ノミと強心臓 2
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「私も同じ場所に……?」
「ええ、間違いないわ」
「でも、私何の能力も持ってないし……」
「そうね。それがあそこの大人たちの考え方だったわ」
どういうこと?
「薬を飲んだあと、別の部屋に連れて行かれたのは私たち六人。そしてその部屋に連れて行かれたあとは、本当にゆっくりしているだけだったの」
それはそうだ。ウミがしりとりを提案していたと明美に聞いた。
面会室から明美の病室に帰ってきたときも、私とウミがしりとりをしていたと聞いて、明美が『あなたはそればっかり』と言っていたのをよく覚えている。
「今思えばあれは能力が発動するのを待っていたんでしょうね。実際にウミもなかなか能力が発動しないから他の部屋に連れて行かれそうになったし」
直前のところで能力が明らかになったから無事だったけどね、と付け加える。
ということは、私は。
「あなたは薬には耐えられた。でも、そのあと何の能力を発動させることもできなかった。だからあなたは処分されたの」
「……処分?」
でも私は生きている。
「ちょっと言い方が悪かったわね。もう用無しになったのよ」
「……もっと言い方が悪くなった気がするんだけど」
「もっと具体的に話すわ。確かあのときーー」
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「もうこいつはダメだ、何の能力も見られない。処分だな」
そんな大人の嘆く声が聞こえた。
私はそれを聞いてまずいと思った。
もう私たちは全員でこの町を脱出すると決めたはずだ。
それなのにこの子だけいなくなるなんてそんなことあってはいけない。
「あの!」
私が大人たちに向かって手を上げる。
それを見た大人たちが私を近くに呼ぶ。
「どうした? お手洗いか?」
「今の話、聞こえた。処分するって」
「あ、ああ。聞こえたのか。そうさ。何の能力もないからな。能力がないただの子供を養ってやるような意味はない。どうせお前らには家族がいないんだ。処分したところで誰も文句を言うまい」
「それ、私がやる」
「……え?」
「私があの子の処分やる」
それを聞いてその大人は大きく笑い出した。
「いいよ! 君は能力者だからね! その能力を使ってあのただの人間を処分してくれ! その方が俺らも罪悪感がないってもんだ。じゃあさっそく準備するから」
「……ありがとう」
そう言って大人たちは準備を始める。
そのあと、私とその子は別室に連れて行かれた。
「じゃあ始めろ!」
そう大人に言われる。
「しっかし面白い話だな。心が無くなると人は今まで一緒にいた人間でも躊躇なく自分の力試しに使うようになるんだな。これだから人体実験は面白いんだ!」
そんな声が遠くから聞こえる。
「ねえ、どうしたの? なんで私とあなただけこの部屋に連れてこられたの?」
「……私があなたを処分するのよ」
「処分? ……そうか。じゃあ私やっぱりいらない子なんだ……」
「そんなことない!」
大人たちの速くしろ! という声が聞こえる。
私は一歩ずつその子に近づいて行く。
「ねえ一個だけお願いがあるの。静かに聞いて」
「…………」
「私は今からあなたを吹っ飛ばす。だから一つだけ、たった一つだけ覚えておいて欲しいの。ーー葦花中学校に向かって」
「…………」
「そしたらきっとーー私があなたを迎えに行くから」
「……わかった」
そう言って私は鉄の力を使って、その力を出来るだけ抑えてその子を殴り飛ばした。その部屋には窓があったからその子がその窓を割ってそのままこの部屋から逃げられるように角度も考えて。
「おー、よく飛んだな。あんだけ飛ばされればまあ死ぬだろ。お疲れさん、鉄の少女……あれ? お前泣いてるのか? おかしいな、心はもうなくなってるはずなんだけど。心がなくても涙は出るのか? とりあえずもう一回心を無くしとくか」




