それなりの自由 4
8
「思ったより遅かったわね」
明美は笑いながら私にそう言った。
葦花中学校から外に出ると、そこには既に明美とウミとトキが待っていた。
「驚いたのお、本当にリクを説得するとは。お主どんな奇術を使ったんじゃ?」
「そんなものないよ。ただ信じることは悪いことじゃないってこと」
「どういうことじゃ? 詳しく教えてくれ」
「めんどくさいから、遠慮しとく」
トキとそんな会話をする。
よくよく考えれば私を殺そうとしていた相手と普通に話をしているということが異常なのだけど、別にいいかと思う。
明美が信じた人たちなのだ。きっと悪いやつらじゃない。
「ありがとう、リク。さっそくお願いがあるのだけど」
「なんだ?」
「あれ、壊してくれるかしら?」
そう言って明美はある建物を指差した。
「……良いのか?」
「ええ。あそこに人間は一人もいない。ただの宣戦布告よ」
「わかった」
そう言ってリクはその建物の方を見る。
そして少し力を込めて何かを叫んだその瞬間。
葦花中学校は勢いよく爆発した。
「!?!?!?」
「相変わらずすごい火力ね。頼もしいわ」
「爆発の力、存分に使わせてもらうぞ、明美くん」
「よろしく頼むわ、リク」
明美が言っていた言葉を思い出す。
『百人単位で人を殺した時点できっとこの実験はおしまい』
平日の昼間。きっと誰もが授業を受けている最中だった。
あれだけの爆破ならば全校生徒が死んでしまったことだろう。
葦花町全体にサイレンが鳴り響く。
『実験中止。実験中止。職員は直ちに避難せよ。監視対象は大人しくせよ』
「大人しくなんてするわけないじゃない? これがはじまりなのよ?」
明美が先頭になって歩き出す。皆がその後ろをついていくけど、私は明美の横に陣取った。私の場所はいつもここ。
「さあ、最後の決戦よ」
9
それから二十分後のこと。
私たちは一人を除いて檻の中に捕らえられていた。
「そんな……? どうして……?」
私は唯一檻の外にいる仲間のことを見る。
その仲間は私の目線に耐えきれずに目を逸らした。
実験の首謀者であるだろう男が私の方を見る。
「馬鹿め。そう簡単に物事はうまくいかない。これはこの日本の存亡をかけた大事な実験なんだ。お前らに勝手な行動をさせるわけにはいかないんだよ!」
私はその男の言葉が耳に入らない。
どうして。
「人を信じるから裏切られるんだ。まさか貴様らの中に裏切り者がいるとは思わなかっただろう? こいつは最初からお前らを裏切っていたんだよ!」
どうして。
▼
私たちがいるのはいつものガラスの中。
いつもと違うのは私だけよくわからない大人の男性に呼ばれたということ。
私にしか聞こえないような声でその男性は私に言う。
「いいか? 少し先の話だがお前以外の全員の記憶を消す。だがお前だけは記憶を消さない。なぜだかわかるか? お前がこいつら四人を監視するんだ」
「監視……」
「こいつらがこの実験場から逃げ出すとか我々を倒そうとしたときにはお前がこいつらを制圧するんだ。大丈夫、お前にはその力がある。まあ万が一にもそういうことは起きないだろう。お前たちは元々人間だが、もう心はない。何かに怒ったりするとか何かを信じたりするとかそういうことはないはずだ」
「制圧……」
「わかったか?」
「……わかった」
ここまで読んでいただきありがとうございます。
作者の女川るいです。
リクが無事に仲間になりました。
次回、敵陣へと乗り込んでいきます。
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次回のお話もよろしくお願いします。




