互いに水を掛け合い、微笑ましい遊びをしていた。岡澤君たちの方は、如月さんが驚異的な記録を出したみたいで、岡澤君と中村君が平らな石を必死になって探していた。薄々感じていたけど如月さんって運動神経が抜群にいいんだよな。岡澤君も運動神経は良さそうだけど、如月さんはそれ以上だと言うことか。不意に山河内さんの方に目を向けると、二人はまだ水を掛け合っていた。微笑ましい二人を見るのは目の保養になるが、僕にはあまり右方向に向けない理由があった。

 気が付いてない人は川遊びを始めた頃から読み返してほしい。一人行方知らずになっている人物がいるだろう。そう、相澤さんだ。彼女は今どこで何をしているのかというと、僕の右隣に座っている。同じクラスの人間だけど、ほぼほぼ初対面なものだから僕らに会話などなかった。それが気まずくて気まずくてずっとみんなが遊んでいる方に視線を向けて、頭の中で解説のようなことをしていたのだ。

 それ以外に考えていたことと言えば、早くあの五人が帰ってこないかなと切に願っていた。まあ、それは天気が崩れるか雷が鳴り響くかダムが放流でもしない限りない。が、どれも当てはまりそうにないのだ。天気予報では今日は一日中晴れだそうだ。となれば雷が鳴る確率も低い。山の天気は変わりやすいと言うが、今日は晴天と言う言葉が一番似合うような、雲を見つけるのが逆に難しいくらいに青空が広がっていた。ここの川の上流にあるダムは毎週水曜日に定期放流をしている。今日は土曜日だ。上流で大雨でも降らない限り緊急の放流はないだろう。だが、天気が急変して欲しいとは願えない。今日の夜にある天体観測会を何よりも山河内さんが楽しみにしているから。

 と言うことはつまり、あの五人は飽きでもしない限りこちらに来ることはないと言うことだ。なので、もうしばらく相澤さんとの気まずい空気を吸わないといけないようだ。


 会話はしたくないけど、会話が欲しい。この時間だけを倍速で過ごしたい。

 そう願っていたら、相澤さんの方から仕掛けてきたのであった。

 

「ねえ。中田君ってさ。歌恋のことどう思っているの?」

 

 突然の相澤さんからの質問は、また返答に困るような内容だった。

 

「どうって。別にただの友達。クラスメイトだとは思っているよ」

 

「それだけ?」

 

「それだけ?」とは? 疑問形に対して疑問形で返したい。でもそれを言えば、これ以上に会話が弾む。この話題では会話は弾ませたくない。

 相澤さんはいったいどんな感情でそんなことを言っているんだ?

 

「出会ってからそんなに月日も経ってないし、それ以上の感情は湧かないよ」

 

 我ながら完璧に近いと思う回答も、相澤さんは興味がなかったようだ。だからか、とても簡単な言葉で僕の回答を片付けた。

 

「ふーん」

 

「…………」

 

「ふーん」と言う言葉は僕もよく使うけど、相手にそれを言われれば返す言葉なんてないんだよな。

 また無言になってしまったけど、会話が始まる時よりかは幾分マシだと言うことがわかった。

 このまま何も話さず時間だけが過ぎることを願ったが、そう簡単に願いは叶うものではないようだ。

 

「それ以外の感情もあるでしょ?」

 

「それ以上の感情って?」

 

 しまった。

 疑問形に疑問形で返すのはやめておこうと思っていたが、ついつい感情的になってしまった。

 

「自分で気がついているでしょ? それとも教えてあげようか?」

 

 何が言いたいのか理解はしたくなかったが、なんとなくだが言いたいことがわかった。つまりは、僕が如月さんに恋でもしていると言いたいのだろう。

 ここは一応わからないフリでもしておくか。

 

「わからないから教えて欲しいな」

 

「うーん、そうだね。例えば愛とか」

 

 僕の予想の斜め上の展開になっていた。

 

「それはない」

 

「じゃあ、ライク?」

 

「それもない」

 

「中田君ってさ、私と同じ匂いがするんだよね。人と話するの苦手でしょ?」

 

「まあ、それは否定しない」

 

「だけど、歌恋ちゃんとは冗談も言える仲」

 

「そうでもないと思うけど……」

 

「おかしいと思はない?」

 

「何が?」

 

「中田君さっきから私の目を全く見ないし、簡単な返事しかしていない。今日一日見ていて、それは私だけじゃなくて堺さんや碧ちゃんにも同じだった。歌恋ちゃんが強引なことは私も知っている。結構迷惑に感じる時もあるし。と言うか、迷惑しかない。けど、それでも、中田君がそう簡単に仲良くなれるとは思えないんだよね。勝手な印象で悪いけど。人と話すのが苦手な中田君が、何故歌恋ちゃんとは仲良く話ができるのか? 不思議じゃない?」

 

 ここ何日間か相澤さんを見ていて、何も話したがらない寡黙な少女だと思っていたが、案外鋭い視点を持っているのだな。

 正直なところ僕も何で如月さんには気安く話しかけられるのか謎なのだ。如月さんと初めて出会った時だって、初対面なら特に話せなくなる僕が割と普通に会話できたと思う。これはまだ僕の想像でしかないけど、如月さんの男勝りな性格が、僕の脳で性別を誤認させているんだと思う。

 ただ、これは僕の単なる想像でたとえそれが誰相手だったとしても話すことはできない。だからもちろん、相澤さんにも言えない。ここは簡単な言葉で返す。

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