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フェイタリズム  作者: 倉木元貴


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合同親睦会 7

「おお! 正解です! 本当に勉強はしてきているのですね」

 

 自分でそう言ったのに、そんな発言をしていたことをすっかり忘れていた。もし、さっきの場面で不正解を出していたら、「動画を見てきたと言っていたじゃないですか。動画を見たというのは嘘だったのですか?」なんて言葉で責められていただろうな。そうなれば弁明は不可能だ。だが、見たのは事実なのだ。こんなところで言っても仕方ないけど、動画は早送りも倍速視聴もせずに、最後までしっかりと見たのだ。ただ、内容をほとんど覚えていないだけなのだ。まあ如月さんからしてみれば、それは見ていないのと同じなのだろうな。

 今回はたまたま答えがいい方向に転んだが、同じように問題を出されて、またいい方向に転がるとは思えない。今日一番の難局は、今この時かもしれないとプレッシャーを感じていた。如月さんによる火の付け方講座を真剣に聞きながら、問題がくるなら誰でもわかるような簡単な問題でありますように。と心の中で願った。

 

「では炭に火を付けたいと思いますが、炭に直接火を付けようとしてもそう簡単に火は付いてくれません。ではどうすれば火が付きやすくなると思いますか?」

 

 簡単な問題であることを願ったが、さっそく難問が来てしまった。

 そもそも、炭に火がつきにくいこと自体が初耳だ。だが、「動画を見た」と言った手前この問題は解かなければならない。動画では何と言っていたかと考えるが、一言一句何を言っていたのか何一つ思い出せない。諦めて単に着火剤と言ってしまおうかと考えていると、僕の視界にたまたま新聞紙が目に入った。新聞紙なんてこの場での使い道がなければわざわざ炭の箱の上に置かない。調理をするときに新聞紙なんて燃えやすくて危ないから使わないだろうし、野菜やまな板の水分を拭き取りたいなら、キッチンペーパーのような物の方が便利だろうし、野菜や肉を切るのにも使わないと思う。となれば、僕たち火起こしの班が使うということ。そして新聞紙は燃えやすい。焼き芋を外で作る時、落ち葉と新聞紙に火を付けているイメージが勝手ながらある。それにお盆の時、おばあちゃんがよく迎え火と送り火を焚く時に新聞紙を燃やしていた。

 答えは新聞紙で確定した。だけど、一つ腑に落ちない。あの如月さんがこんな初歩的なミスをするか? そこがどうしても引っ掛かる。あの如月さんだぞ。全てを見透かしているようなあの如月さんがこんなミスを……。

 考えられるのは一つ。わざと置いたということだ。理由はわからない。

 

「新聞紙を使うとよく燃えると聞いたことがある」

 

「おお! 正解です! なかなかやりますね。これならもっと難題で出すべきでした。ですが、百点とは言えませんね。正解は、小さな炭を新聞紙で包むのですよ。これが言えたら百点でしたよ。まあ、火の付け方はその人その人のやり方があるので一概にこれが絶対正しいとは言えませんが」

 

 如月さんはこう言っているが、今の僕には百点なんていらない。及第点を取れればそれでいい。如月さんに火が付かなければそれでいい。


「では、一緒に作っていきましょう!」

 

 こうして僕らは陽の当たる明るい場所で、小さな炭に新聞紙を包み角を集めてくるくると硬く巻いていく作業をこなしていた。

 場所を移動したということは、そろそろ如月さんの作戦というのを聞かされる頃なんだと覚悟した。が、作戦といっても簡単で、如月さんの話は長かったが要は、山河内さんが心霊系がダメなことと、肝試しの際のトラップの位置を正確に覚えろということだった。

 炭を十個ほど巻き終えたら東屋に戻り、如月さんの火の付け方講座も最終段階になっていた。

 

「では炭を組んでいきましょう。まずは私が手本を見せるのでよく見て覚えてください」

 

 解説付きで組み方を教えてくれるのだと思っていたが、如月さんは何も言わずに淡々と炭を組み上げた。そして組むスピードが早すぎて途中経過が頭の中に何も残っていなかった。

 

「このようにして炭を組んでください」

 

 完成図だけを見せられても、どう組んでいけばいいのかわからない。だけど、それを如月さんには聞けないし、見よう見まねで乗り切るしかなかった。

 とりあえず、第一問を出された時に学習した小さな炭が下。その上に中サイズの炭を置き、立てかけるように大きな炭をおいた。如月さんのものと比べると見劣りするが、いい出来だと自分を褒めたい。

 

「まあ、初めてにしてみれば上手くできたのじゃないですか。では早速火を付けていきましょう」

 

「どこに付けるのがいいとかあるの?」

 

「新聞紙に付けるならどこでもいいですよ。動画を見て勉強してきたのじゃなかったのですか?」

 

 しまった。こんなところで地雷を踏んでしまうとは。

 

「い、一応確認のために。さっきも新聞紙で包むのとか詳しくてすごいなと思って……」

 

 嘘は言っていない。だから大丈夫なはずだが、如月さんは疑っているような視線を僕に向けていた。

 

「手慣れてますから当然ですよ!」

 

 全然大丈夫だった。

 今日の如月さんはおかしい。この火の付け方講座もいつもと違って教え方が優しい。僕は責められるのが好きなドMではないので、優しい方が嬉しいがそれはそれで怖く、気持ち悪く、全身に鳥肌が立っていた。

 如月さんのおかげで難なく火を付け終え、あとは調理班の岡澤君に火を託した。

 

「火が付いたのでお昼ご飯の準備をしましょう。では調理は真咲ちゃんよろしくお願いします」

 

「はーい。任されました。私は中村君と焼きそばを作ります」

 

「したことないけど頑張る」

  

 堺さん指導のもと、中村君が調理を行うようだ。中村君は調理は初めてなのか不安な顔を浮かべながら恐る恐る調理をしていた。

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