未成年とたばこ 4
7
「あなたは犯人のもとへ向かってくれるかしら? 私は先生のところに、たばこを触ってしまったことを告白しに行ってくるわ」
「わかった」
明美はそう言って職員室の方へと向かっていく。
それを見てクラスのほかの人たちが、明美がたばこを吸っていたんだと勘違いしないといいけど。
明美は私に期待してくれている。だから私は明美の期待に答えなくちゃ。
私はあの男のあとをつけていった。
確実な証拠を掴むために。
8
私の予想とは裏腹に、その男はまっすぐ家へと帰っていった。
まあ誰も帰り道に、制服のままでたばこを吸うような馬鹿はいないか。
あいにく家をのぞきこむわけにはいかない。
明美には申し訳ないが、今日は出直すかと思ったそのとき、その男は再び家を出てきた。
家を出てきたその男はもう制服からは着替えており、明らかに教室での姿とはかけはなれた姿になっていた。
そしてそのままその男の跡をつけていくと、その男はある店へと入っていった。
「ここは……パチンコ屋……?」
ビンゴだ。
この男は中学生でもパチンコ屋に堂々と入れるなにかをもっている。
それは外見だったり、もしかしたら何らかのヤバイ人との関係だったり、それはわからないが。
だが私は入るわけにはいかない。
私は一般人の中学生なのだ。
義務教育に守られているとはいえ法を破るような真似は決してしてはいけない。
私がそう心に決めているのだ。
だから私は明美が来るのを待つ。
今のうちに明美が来てくれればいいのだけど。
だけどそんな願いもむなしく、その男はパチンコ屋をあとにする。
目を離すわけにもいかず私はその男のあとをついていく。
そしてその男は五分ほど歩いたあとさびれたゲームセンターに入っていった。
しめた。
まだ深夜にはほど遠い。中学生でもまだこの時間ならゲームセンターにはいれる。
まだ決定的な場面を目撃できていない。
ここで、決定的な証拠をつかむ。
あれ? でも目撃したところでどうすればいいのだろう?
私は良い子ちゃんなので学校にスマートフォンは持ってきていない。撮影をするための機械なんてなにももっていない。
どうすれば‥‥?
考えながらゲームセンターの中へ入っていく。
「!!!」
そこではクラスの問題児の男が倒れていたのである。
その光景をみた瞬間、とっさに両替機の裏に隠れる。
なにが起きてるんだ‥?
見ると問題児の周りには二人の男が立っていた。
「なんやお前兄貴に迷惑かけたらしいな?」
「自分の立場理解しとけよ、おまえ」
そう言って二人の男は、その問題児を何度も踏みつける。
問題児は決して反抗しようとはせず、されるがままにやられていた。
店員さん、呼んでくるか?
でも、このゲームセンターは店員さんがいるとは思えないほどのさびれかたをしている。
かといって私にはなにもできないし。
「明美、はやく来てくれ‥‥!」
「あ、なんやおまえ?」
やばい。
二人の男にばれた。
「お前、このアホの連れか? お前もわざわざ殴られに来たんか?」
「え、いや……」
そんなわけはない。なぜ私がこんなやつの彼女にならなければならないのか。
だけどそんな反論は心の中で思うだけで、言葉には一切ならなかった。
「黙ってちゃなにもわかんねえぞ。おら、こっちこい!」
「いたっ……!」
強引に右腕を引っ張られ、激痛が走る。
そして二人の男と、兄貴と呼ばれる男の前に引っ張り出される。
最悪だ。
案の定、兄貴と呼ばれる男は私の姿に反応を示した。
「君は同じクラスの……?」
男は――学級委員|はたばこを吸いながら私に言葉をかけるのであった。
9
「兄貴、知り合いですか?」
「……ああ、クラスメイトだ。クラスじゃ目立つようなやつじゃないけどな」
学級委員はたばこをふかしながら、気だるそうに言う。ほっとけ。
そして私に尋ねる。
「こんなへんぴな場所に何の用だ? まさかこんなところまでゲームをしにきたわけでもあるまい」
「いやぁ……」
何も言えない。
うまいこと言い訳をするべきなのだろうが、言葉がのどを通らない。
ふと足元に倒れこんでいる問題児に目がいく。
「あの、この人って……」
「ん、……ああ。こいつもクラスメイトだよ。知ってるだろ?」
「知ってるけど……」
「こいつ、今日俺が犯行をなすりつけようとしたら、あろうことか否定しやがった。しかもなめた態度まで取る始末だよ。そりゃ教育が必要だろ?」
教育? 面白いことを言う。
ただの暴力だろうに。
「けどお前にも教育が必要かもしれないなぁ」
「!」
そう言うと、二人の男がそれを聞いて笑いながらこちらに向かってくる。
「こんなところまで来るぐらいなんだ。正義のヒーロー気取りか? 探偵ごっこでもしようかと考えたか? あいにくだが世の中には知らないほうが良いことのほうが多い。それを知っちまったんなら、黙っててもらわないとなぁ」
下卑た笑みを浮かべながら、男たちが近づいてくる。
これから何が起きてしまうのかを想像してしまい、身の毛がよだつ。
「女性に手をあげるつもり? それでも男なの?」
「はっ。面白いこと言うなあ。男女平等って言葉知ってる? 僕たちは男とか女とか差別しないんだ」
もうだめだ。
助けて、明美……!
「面白そうなことしてるじゃない? 私もまぜてくれないかしら?」
その瞬間、正義のヒーローが私の前に現れた。




