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【第44話:鬼蜘蛛部隊】

「う、嘘……なんて数なの……きゃ!? な、何するのよ!?」


 とりあえず時間が惜しいので、驚くフォレンティーヌさんをお姫様抱っこして近くの鬼蜘蛛の背中に飛び乗ります。


「すみません。時間が惜しいので鬼蜘蛛で移動します。しっかり掴まっていてくださいね」


 僕はそう告げると、鬼蜘蛛たちと共に進軍を開始します。


「ダイン……あなたいったい……」


「僕はハヤトっちと同じ第13孤児院所属、SSSランク能力者ダイン。僕は彼を追ってこの世界にやってきたんだ」


「っ!? あなた記憶が戻ったの!? それに、Sランクの噂は聞いた事があったけど、SSSランクだなんて……それにハヤトを追ってって、いったいどうやって?」


「記憶、戻りましたよ。感情の希薄な空っぽな記憶ですけどね。第13孤児院はSランク以上の者のみを集めて作られた孤児院でした。こっちにはハヤトっちの『異界渡り』を僕の異能でコピーしました」


 僕の異能『模倣』は、一つだけだけど、人の異能をコピーして同様に使う事ができます。

 ハヤトっちの『核撃』を喰らって負傷した後、朦朧としながらも『異界渡り』を使うその姿を確認して『模倣』でコピーし、すぐさま後を追ったのです。


 ただ、その後の記憶だけはまだ曖昧でした。

 致命傷を負い、意識が朦朧としていたから当たり前かもしれませんが、ハヤトっちがこちらに最初に現れたと思われる年代から、僕が現れるまでにこれだけの時間の差があるのが気になります。

 こちらと元の世界との間で時間の流れる速さに違いがあるのだと予測はつきますが……。


 その後、僕はフォレンティーヌさんに救われるまでの事を、鬼蜘蛛の背で話していきました。


「何かもうダインは何でもありね……それにハヤトもSSSランクだなんて、誰も勝てないわけだわ」


 僕だって何でもできるわけではないのですが、フォレンティーヌさんのジト目が凄いので黙っておきます。


「しかし、なんで今回ハヤトは本気でシグルスの街を潰しにきてるのかしら……」


 今回のハヤトっちの目的……マリアンナさんの事を話すべきでしょうか。


「フォレンティーヌさんは『暁の羊たち』の正式なメンバーなのですか?」


 僕の突然のその問いに、少し頭を傾け悩んだあと、


「ん~? 誘われてはいるけど、立場的にはまだ協力者といったところかしら?」


 まだ正式なメンバーにはなっていないと教えてくれました。


 少し悩みましたが、他の『暁の羊たち』のメンバーにはまだ話さないで欲しいと前置きしてから、ハヤトっちの言葉を伝えます。


「え!? じゃぁ、ハヤトっちはマリアンナさんの事を(かたき)だと言ったの? しかもマリアンナさんが元の世界でグリムベルの職員だったって!?」


 フォレンティーヌさんは、信じられないと驚きをあらわにします。


「正直、僕もまだ信じられないし、本当なのかわからないですけど……少なくとも今回のモンスターウェーブが大規模なものになっているのは、そういう理由みたいです」


「ちょっと私もあのマリアンナさんがそんな酷い事をするような人には見えないんだど、サバロンさん達には本当に言わないの? どうして?」


 その問いに、僕は明確な答えを持っていませんでした。

 ただ、僕の第六感が言わない方が良いと囁きかけてくるような、そんな感じでしょうか?


「上手く言えないんですが、勘……でしょうか?」


「ん~……普通なら勘だなんてって思う所だけど、ダインの勘となるとちょっと言わない方が良い気がしてくるわね……」


 そこまで話をしたところで、サバロンさんたちの後ろ姿が見えてきました。

 サバロンさんたちには『妖精の囁き』を使って既に街に向かって貰っていましたが、どうやら追い付いたようです。


 それにしてもそんな全力で走っていたら、これから戦闘なのに大丈夫なのでしょうか?

