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【第43話:道案内】

 スナイパーから、シグルスの西門が破られ、北側にいた魔物の大軍がもうすぐ街に辿り着きそうだという報告を受けて、焦る気持ちが高まります。


 しかし、今は視界を街に向けるよりも、少しでも早くフォレンティーヌさんと連絡を取るのが先決です。


「はやく……お願いだからもっと早く歩いて下さい……」


 今の僕に出来る事は多くありません。


 だからと言って、慎重に辺りを警戒しながらゆっくりとこちらに向かっているフォレンティーヌさん達を、ただ何もしないで待っていると手遅れになりそうです。


「あ、後で怒られるかもしれないけど……」


 僕はそう呟くと、『衛星射撃』の出力を最大にし、急かすようにフォレンティーヌさん達の後方に放ちます。


「すっごい慌ててるけど……ごめんなさい」


 念のために、もう一度先に謝っておきましょう。


 今度は先ほどより近いところに、そして次弾はさらに近い所にと、次々と衛星射撃を放っていきます。


「大混乱ですね。あっ、そっちは方向がずれてます!」


 横に逸れようとした片腕の人の側に撃ち込んだんですが、何か中指を立てて天に向かって叫んでますね。


 でも、そんな事より早く隊列に戻ってください。

 細かく連射してようやく戻ってくれました。


 その後、僕の的確な誘導の甲斐があったようで、5分もかからずに『妖精の囁き』の効果範囲に入ってくれました。


『フォレンティーヌさん! 急いでこっちに来てください!』


 合流予測地点に待機させていた、概念上の妖精を使ってすぐに話しかけます。


『え!? その声はダインなの!?』


 後ろで「お前がダインかぁ!?」とか叫んでる気がしますが、急いでいるので後回しですね。


『はい。さっきハヤトっち……グリムベル財団代表のハヤトと一戦交えたんですが、『星の牢獄』って異能で閉じ込められてしまったんです』


 僕がそう話すと、フォレンティーヌさんとの会話に片腕の人が割り込んできました。


 そう言えばこの人の話を聞いた気がするな。

 たしか『深海のサバ』でしたっけ?


『おい! ハヤトとやりあったって言うのは本当なのか!?』


『はい。でも、逃げられてしまいました』


『は? 逃げられたって……相手はあのハヤトなんだろ!?』


『「あの」が「どの」ハヤトを指しているかわからないですが、僕との決着よりも街を襲う事を、ある人物を倒す事を優先させたようです。だから、早くこっちに来てください。このままでは手遅れになるんです』


『ダイン? 手遅れってどういうこと?』


 僕は今、街がどのような状況に陥っているかを掻い摘んで説明しました。


『そ、そんな早く戻らないと!?』


 戻られたら困ります……。

 無言で背後に衛星射撃を放っておきましょう。


『きゃぁ!? わ、わかってるわよ!?』


『おい! ダイン! お前が相当強いのは十分わかった……と言うか、わからされたが、俺たちがそっちに着いてもその何とかの牢獄を破れるとは限らないぞ?』


『大丈夫です。誰か一人だけでも、近くに来てくれればそれだけで何とかなるので』


 僕が『影渡り』の異能のことを軽く説明すると、ようやく納得してくれました。


『それならフォレンティーヌ。お前先に行け! お前ひとりなら異能で早く移動できるだろ?』


『わかったわ。周りに魔物もいないなら先行する!』


 その言葉を言い終わると同時に『雪の羽衣』を発動させたフォレンティーヌさんは、地面を滑るように高速で移動をはじめたのでした。


 ~


「フォレンティーヌさん! こっちです!!」


 5分ほどで残りの距離を駆け抜けたフォレンティーヌさんは、僕を見つけて手を振ってくれています。


 しかし、何やら怒っている様子。


「あなたねぇ!! 道案内するのにいちいち上空から撃たないで!?」


 言葉で説明しにくかったので、逸れそうになったら撃ち込んだのがいけなかったのでしょうか?


「そんな事より、後少しです。もう少し……良し! 『影渡り』!」


 効果範囲の50m以内に入った瞬間、僕はフォレンティーヌさんの影に移動しました。


「きゃぁ!? なに!?」


 突然、真横に僕が現れたので、驚いたようですね。


「ありがとうございます。お陰で脱出できました」


「へ? もう抜け出したの?」


「はい。さっき説明した通り、近くにある程度の大きさの影を落とす生物がいれば、異能の力で抜け出せたので」


「……生物……ま、まぁいいわ。それより、すぐに街に向かうんでしょ?」


 何か不満そうですが、早く街に向かわないといけません。


「はい。もう西門が破られています。まだ街に入ってすぐの所で喰いとめているようですが、シグルスの街が陥落するのも時間の問題です」


 既に北門の前でも戦闘が始まっていますが、人が全然足りていません。

 このままではあっという間に北門を破られるところだったのですが、まだもう少しは持ちそうです。


「ただ、東側の魔物はその数をかなり減らせましたし、スナイパーには北側の魔物の殲滅に移って貰いましたから、西側さえ何とか踏みとどまってくれれば、まだ間に合うと思うんです」


 ただし、ハヤトの動きが問題ですね。

 彼の強さを考えると、おそらく参戦すれば一瞬で防衛線は崩壊するでしょう。


「スナイパーって誰? 協力者がいるの? でも、ここから街に向かう間にも物凄い魔物が待ち受けているんでしょ? いったいどうする気?」


 質問が多いですね。

 とりあえずスナイパーの説明は面倒なので、スルーして協力者という事にしておきました。


「あと、待ち受けている魔物の方は問題ないです。僕が蹴散らしますから」


 もう遠慮はしませんし、記憶も戻ったので普通の魔物は僕の敵ではありません。


「へ? 蹴散らすっていったいどうやっ……」


「例えば……『式神奏者』! 起動せよ! 擬人機甲式『20式鬼蜘蛛(ふたまるしきおにぐも)機甲』! 『現象転写』×100!」


 辺り一面に広がった無数の光の渦から、僕は鬼蜘蛛100体を呼び出し、従えたのでした。


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