病室ではお静かに 5
9
「私を仲間に?」
「そうじゃ。お主もワシら『自由渇望軍』に入らんか」
気づけば明美以外の全員が私の方を見ていた。
明美はまだ顔を赤くしていたのでこちらを見ていなかったが。
「……何で?」
「お主の力が必要じゃからじゃよ」
そう言って明美も含めた全員が私の方を見る。
でも私の頭には疑問符が残ったままだった。
「私の力なんてなにも……」
「ワシもそう思う」
「え?」
トキは急に突き放すようなことを言う。
「え?」
「ワシは別にお主を仲間に引き入れる必要性なんてこれっぽっちもないと思うんじゃがなあ」
ちらっとトキは明美の方を見る。
「そこのお嬢さんが絶対に仲間に引き入れると言って聞かないもんじゃから」
明美が……?
「ええ、何か問題でもあるかしら?」
「問題しかないじゃろ? 暗子には何の能力もないんじゃろ? 百歩譲って暗子が人間じゃったとしても無能力者を仲間に入れるメリットがないじゃろ」
「メリットならあるわよ」
「何があるんじゃ?」
明美が私の方を見て、再度トキの方を見た。
「私のモチベーションが上がるわ」
「かっ」
トキが鼻で笑う。
「くだらんのお。友情ごっこか? ワシはそんなことをするためにこのグループに入ったんじゃあない。ワシは本気でこの町から抜け出したくてこの『自由渇望軍』に入ったんじゃ」
「私だって本気よ。本気で逃げ出すために暗子の力が必要だと思ったの」
明美は私を見る。
「暗子、仲間になってくれるかしら?」
「でも……トキの言う通りに力なんて私にはないし……」
「力なんていらないわ」
明美は力強くそう言った。
「私がこのグループに入る人に求めているものは力じゃない。ーー心よ」
「……心?」
「ええ。どれだけ本気でこの町から抜け出すことを考えているか。それがこの『自由渇望軍』のモットーなのだから。力なんて関係ないわ。創設者の私が言うんだから間違いない。あなたはどう? はやくこんな町から抜け出して自由になりたくない?」
「自由に……?」
「それともずっとこの町で暮らしていく? 別にどっちを選んでも文句は言わないわ。物事を決断するのは個人に与えられた権利だもの」
私はどうしたらいいのだろう?
この町が巨大な実験場で、能力者のためだけの町。
人間なんかほとんどいないこの町で私はこれからも生きていくんだろうか。
考え込んでいると明美が私に言う。
「あなたがどちらを選択しても構わないけれど、私はこの町を必ず出て行くわ。それであなたはどうするの?」
明美はこちらを覗き込むようにして言った。
そんな言い方ずるい。もう答えは決まっていた。
「私もこの町を絶対に出て行くよ。明美と一緒に」
「そう言ってくれると信じていたわ」
明美は笑顔で私を見た。
トキは少し不満の声をあげた。
「そんなかんたんにーー」
「トキ、反論はそこまでよ」
ウミがトキの言葉を遮った。
「私、暗子ちゃんともう約束しちゃったもの。明美ちゃんと暗子ちゃんの仲を邪魔するやつは私が許さないってね。暗子ちゃんが『自由渇望軍』に入るのをトキが阻止しようとするなら、私がトキと戦わなきゃいけなくなる」
「……かっ」
それはつまらん話じゃ、とトキは吐き捨てた。
納得はしていないようだが、どうやらグループへの加入を許さない、というわけではないらしい。
「おい、暗子」
「なに」
「お主もしっかりやることはやるんじゃぞ。いつまでも明美の金魚の糞ではいかん。そうしないとワシはお主を認めんからな」
「その点なら大丈夫よ」
トキと私の会話に明美が割り込んだ。
「暗子にはさっそくやってもらうことがあるから」
「……なんじゃ?」
「リクを仲間に引き入れる」
「!?」
全員が明美の方を向いた。
私と明美以外は驚きの表情を浮かべていた。
リク……? 誰だ?
「それはいくら何でも無理じゃないですか、明美さん。私たちの話すら聞いてくれないというのにどうして暗子さんに説得ができると……」
「暗子だからよ。たぶんこれは私たちの誰が言っても無理よ。暗子にしかリクの説得はできないわ」
私にしかできない?
「さっそく暗子とソラにはリクの説得をしに行ってもらうわ。私とウミとトキはリクの説得が終わったあとの準備をしておくから」
「準備? 何の準備じゃ?」
トキが明美に聞いた。
「それはもちろん、この町を破壊するための準備よ」
10
「めんどくさ」
葦花中学校の屋上でため息をつく男がひとり。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
作者の女川るいです。
今回の話で、この葦花町の正体が明らかになりました。
はたして暗子はリクを仲間にすることができるのか!?
感想、評価、ブクマなど頂けると励みになります。
次の話もよろしくお願いします。