 何かチラチラとこちらを振り向き、気にしながらも鬼気迫る走りをみせています。


 暫く後ろにピタリとついて走ってみたのですが、中々気付かないので『妖精の囁き』を使って話しかけてみました。


『サバロンさん、そんな全力で走ってスタミナ大丈夫ですか?』


「うおぉぉぉぉ!!! って!? またお前かぁ!?」


 ん? なぜかみんなすごく怒っていますね。

 僕たちに気付いた瞬間、みんなヘロヘロと崩れ落ちていきます。


「ダイン……あなたサバロンさんたちに鬼蜘蛛のこと伝えてなかったんじゃ……」


 そう言えば、フォレンティーヌさんとの話に意識を取られて伝え忘れていました。

 どうやらモンスターウェーブの魔物たちと勘違いしたようですね。


「すみません。うっかりしていました」


「う、うっかり……うっかりだとぉぉ!?」


 両手両足をついて肩で息をする姿に、僕もちょっと申し訳ない気持ちになります。


 ただ、それとこれとは話は別です。


「すみません。でも……とりあえず時間がないので鬼蜘蛛に乗って貰いますね」


 時間が惜しいので、息も絶え絶えなサバロンさんたちを鬼蜘蛛でつまみ上げると、次々にその背中に放り投げていきます。


 さぁ、移動を再開しましょう。


「とりあえずお小言は後で聞きますから、戦いに備えて体力を回復させて下さいね」


「お前にそのお小言をするためにも絶対生き残ってやろうじゃねぇか! はぁはぁはぁ……でも、仕方ねぇな。この先に魔物の大軍が待ち構えているんだろ? 今は大人しく背の上でゆっくりさせて貰うぜ」


 まぁお小言聞くだけでみんなが頑張ってくれるなら、甘んじてお受けしましょうか。


 ~


「おい、ダイン! と、とんでもねぇ数の魔物が待ち受けてるがどうすんだ!」


 僕はとっくに見えてましたが、他のみんなもようやく待ち受ける魔物の大軍が見えたようです。

 ただ、思った以上の数だったみたいで少し焦っているみたいですね。


 ここは僕がこれから戦う魔物の情報を教えて少しでも不安を解消しておきましょうか。

 軽く確認した感じではほぼ人型の魔物で構成されているようです。


「もちろん突っ切りますよ? 魔物の構成はゴブリン、オーク、コボルト、オーガ、ミノタウロス、サイクロプスなどの、人型の魔物ばかりが約5000です。武器や魔法に注意してくださいね」


 僕は人型以外のものと戦う技術はあまり持っていないので、どちらかと言うとこういう魔物相手の方が戦いやすいのですが、恐らくこちらの世界の人たちにとっては、こういう武器や魔法を使う魔物の群れの方が苦手なのでしょう。


「な!? ご、五千だと!? 本当にこのデススパイダーみたいなゴーレムモドキで大丈夫なのか!?」


 そう思ってあらかじめ伝えたのですが、彼らの心配はそこではなかったようです。


「たぶん? でも、本当にたぶん大丈夫ですよ。たぶん」


「たぶんが多いわね!? でも、サバロンさん。この鬼蜘蛛は先日のモンスターウェーブでとんでもない強さだったのは直接この目で見たから保証するわ。私たちは魔法や遠隔攻撃の異能を撃つより、守りを固めて振り落とされないようにした方が良いぐらいよ」


 フォレンティーヌさんのその言葉で、一応みんな納得してくれたようですね。


「じゃぁ、いっちゃいますね。振り落とされたら死ぬと思って必死にしがみついていてください」


 僕のその言葉で、もう三段階ぐらい急激に速度をあげた僕たち鬼蜘蛛部隊は、暁の羊たちのメンバー皆の悲鳴を響かせ、魔物たちの群れに突っ込んでいくのでした。


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