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ノミと強心臓  作者: 女川 るい
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物語のはじまりと宣戦布告 1

 人は死んでいく。何気ないことで人は死んでいく。

 だからきっと人が死ぬのは当たり前のことなんだ。


    1


「暇だわ」


 明美(あけみ)がイライラを隠さずにそう言う。


 それもそのはずだ。

 葦花(あしばな)中学校では休校措置が取られてから二週間が経った。休校になった理由はあまりにも学校での不審な事件が相次ぎ、それが世間で少し騒ぎになったからである。


「はやく休校措置が解除にならないかしらね。暗子(あんず)とずっと一緒にいるのはもちろん楽しいのだけれど、そろそろ学校にも行きたいわ」

「そうだね」


 私は明美と一緒にいれればそれでいいので、いつまでも休校が解除にならないでいいのだけれど、確かに学校にも行きたい気持ちもある。

 なくなってからわかるありがたさ、とかは悔しいから違うと思いたいのだけど。


「まあもうすぐ休校措置は解除されると思うよ。いつまでも休校だと勉強が遅れちゃうしね」


 これは本当だ。いつもは雑談ばかりしてなかなか授業を進めない先生も、さすがにこれ以上の休みがあっては予定が完全に狂ってしまう。


 でも本当に学校で一年かけてやる授業は一年かけないと終わらない量なのだろうか? もっとさっさと終わらせられそうなものだけど。


「はやく学校に行けるようになってほしいわ」


 明美はゴロゴロとしながら、しかし心から呟く。


「そしてはやく私の日常を取り戻すの」


    2


「そういえば最近、話題のアプリがあるらしいわよ」


 明美が私にスマートフォンの画面を見せながら言う。

 そこには大きな文字で『葦花ストリート』と書かれていた。


「なにこれ?」

「『葦花ストリート』よ」

「それは見ればわかるけど」


 明美がスマートフォンの画面をタップして進める。

 そしてそこに映っていた画面はここ葦花町の地図であった。


「これって」

「葦花町の地図よ」

「所々に赤い矢印が書いてあるけど」

「ここにモンスターがいるの」


 そのあと明美が説明の画面を私に見せつつゲームの紹介をしてくれる。


「位置情報を使ったアプリでね、この赤い矢印のところに実際に行ってみるの。

そしたらこんな感じのモンスターが出てくるのよ」


 そう言って見せられたモンスターは、まさしくモンスターという呼び名がふさわしい生き物であった。老けきった顔と身体に、右手には酒瓶を握っている。


「というかただの酔っ払いじゃ……」

「これは酒呑み爺ね」


 やっぱりただの酒を飲んでいるじじいじゃないか。


「これをこの縄で捕まえるのよ」

「なんか罪人みたいだね」


「ここで縄を回してから投げるとーー」

「時代劇だよね、ただの」


 でもちょっと面白いかもしれない。

 ほかにどんなモンスターがいるのかも気になる。


「気に入ってくれたようでなによりだわ」

「あれ、ここ葦花公園のところに青色の矢印が出てるけど」


「ああ、これはレアモンスターね」

「レアモンスター?」


「ええ、きっとここにはたくさんの人が集まっているでしょうね。みんなこのモンスターを捕まえに来ているはずだわ」

「どんなモンスターなんだろ? 誘拐犯とかかな」

「それはただの犯罪者じゃない……?」


 確かにモンスターと言えるかもしれないけど、と言う。


「あとでレアモンスターが出たら捕まえに行ってみましょうか」

「やった!」


 明美と二人でお出かけだ。

 でもふつうにレアモンスターも気になる。


「しかし誰が作ったんだろうね、こんなニッチなゲーム」

「そこは確かに謎ね。この葦花にゆかりのある人間であることは間違い無いだろうけど。もしかしたら悪評ばかり立っているこの地を活性化させようと誰かが作ったのかもしれないわね」


 明美はいちどアプリを終わらせる。

 そしてスマートフォンをポケットにしまった。


「ひとつわかるのはこのゲームを作った人間には確かな才能があるということよ」


    3


 二人で焼きカレーを食べながらアプリの話をする。


「あっ」

「どうしたの? 明美」

「出たみたいよ、レアモンスター」


 いつもは食事中にスマートフォンはいじらない明美だけど、今日は事情が違う。

 レアモンスターがどんな感じか気になると私が言ったから見てくれているのだ。


「これは……葦花公民館のところかしら」

「どれ? ……うん、そうみたいだね」


「食べ終わったら行きましょうか」

「わかった」


 私は少し急いで焼きカレーを口に放り込んでいく。


「そういえば、このモンスターはどれくらいの間いるの? ずっと出現しているわけじゃないよね?」

「そうね。だいたい一時間くらいで消えてしまうわ。さっき出たばかりだからぜんぜん間に合うと思うわよ」

「そうか、なら安心だね」


 そんなことを話しながらふと、テレビから流れてくる音声が耳にはいった。


「これは……?」

「また、かしら」


 そこに流れてきたのは葦花町で死体が発見されたというニュースだった。


「またか……」

「本当ね、もう驚かなくなってきたわ」

「本当に呪われてるんじゃないの、この町」


 吐き捨てるように言う。

 でも、よくニュースを聞いてみれば少し気になることがあった。


「ねえ明美」

「なにかしら?」


「今このキャスターの人なんて言った?」

「葦花公園で死体が見つかったって言ってたわよ」


「さっき、レアモンスターが出たのってどこだっけ?」

「葦花公園ね」


「……これって偶然?」

「さあ? 公民館に行ってみればわかるんじゃないかしら?」


ここまで読んでいただきありがとうございます。

作者の女川るいです。


今週のお話は物語の方向性を決める重要なお話です。

少し重たい展開もあるかと思いますが、最後まで目を通していただければ幸いです。


評価、感想、ブクマなど頂けると励みになります。

またのお越しをお待ちしております。

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