しりとりコミュニケーション 2
3
「あなたもソラの仲間なんですか!?」
「ええ、そうよ」
ウミは悪びれもせずに言う。
「私を騙したんですか!?」
「おかしなこと言わないでちょうだい。私は一度もソラちゃんの仲間ではないと言ってないわ。嘘をついたわけじゃない。ただ言わなかっただけよ」
そんなの同じことじゃないか!
「さあ、じゃあゲームの説明をしましょう。安心していいわ。私とのゲームは別にあなたが負けても死んでしまうことはない。ただ負けたときにはあなたと明美ちゃんの仲を裂かせてもらうだけだから」
「そんなの……」
そんなの私にとっては死と同じじゃないか。
「私から生きる理由を奪うつもりですか?」
「生きる理由なんて人生に必要かしら? 死なない理由があればいいのよ」
「何が違うんですか?」
「別に生きていなくても死ななければ人生なにも問題ないのよ」
私は考える。このウミという人の能力はいったい何だ?
私がこの人に話しすぎてしまったことが関係しているのだろうか?
「……私が勝ったときはどうするんですか?」
「もちろん、私が負けているときのことは考えているわよ。私はトキちゃんほど自信家ではないからね」
トキの自信家っぷりは仲間内でも知られているところなのか。
「私が負けたら暗子ちゃんと明美ちゃんの仲を裂こうとするものをすべて排除してあげるわ。それが人殺しであろうとーーソラちゃんだろうと、トキちゃんだろうと」
「!」
それはありがたい。
私たちの人生に人殺しも、ソラもトキも必要ないのだ。
でもここまで言うということは、ウミの能力も相当ヤバいものなのか? 私ならソラもトキも抑えられると言っているようなものである。
それかソラとトキの二人よりも、いや何人いるかわからないがその仲間たちの仲でいちばん偉いということなのか?
「それは……願ってもない条件ですね」
「よし、決まりね。じゃあゲームの説明をしましょうか」
さあ、いったいどんなゲームになるのか?
あの二人よりぶっ飛んだ能力ならもっとおかしな勝負になってもおかしくは。
「ゲームは……しりとりよ!!!」
4
「…………え?」
「聞こえなかったかしら? ゲームの内容は……しりとりよ!」
「いやいや、いちいち「しりとり」って言う前にためなくて良いですから……」
え? しりとり?
この人、本気で言ってるのか?
「あのしりとりですか? もしかして尻を取り合うみたいな残虐なゲームとか?」
「どんなゲームよ……。河童以外にそんなゲームを楽しむ生物はいないわ」
半ば呆れながらウミが言うけど、呆れたいのはこちらである。
しりとりに、これからの私と明美の仲がかかってしまうのか?
それかしりとりで言ったものが本当にその場に具現化するみたいなーー。
「ルールも言うわね。同じ言葉は言ってはいけないことと一分以内に返せなかったらおしまいよ。あともちろん、最後に「ん」がついたら負け!」
「…………」
「以上!」
「…………」
時間制限がある以外は普通のしりとりだ。
「……それだけですか?」
「ええ。それだけよ」
なんだ、拍子抜けだ。
「あなたこの勝負を甘く見てないかしら?」
「……!? まさか……?」
「私の「る」攻めに腰を抜かすと良いわ!」
「…………」
普通だ。どこまでも普通だ。
あの学級会とか、トキとの勝負とは比べるまでもないほどに普通だ。
「さ、移動してはやくゲームをはじめましょ」
そう言ってウミは椅子を立ち上がり部屋を出ようとする。
「この病室の中じゃダメなんですか? しりとりなんですよね?」
「うーん、そうねえ……」
ウミは自分の顎に右手の人差し指を当てて考える仕草を見せる。
そして悪戯そうに言った。
「明美ちゃんに危害が加わってもいいのならいいけど?」
「!?」
やっぱり、このしりとりっていうのはなにかの隠語だ!
舐めてかかっちゃいけない。
「……わかりました。行きましょう」
「懸命な判断だと思うわ」
私も立ち上がり先を行くウミについていく。
明美、待っててね。私がこの勝負にケリをつけてくるから。
そしたらいっぱい謝るから。
5
「おや、まだ眠っているんですかねえ」
「…………」
「ウミと暗子さんの勝負が気になりますか?」
「…………」
「大丈夫ですよ。きっとアナタには悪い話にはなりませんからーー明美さん」
6
私がウミに連れていかれたのは面会室だった。
ウミはスマートフォンを用意してタイマーをセットする。
「それじゃあスタート! しりとりの「り」!」
「…………」
やっぱり普通のしりとりなんだろうか?




