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フェイタリズム  作者: 倉木元貴


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合同親睦会 8

「俺は焼き鳥を作りまっせ」


「鶏肉は十分に火を通してください」


「任せとき」


 岡澤君は反対に作り慣れているのか、手慣れた手つきで肉を焼いていた。どこかにお店でも持っているのかと言いたくなるくらいに、頭に巻いたタオルがベテランのオヤジ感を物語っていた。

 

「私たちは荷物の整理をして、食べる準備をしましょう。中田さんは食器類の用意をお願いします」

 

 如月さんにそう言われ、僕は如月さんが持って来た大きなカバンの中から人数分の紙コップ、割り箸、アルミ皿を用意した。その間に如月さんはテーブルと椅子を用意していた。あの時持っていた筒状のものは椅子だった。

 食べるための準備はこれで大方仕上がり、手持ち無沙汰になった僕は岡澤君に話し掛けた。

 

「何か手伝おうか?」

 

「いけるで! ありがとう!」

 

 とう言うことなので、如月さんと山河内さん、相澤さんと同じようにテーブル前の椅子に腰掛けた。

 もちろん彼女たちとは離れて座った。話し掛けられたくないし、近づきすぎたら盗み聞きしているとも思われかねないから。でも、三人の会話は話し声が少し大きく、いや周りが静かすぎるだけなのか、一番遠い席に座っていても余裕で聞こえていた。できるだけ聞かないように周りの景色に集中し、ときには遠くの方の空や雲までも見ていたが、耳を閉じでもしない限り会話は耳から入って来ていた。

 だがここで僕は重要なことを思い出した。汽車に乗っているときに如月さんから送られてきたあの画像を覚えないといけないと言うこと。汽車に乗っている時は完璧と言えるくらいに覚えていたのに、今思い出そうとしたらほとんど思い出せなかった。必死に準備をしているうちに頭から勝手に出ていったようだ。危うく如月さんの課題を達成できない所だった。が、ズボンのポケットに手を伸ばそうと思ったと同時に料理が運ばれて来たのだった。

 

「うまいもんができたで!」

 

「こっちもできたよ。中村君お疲れ様」

 

「何とか、かろうじてできた」

 

 疲れ切っている中村君には申し訳ないけど、タイミングが悪い。

 今のタイミングを逃せば、この先にスマホを悠長に見る時間なんてあるのかな。朝もみんなが揃ってから悠長に過ごせた時間は汽車とバスの待ち時間だけ。それ以外は移動か食事か常に何かしていた。そんな如月さんのことだ、ぎっしりと詰まったタイムテーブルを今後も用意しているに違いない。

 僕が取れる行動は一つ。全力で思い出すことそれだけだった。

 だが、どれだけ必死に思い出そうとしてもどうしても思い出せなかった。脳内のメモリには保存したはずなのに保存先が見つからない。パソコンのように検索機能があれば。

 そんな現実逃避を一緒に考えていた。


 せめて星の名前を一文字でも思い出せたらふと保存先が見つかるかもしれないが、その一文字さえも思い出せない。今現時点で思い出せているのは、春の大三角と春の大曲線、春の大曲線の終点がカラス座であるということ。カラス座には星の名前が書いていなく、その手前の星には星座と星の名前が書かれていた。確か三文字で覚えやすそうな名前だった。これ以上は出てこなかった。

 

「何難しい顔をしているのですか?」

 

 頭をフル回転しているせいで、どうやら難しい顔を浮かべていたようだ。だが、それを如月さんに言われるのだけは釈然としない。誰のせいでこんなことになっているのか。半分は僕のせいだけど、もう半分は如月さんのせいだと思う。如月さんが変な課題を出すからこんなことになっているのだ。

 そんなことを思いながらも昼食の焼きそばと焼き鳥はしっかり完食した。

 後片付けは、当然のように僕と如月さんは炭の後処理で、後のメンバーはゴミを集めたりテーブルと椅子を畳んだりを行っていた。また如月さんんと二人きりになったから今度こそ訊いてみた肝試しはどこでするのか。

 

「ああ、それなら地図には載っていないお寺が近くにあるのでそこでしようと思っていますよ。山の麓にあるので、早いうちに行こうと思いまして夕食後に予定しています。トラップの位置しっかり頭に叩き込んでいてくださいね」

 

 いつものような圧に屈して僕は無言で頷くことしかできなかった。

 

「ちなみにこれからは何をするの?」

 

「河原で石拾いですよ。珍しい石があれば磨いてみるのもいいかもですね。化石とか見つかれば面白いですけどね」

 

「へえー。それは面白そうだね」

 

 本当はそんなに興味はない。地学は他の科目に比べて好きな方だけど、石が絡む火山の分野は全くというほどできないのだ。火山岩だとか深成岩だとかはよくわからない。この分野で唯一覚えているのが、中学の時に理科の教師が語呂合わせで「玄・安・流、斑・閃・花」と言っていた言葉のみ。これがどう役に立つのか僕は知らない。

 片付けを終えて、僕らは河原に集まった。

 

「みなさんここからは、川遊びを行います」

 

 過半数は乗り気ではなさそうだが、それ以上にテンション高めの二人は盛大に喜んでいた。

 

「但し! 私たちは遊びに来たのではないので、川で石拾いをします。ルールは簡単。男女で分かれてどちらがレアそうな石を見つけられるか対決です。判定は私がします」

 

 と、女子に圧倒的有利な条件で謎の石拾い対決が始まった。

 

「石拾いとか急に言われても、レアそうな石ってなんや? ここはRPGの世界とちゃうんやで。中村君か中田君石詳しくない?」

 

「ごめん僕は、石だけは本当にわからない」

 

「僕も。正直言って地震のことしか興味ないから、石はわからないね」

 

「そう言えば。入部初日に岡澤君石に興味があるって言ってなかった?」

 

「言ってた、言ってた。この中じゃ岡澤君が頼りだよ」

 

「くー。そこまで言われるならしゃーないな。でも二人ともよさげな石見つけたら言ってくれよ」

 

 こうして僕らは岡澤鑑定士のもとでレアそうなという曖昧な石を探した。

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