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フェイタリズム  作者: 倉木元貴


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旅の計画を 3

「さて、気を取り直して部活動についてだけど、主には今日みたいに部室で天体や惑星について話し合ったりしているの。たまに地上班の手伝いで地質の調査をしたりしているよ」

 

「他にも、毎月第二水曜日は月刊ユニバースの発売日だから、その日はみんなで本を読んだりしているよ!」


「その他にも、毎年夏休みの時期には天体観測も兼ねて合宿もしているんだよ。秋になれば今度は文化祭の展示、冬には天体観測会。文化部の中では割と忙しい方だと思うよ」

 

 僕はその話を聞いて地学部に入ったことを少しだけ後悔した。だけど、二つ隣の山河内さんの顔を見ればそんな気は紛れていた。

 

「だからみんな、夏休みは予定空けといてね。せっかくの合宿なのに誰かがいないなんて嫌だけらね!」

 

 大原先輩と乃木先輩の二人が交互に話すから、僕らはテニスのラリーでも見るように顔を右に左に動かしていた。そんな中大原先輩は、乃木先輩の背後に回り静かにヘッドロックを決めていた。

 

「そうそう、三年生は文化祭が終われば部活はそこで終わりだから、基本的には私たち二年生が引き継いでしていくけど、冬の天体観測会は勉強頑張っている先輩たちを労う会だから一年生諸君にも迷惑かけるかもだけど、その時はフォローよろしくね」

 

 この言葉に大いに反応していたのは山河内さんだった。

 

「そうなんですね! それは張り切らないとですね! 私も微力ながらお手伝いいたします」

 

「ありがとう。でもね、そこで燃え尽きちゃったら、そのあとの卒業式に新一年生の勧誘ポスターの作成、部活動紹介の紹介文の作成、部活動体験会の準備ってやること盛りだくさんだから大変なんだよね。去年はそれで大変な思いをしちゃったからみんな燃え尽きないでね。とまあ、これが私たちのこの一年の軌跡かな。今年も同じように進むと思うからそのつもりでいてね」

 

「はい! 肝に銘じておきます」

 

 流石は優等生。僕にはそんな言葉は思いつかなかったよ。

 

「そんな気負いしなくても大丈夫だよ。これも、大原の冗談みたいなものだから全部間に受けないでよ」

 

 楠木先輩がそう言うと、大原先輩は被せ気味に反論した。

 

「冗談じゃないでしょ。全部去年の事実じゃん」

 

「それはそうだけど、そんなに大変なんだって一年が萎縮するだろ」

 

「それでも事実は事実のまま伝えるのが正しいと思う。変に湾屈させるのは優良誤認表示の商品と同じだよ」

 

「分かった分かった。今回は僕の負けだよ」

 

「よっし! 勝った!」

 

 僕らは一体、何を見さされていたのだろうか。この言い合いに慣れているのか乃木先輩は何も言わないし、一年生は誰も何も言えない。山河内さんも自然と首を傾げているし、堺さんはずっと真顔。僕も真顔で過ごすしかできなかった。

 

「二人ともまた喧嘩しているの? もう時間だから部活終わるよ」

 

 部長である此花先輩がそう言って、言い合いも部活も終わった。


「あー今日は本当に面白かった」

 

 一年生五人で部活を終えて廊下を歩いている時、山河内さんは突然そう言った。

 

「山河内さん笑いすぎ……」

 

「でも面白い先輩ばかりで安心した」

 

 堺さんまでも笑いながらそう言った。

 

「だね! これからもっと面白いことが起きるって考えたら楽しみで眠られなくなるね」

 

「山河内さんって、真面目でお堅い子だと思っていたけど、話せば面白いね」

 

「ありがとう。よく言われるのだけど、私ってそんなに堅いイメージある?」

 

「うーん。あんなスピーチ見せられたら真面目な子なんだなって第一印象は思うよ」

 

「やっぱり! だからスピーチに一捻り加えようとしたのだけど、先生に止められちゃって、実行できなかったんだよね……」

 

「そうなんだ。ちなみにどんなの用意していたの?」

 

「え? そ、それはちょっと……あ、あれは、夜中のテンションで書いたやつだから、その、あの、人様に見せるようなものじゃないんだ……」

 

「そんなこと言われたら余計に気になるじゃん。今度でいいから教えてよ」

 

「えー……ま、また今度、二人の時なら……と言うか、この話もう終わり! それと、私のこと『さん』付けで呼ばなくていいから!」

 

「分かった。また今度話聞かせてね。碧ちゃん」

 

「絶対誰にも言わないでね」

 

「分かっているよ。口は堅いから大丈夫だよ」

 

 僕は盗み聞きをしているわけではない。これは不可抗力。僕の前を歩いている二人の会話が自然と耳に入ってくるのだ。だから断じて盗み聞きなどではない。

 

「なんや中田君。ほっちはなんやおもろいこと起きとったんやってな。ほっちは女子ばっかで羨ましいなあ」

 

 何故か岡澤君が面倒くさい絡み方をしてきていた。

 

「こっちはこっちで色々大変だったよ」

 

「中田氏はそう言うが、二人の会話を聞く限りそうは思えないのだが?」

 

 面倒くさいのが増えた。

 

「二人の会話は表面のことだけどから、内面はもっと大変だったんだよ」

 

 そんなことを言われても信じられない、と言いたそうな顔を二人は浮かべていた。

 これが事実なのに誰も信じてくれない。冤罪はこうして起きるのだと実感した。

 

「なあなあ、二人はどっち派や?」

 

 岡澤君は小声で突然そう言った。

 理解が追いつかなかった僕は、岡澤君の問いに質問で返した。

 

「何が?」

 

 相変わらずの小声で岡澤君は答えた。

 

「何がって、決まっとるやん。可愛くて頭もいいショートボブの山河内さんか、大人美人で清楚な黒髪ロングの堺さん。どっちが好みかや」

 

 僕もため息を吐きたかったけど、僕より先に中村君が大きくため息を吐いた。

 

「くだらない。そんなことに僕は興味ないよ」

 

「それは単なる言い訳やで。彼女ができん時の」

 

「はあ! ち、違うし。第一、僕らは学生なんだから勉強が第一だろ」

 

「そんな焦らんでもええんやで」

 

「別に焦ってなんかないし」

 

 この二人もなかなかいいコンビになりそうだなと僕は思った。

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