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フェイタリズム  作者: 倉木元貴


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出会いの形は最悪だ 11

 今日の部活体験は山河内さんのことで頭がいっぱいだった。そのせいで、今日はどんなことをしたのかよく覚えていなかった。気が付けば、部活体験は終了していて、黄昏を前に一人家路に着いていた。そこまではまだよかった。一人で職員室前の廊下を歩いている時だ。職員室から出てきた赤いリュックサックを背負った生物と鉢合わせてしまったのだ。

 

「あれ? 中田さんじゃないですか? 奇遇ですね。今から帰りですか? 私も何ですよ。今日も護衛をお願いします」

 

 帰ることは事実だが、何を勝手に決めつけているのだ。そんなツッコミを仕掛けたいが、昨日のことがある、平穏に済ますには煽てないことが有効だ。

 

「途中までなら、不本意だけど了承するよ」

 

「何でですか~? 駅まで来てくださいよ~?」

 

「駅は意外と遠いんだよ。来た道を引き返すのも人がうじゃうじゃいるから嫌だし」

 

「ふーん。そうですか。まあ、いいですよ。そういえば、昨日は碧ちゃんがいましたもんね」

 

 誰かこの毒舌製造機をどうにかしてくれ。

 彼女のペースに呑まれるのは不本意だけど、余計なことが起きそうな予感が頭の中で完全勝利し僕は駅までの遠回りを了承した。

 

「いやー、やっぱり中田さんは優しいですね。私の目に狂いはありませんでした」

 

 その優しさに漬け込んで、無理に人を動かしているのはどこの誰だよ。そんなセリフが頭をよぎるが、口を縫ったように固く閉ざして流失はなんとか避けられた。

 

「中田さん。私はこう見えてもフェアトレードを好む人間です。中田さんが、護衛を達成できた暁には、私から一つ有益な情報を差し上げますよ。その言葉に乗るのなら駅で電車が来るまで少し話しませんか?」

 

「異議あり。フェアトレードを好むのであれば、その有益な情報を歩きながら話してもいいのでは?」

 

「それは難しいです。駅の前まで行かないと護衛を達成できたことにはなりませんし、今ここで話してしまえば、中田さんが途中で逃げるかもしれませんから」

 

 僕は深く溜息をついた。

 

「逃げたりなんかしないよ。昨日、自転車の引き合いで負けたのに帰られないことぐらい覚悟しているよ」

 

「それは私のパワーが凄いってことですか?」

 

 僕は地雷を踏んでしまった。如月さんは、笑顔でそう話しているが、眉間には皺が寄っていた。

 

「いや……そ、そそ、そう言うわけでは……」

 

 僕は必死で弁明しようとしたが、言葉がうまく口から出ることはなかった。困った僕の姿を見てか、如月さんも僕と同じように深く溜息をついた。

 

「もうなんか色々面倒くさくなったので何でもいいですよ。でも、護衛と私を怒らせたことのトレードは成立しますので、駅でお話ししないのであれば有益な情報を得ることはできませんよ?」


「それが僕にとって本当に有益かどうかは僕しか決められない。実はどうでもいい話かもしれない。駅で話す理由が僕にあるか?」

 

 如月さんは、また深く溜息をついた。

 

「いつからそんなに面倒な人になったのですか? 私が持っている情報は、中田さんにとって必ず有益な情報ですよ。もし、有益でないのであれば、私は中田さんの言うことを何で一つ聞きましょう。不可能でない限り何でもいいですよ」

 

 よほどの自信がなければ、そんなセリフは出てこないだろう。と言うか、そんなに話したいのであれば、普通にこの場で話せば良くないか? 如月さんの考えていることはわからない。でも、ここまでの自信を見せられたのなら信じてもいいのかも。それに、もし有益じゃない情報であれば、何でも言うことを聞くと言っていたからな。うまくことが運べば有利に立てる。そんなチャンスをみすみす逃すわけにはいかない。

 

「そこまで自信があるならその話を聞いてみようかな。それに、本当に有益な情報なら聞かなかったら損だし」

 

 本心ではない言葉を軽々しく述べていたが、如月さんには見破られていた。

 

「それこそ異議ありですね。本当は、『何でも聞く』と言う言葉に心を動かされたのじゃないですか? あ、因みに言っておきますけど、エロは禁止ですから」

 

 また返答に困るようなことを。このパターンはどう答えるのが正解なのだ? 昨日も下手なことを言ったつもりはなかったけど、完全に飲み込まれたからな。如月さんとの会話はいかに早く終わらすかが鍵なのだ。淡白に「しないよ」と言えば、「本当ですか〜?」とか言いそうだから、この返答は不正解になる。あまりしたくはなかったけど、ここは自虐で乗り越えるしかないのか。

 

「僕にそんな勇気があるとでも?」

 

 案の定如月さんは、黙り込んだ。

 よし勝った! 

 僕はは、心の中で過去一番のガッツポーズを繰り出した。そんなやり取りをしているうちに、僕らは駅に到着いた。駅舎の中に入ることはなく、取り敢えず外に待機した。

 

「さあ、僕にとっての有益な情報を聞かせてもらおうか?」

 

 やけに自信ありげに話すのには理由がある。よくよく考えれば、今回の話は僕に有利しかないことに気づいたからだ。本当は有益だったけど、どうでもいいと突き放してしまえば僕は、如月さんに一つ何でも言うことを聞いてもらえる。如月さんには悪いけど、今回ばかりは嘘でも有利に立たせてもらう。

 

「そうですね。駅でお話をしましょうと言っていたところでしたね」

 

 また前のようなパターン。話す気がないのなら訊かなければよかった。

 

「と言うのは冗談で……」

 

 前科があるから冗談に聞こえない。

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