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フェイタリズム  作者: 倉木元貴


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出会いの形は最悪だ 6

「じゃあ、新しい子も来たみたいだし、もう一度私から自己紹介とどんな部活かを説明するね。えーっと、まず、私は地学部の部長をしています此花五月です。どうぞよろしくお願いします。そして地学部ですが、地学というのはとても幅が広く、中学の理科で習う地震のことの地震学、天気を取り扱う気象学、地層や岩石のこと地質学、宇宙の分野天文学などがあります。他にも、火山学や海洋学もありますが、私たちの地学部では先述した分野を専門としています。なので、主に地上班と天文班に別れて活動をしています……」

 

「ねえねえ、この部屋暗くないね」

 

 人がせっかく真剣に話を聞いているというのに、隣の山河内さんは呑気に僕に話しかけてくるではないか。だけど、確かに外から見た時は光さえ見えなかった。中から廊下の窓を見ると、窓と言うよりかは鏡のように光も反射していた。理由はどうであれ僕にはそれ以上の問題が発生していた。山河内さんになんて返せばいいんだ?

 悩んだ末に僕が言ったセリフは、言われて一番最初に思いついたやつだった。

 

「そうだね。不思議だね」

 

 キャッチボールは一ターンで終了した。と思われたが、彼女は無理やり投球を続けた。

 

「中田くんだったよね、なんで地学部の見学に来たの?」

 

 真の理由を彼女には言えまい。ここはありきたりで適当な星が好きだと言おう。

 

「単に星を眺めるのが好きだから」

 

「へえ、そうなんだ」

 

 今回だけは僕は悪くない。へえ、そうなんだ。と言われてしまえば返す言葉がない。

 

「私と一緒だね」

 

「へっ⁉︎」

 

 僕は自分でも思いがけない声を出してしまった。それと同時に、皆の視線が僕に集まった。

 

「す、すみません……」

 

 そう言ってことなきを得たが、僕の中の恥ずかしさは簡単には消えなかった。

 

「大きな声なんて出してどうしたの?」

 

 お前のせいだ! そう言いたかったけど、そんな可愛い笑顔を見せられてはそんな気なんて失せる。

 

「別になんでもない……」

 

 もう話しかけられないようにと、彼女とは反対の窓から外を眺めていた。外に見えるものは単なる校舎だけど、見慣れてないものだから簡単いに飽きたりはしなかった。

 

「では、みなさん。地上班と天文班に分かれてください。窓側三列が天文班で廊下側三列が地上班です。お好きな方へお集まりください」

 

 しまった。活動内容を聞いて簡単そうな方へ行くつもりが山河内さんに話しかけられていて肝心なところ何一つ聞いていなかった。でも、山河内さんにああ言った手前今更変えるのも変だよな。それに……

 

「天文班はこっちだよ」

 

 移動を余儀なくされていた。渋々、重いお尻を上げて外がよく見える窓側一列目一番後ろの席に座ったのに、またしても隣が山河内さんになった。というか完全に故意だ。彼女は態と僕の隣を選んでいる。理由は全く分からない。


 現在六人しかいない地学部は、地上班も天文班も見事に三人ずつに分かれていた。

 

「はーい! じゃあ、これからは私が天文班の説明をするね」

 

 突然入ってきた僕らを明るく迎え入れてくれた樹みたいに明るい先輩が淡々と天文班についての説明をしてくれているが早口で上手く聞き取れない。だから聞いているうちにだんだんと眠たくなって気がついたらあくびをしていた。単にあくびをしていただけだったが、樹のように明るい先輩はそれを見逃さなかった。

 

「こら、そこ! あくびしない!」

 

「あ、すみません……」

 

 またしても視線を集めた僕は、脊髄反射のように謝罪の言葉を口にした。でも責められたのは僕ではなかった。僕を叱った先輩は他二人の先輩からお叱りを受けたのだ。「一年生が逃げたらどうするんだ」とか「部の存続の危機だ」とか小声で言っているつもりだろうけど、一番後ろの僕にまで聞こえている。

 お叱りの時間は短く二分かからないくらいで終了したが、樹のように明るい先輩は明らかに落ち込んでいる顔で話し続けていた。喜怒哀楽の表現が激しい人だなと見ていたが、朝も似たような人物を見た覚えがある。あの目立つ赤のリュックサックを背負った少女、同じクラスの如月歌恋とかいうやつ。よく見ると雰囲気そのものも似ている気がする。でも、苗字が違うから姉妹ではなさそうだ。と言うか、この場になって初めて先輩の名前を知った。あの樹のように明るい先輩は、乃木というのか。あとの二人は、乃木先輩が渾名で呼んでいるから確実なことは言えない。それに、カナちゃんとなおくんって呼んでいるんだ下の名前である可能性が高いと思う。

 僕は何を変な考察をしているんだ。これも全て重要な場面で僕に話しかけた山河内さんのせいだ。まあ、わざわざ先輩の名前を言わなくても話しかけることはできるから、そこまで困っていないけど。

 窓の外を眺めながらそんなことを考えていると、乃木先輩の話は順調に進んでいた。だからだ、突然話しかけられて僕はまたしても固まった。

 

「ヘイ! そこのユー。君はなぜ天文班を希望したのかな?」

 

 乃木先輩と初めてのアイコンタクトで、本当に僕が当てられていたことがわかった。

 何も言わない僕に助け舟を出してくれたのは、山河内さんだった。

 

「さっき私も同じこと訊いたのですが、星を眺めるのが好きだと言ってました」

 

「なるほどユーはロマンチストなんだね。それはそれは悪くないね」

 

 乃木先輩は爆笑をかっさらい、僕には恥じらいだけが残った。注目されないようにこの席を選んだというのに、全てが裏目に出てしまっている。大方、隣の山河内さんのせいだ。

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