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ノミと強心臓  作者: 女川 るい
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はじめまして入学式 4

    9


 入学式が幕を開ける。

 私たちは四組なので既に三クラス分は中に入っていたようで、体育館の中は多くの人が集まっていた。


 また新入生が座る椅子より少し後ろに私たちよりほんの少しだけ大人びた生徒が座っている。おそらく生徒会に所属している上級生かなにかなのだろう。


 私は周囲を警戒しながら入場する。

 どこかに犯人が潜んでいる……かもしれない。


 いちばん良いのはもう犯人が学校の外に出ていっているという場合だ。

 でも希望的観測で動くのは危ない。


 常に最悪を意識しよう。そうすればどんなことにも対応できる。

 私は今までもそうやって生きてきたんだ。だから、今もまだ犯人がこの中にいると考えよう。


「それでは校長先生のお話です」


 ただ、どんなに考えてもこの状況から犯人を見つけ出す方法は私には思いつかない。だから大事なのは、犯人が暴れることを阻止することだ。


 別に私は探偵ではない。ただ人が死ぬところを見たくないだけだ。

 だから殺人さえ起こさなければこっちの勝ちなのだ。


 少しでも怪しい行動をしている人間をいちはやく察知するのが私の仕事だ。


「えー、皆さんおはようございます。まずは誰一人休むことなくこの入学式に参加していただけたことがーー」


 だから、校長先生の話をろくに聞いていなくても許してほしい。


    10


「校長先生ありがとうございました」


 そんなアナウンスとともに長話を終えた校長先生が壇上から降りる。

 いったいどれだけ長話をしているのやら。ろくに聞いていない私でも長いと感じるのなら、まじめに話を聞いていた人間にとってはどれほどの長さに感じたのか。


 来賓を紹介したのち、入学式の終わりを告げるアナウンスがされる。

 よかった。入学式ではなにも起こらなかったようだ。生徒は退場を促される。


 となると、やはり犯人はもう出ていったのか。


 いや、待てよ。


 そういえば凶器はもう現場に落ちていた。あれ以上殺人は起こさないということか? ということは犯人はあの暗子(あんず)という生徒に恨みを持っていたというだけか。


 ん?


 あれ、でもそれってまずくないか? もし暗子という生徒に恨みを持って殺したなら暗子がまだ生きているとその犯人に知られたらおかしなことになってしまう。


 いや、実際に暗子は死んでしまったのだけど。私が成り代わっていることにその犯人だけは気づかないとおかしいのだ。


 さっき校長先生が言っていたことを思い出す。


『まずは誰一人休むことなくこの入学式に参加していただけたことがーー』


 それを犯人は不審に思うはずだ。なら次に起こす行動はーー本当に暗子が生きているのかどうかを確かめに私に会いに来ることか?


 もしさっき校長先生に言われたことを不審に思っていなければ、それは殺すのが誰でもよかった通り魔殺人のようなものになる。


 この事件はどっちだ? このあとの犯人の行動でそれがわかるはず。

 誰かが暗子に会いに来るかどうかーー。


「キャー!」


 そんなお手本のような悲鳴が体育館中に響き渡る。


「くっ……」


 なんだ? なにが起きた?

 私は退場の列を大きく外れ、声のする方へ走り出す。


 声は体育館の入り口付近で聞こえた。

 近くまで行くと、ひとりの女子生徒が腰を抜かしていた。


「あ……、あ……」

「どうした? なにが起きたんだ!?」

「あ、あれ……」


 そう言ってその女子生徒はあるものを指差す。

 これはだめだ。あの明美という生徒と出会ったときと同じ。


 イヤな予感がした。


 その女子生徒が指差した先にはひとつのガムテープで止められた段ボール箱が置かれていた。

 そしてその段ボール箱は。


 その段ボール箱は血が染み出していた。

 だめだ、これは。

 中を開けてはいけない。絶対に後悔すると私の第六感が告げている。


 でも開けずにはいられないのだ。


 中を確かめる。そしてすぐにまた閉めた。


「うっ!?」


 そこにあったのは人間の頭部だった。


「キャー!」


 また体育館の中に悲鳴が響く。

 でもそれはこの頭部を見た近くの生徒が言ったわけではない。


 この入り口とは正反対の方向からだ。

 でもたぶんそれは見なくてもわかる。


 そしてまだそれ以外にも段ボール箱があることも。


 結局、体育館にあった段ボール箱は私が開けたものを含めて全部で六個。

 そのすべてで血が染み出していた。


 その中身はーーすべて生徒の頭部だった。


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