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ノミと強心臓  作者: 女川 るい
24/70

インタビューとでっちあげ 4

    8


「どうやらあのインタビューの生徒――ではないらしいわよ」


 明美(あけみ)は明美の情報網を使ってこの事件について調べてくれる。

 こういうことになると私は何の役にも立たないのだ。


「でも私たちと同じクラスの男子生徒らしいわよ」

「そっか。じゃあまたテレビとかでいろいろ言われちゃうかもね」

「まぬがれないわね」


 明美は少し頭を悩ませてしまう。最近、非日常が続きすぎている。

 すると明美のもとにまたメッセージが届き、その内容を私に教えてくれる。


「犯人はあのインタビューを受けた生徒じゃないかって噂になってるそうよ」

「そりゃまたどうして?」


「亡くなった生徒と仲が良かったからって」

「仲が良かったのになんで疑われるのさ?」


「あら、らしくないことを言うわね」

「……?」


「好意が殺意に変わるなんてよくある話じゃない?」


    9


「どうやら亡くなった生徒とインタビューを受けた生徒はいつも一緒にいたそうよ。私とあなたみたいね」

「そうだね」


 明美が続報を伝えてくれる。

 でも私ははやくこの問題を終わらせたくて仕方がなかった。


 そうしないと特売の商品が売り切れてしまう。

 私は思い切って明美に聞いてみる。


「あのインタビューを受けた生徒に話を聞けないかな?」

「それはだめよ。ルール違反だわ」

「そう……」


 残念。ならもうとにかく真相をでっちあげるしかない。

 明美にも真実はわかりっこないのだから。


 私は一度考える。あのインタビューの内容を。

 そして真実を私の口から明美に伝えるのだ。


 嘘の真実を。


    10


「あのインタビューを受けた生徒――仮にA君としましょうか。あのA君にはずっと隠していたひとつがあったの」


 私と明美はリビングの食卓に向かい合って座る。

 普段はソファに並んで座るのだけど、こういうときはいつもこのポジションに座るのだ。


「それは今回事件で死んでしまった生徒――B君とすると、A君はB君に恋をしていたんじゃないかな」

「まあよくある話ね」


「そしてA君はB君に告白をしたんだ。それも――テレビを使って」

「……ということは?」


「あの謎のインタビュー、あれこそが実はB君にだけ伝わる告白のメッセージだったんだよ!」


 いいぞ、私。それっぽい。限りなくそれっぽい。

 明美の食いつき方もそれなりに悪くなかった。


「どういうことかしら? あのインタビューが、告白?」

「そう」


 そう、と言って私は冷や汗が止まらなくなる。

 やばい、ここから先をどうこじつけよう。


 もっと詰めてから話すべきだった。


「はやくその続きを聞かせて?」

「も、も、もちろんそのつもりだよ。インタビューがどうだったのかもういちど振り返ってみようか」


 私はそのときの映像を振り返るためにスマートフォンを取り出す。

 はやく。はやく思いつけ私。


『幸福を享受するには幸福になってはいけない。不幸を享受するには不幸になってはいけない。いつも人間はひとりだけどふたりで、ふたりだけどひとりなのだ。何人たりとも我が学び舎を呪いと罵り、謗りを我々に与えたとて我が学び舎の名誉を傷つけることなどできない。名誉は守られなければならない。名誉を捨てたとき、学び舎は学び舎としての尊厳を失い、幸福は不幸へと転ずるだろう』


「実は、なんと驚くことに、想像を絶するような出来事なんだけど……」

「時間を引き伸ばしてる?」

「いやいや! そんなこと全然ないから! ほら! 今から言うよ! 言いたい! いますぐ言いたい!」


 そこで神からのお告げが。

 天才的なひらめきが。


「このインタビューはね、ほとんどが意味のない言葉の羅列なんだよ。本当に伝えたい言葉はこの一文だけ。『何人たりとも我が学び舎を呪いと罵り、謗りを我々に与えたとて我が学び舎の名誉を傷つけることなどできない。』の部分だけなんだよ。だっておかしいと思わない?」

「なにがかしら?」


「『呪いと罵り』の部分。意味がわからないわけではないけど、文法がおかしいと思わない? 呪いの『学校』と罵りならわからなくもないけど」

「確かに違和感を感じないこともないけれど、そんなに引っかかるところかしら?」


「ふつうならそこまで引っかからないだろうね。でもそれがB君にだけ伝わるようなメッセージだったんだよ!」

「どういうメッセージだったのかしら?」


 私は徐々に語気を強めていく。

 そのメッセージをそれらしく伝えるために、盛り上がりがそこでマックスになるように。


「私たちが通っているのは中学校でしょ? そこから学校がなくなる。中学校から学校がなくなる――つまりチューしよってことなんだよ!」


「…………」


 ふっ、あまりの名推理に明美も言葉を失ったようだ。


「あなた疲れているのよ。はやく買い物に行きましょう。もうゲームはおしまいでいいわ」


 許された。

 とりあえず今はふたりでの買い物を楽しみたい。


    11


 スーパーに明美とふたりで買い物に行く。


「今日のメニューはなにかしら?」

「うーん、しゃぶしゃぶかすき焼きかな……。明美はどっちがいい?」


「そうね。あなたが作ってくれるならなんでもいいけど、今日はすき焼きの気分だわ」

「わかった。じゃあそうしようか」


 そんなことを話しているとひとりの男に出会う。


「あの人は……」

「インタビューを受けていた子ね。こんなところでなにをしているのかしら」


 明美はその男に近づいていく。

 私はとんでもなく嫌な予感がしたのだけど、明美の好奇心を止めることはできない。明美はその男に近づいて尋ねる。


「ねえ、あなたインタビューを受けていた子よね?」

「そうだけど……? 君たちは確か同じ学年の……?」


「単刀直入に聞くわ。あなた人を殺したの?」

「ちょっ――」


 明美がいきなりそんなことを言い出すので明美の後ろにいた私はそれを止めようとするんだけど、もう間に合わない。

 でも男の返事は予想には反したものだった。


「僕が殺したんじゃない。幸せが彼を殺したのさ」

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