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フェイタリズム  作者: 倉木元貴


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出会いの形は最悪だ 12

「中田さん。あなたが迷っている地学部ですが、碧ちゃんは地学部に入るのであなたも地学部に入ることを勧めます」

 

 僕はフリーズした。それは、この話が本当に有益だったからだ。さっきまでは、あんなに自信満々に嘘をつくつもりでいたけど、罪悪感そんなものじゃない、何か他の感情に押しつぶされて僕はこの話が有益だと認めてしまった。

 

「でも、何で僕が地学部に入ろうか迷っていると知っているの?」

 

「ああ、それは簡単ですよ。ただ単に鎌をかけただけですよ。地学部の見学に二回も行っているのですから迷っているのかなと思っただけですよ」

 

 今回ばかりは樹ではなかったようだ。すまない樹。勝手に疑ったりして。

 

「でもなんか、そんな理由で地学部に入るのは違う気がする。まあ誰かに憧れてその部活に入るのも悪くはないけど」

 

 消極的な僕を見て如月さんは更に有益な情報を開示した。

 

「地学部に入ることの利点は沢山ありますよ。まず一つ目は、ご存知のようにこの学校は必ずどこかの部活に入らなければならないところ。地学部に入ってしまえば変な勧誘もされないと思いますよ。そして二つ目、早期に部活を辞めてしまった場合は、仕事を辞めた時と同じように先生との面談の末次の部活を決めないといけないのです。面倒なことが嫌いな中田さんからすれば、それは一番避けたいのではないですか? そして三つ目は、あの山河内碧が入る部活ですよ。入らないと言う選択肢はないと思います」

 

 最後のだけは不純な情報だけど、部活を早期に辞めればそんなペナルティがあるのか。ならば、少しでも続きそうな部活を選ぶのはあながち間違いではなさそうだ。

 

「それともう一つ有益な情報があるのですけど、聞きますか?」

 

 意味深に聞こえてしまっているが、さっきからいいことしか言ってない如月さんを疑う気はさらさらなかった。

 僕は固唾を飲んだ。如月さんからどんな話を聞けるのか楽しみに待っていた。だけど、如月さんの話に僕はまたしてもフリーズした。それは、どんな内容だったかと言うと。

 

「中田さん。私は恋愛科学研究会のメンバーとしてあなたの恋を応援します。言うことを全て聞けとは言いません。私のアドバイスを受け取るか受け取らないかは、中田さんあなた自信が決めてください」

 

 話の意味を僕は全く掴めなかった。

 

「ちょ、ちょっと待って! ぼ、僕がいつ山河内さんが好きだと? それに、恋愛科学研究会は何の関係があるの?」

 

「恋愛科学研究会は、ただの部活ですよ。人の色恋話を聞いたり、たまには助言をして、あ、あと、占いとかもしていますよ」

 

 僕が訊きたいのはそこじゃない。山河内さんの方だ。


「な、何で僕が山河内さんを好きだと?」

 

 普通に訊いたつもりだったけど、確かにこれは僕の訊き方が悪かった。

 

「それはですね、入るつもりのない部活にわざわざ行っているのですから、追いかけている辺りそういうことだと思いましてね。まあ、でもその気持ちは分かりますよ。碧ちゃんって、可愛くて頭も良くて運動神経もいいですからね。誰だって憧れますよ。あの子が俺の彼女だって男なら誰だって妄想したいですよね」

 

「ちょっと待って。話の前提から間違っている。僕はいつ如月さんに山河内さんを好きだと言ったの? 山河内さんは確かに、か、かわいいけど、僕と釣り合わないことは僕が一番わかっている。だから、山河内さんと付き合いたいなんて全く思ってもいない後、山河内さんって運動神経もいいの?」

 

 如月さんは、視界が曲がりそうなくらい首を大きく傾げていた。

 首を傾げたいのは僕の方だ。淡々と話が進んでいくから言い出せなかったけど、そもそも僕は山河内さんを好きではない。と言うか、あんなことがあった人を好きになんてなれない。

 

「今はまだですよ。いずれ分かるようになりますよ。今後必ず役に立つので達成してもらいますよ。そうでないと私も困るので」

 

 運動神経のくだりは完全に無視された。

 

「だから、僕は山河内さんと付き合いたいとかそんな気持ちはないって。第一、僕が告白するのなんてナイフ一本で戦車に突撃するようなもんだろ?」

 

 僕の例えは間違ってない。そう信じたいけど、如月さんは突っ込まずにはいられなかったようだ。

 

「ナイフ一本で戦車? 素手で戦闘機の間違いではないですか?」

 

「……いや、そんなのどっちだっていいよ。とにかく、僕は告白なんて絶対にしないよ」

 

「何をしないの?」

 

 如月さんではないこの声の主を僕はよく知っている。僕らの会話はいつから聞かれていたのだろうか? もし、初めからなら僕の人生はもう終わった。

 

「あ、碧ちゃん。遅かったねー」

 

 如月さんは普段と変わらない様子で山河内さんにそう言った。

 

「うん、待たせてごめんね。でも、どうしてまた中田君がいるの?」

 

 山河内さんは鋭い質問を如月さんに返した。

 

「今日も護衛を頼んでいたのですよ。優しい優しい中田さんは快く受けてくれました」

 

 よくもまあそんな嘘を淡々と並べられるよ。真実は、また如月さんに脅されて付いてこさされただけなのに。

 

「じゃあ学校で待っててくれてもよかったじゃん。何で置いて行くのよ」

 

 頬を少し膨らませてそう話す山河内さんもまたかわいい……じゃない。ぼ、僕はもう帰ってもいいのだろうか? この二人の会話に入れないし、と言うか入りたくないし、さっきの話をまた訊かれたらその時はうまく誤魔化せない自信しかない。だからと言って、勝手には帰れないだろうし、急に間に割り入ったら変だよな。

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