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【第41話:ケジメ】

 ハヤトっちとの第二ラウンドは僕が先行させて貰いましょう。


 ただ、そうは言っても、ハヤトっちは抜け目がありません。

 会話の間も間断なく全方位から衝撃波が襲ってきているので『孤高の碇』を解除する事ができません。


 だけど、それなら身体を一切動かさなくても大丈夫な攻撃をすれば良いわけで……。


 僕は最大出力の衛星射撃でハヤトっちを撃ち抜きます。


「馬鹿が! そんなもの効かないとまだわからねぇのか!」


 僕の放った上空からの一閃は、ハヤトっちを素通りして地面に炸裂しました。


 しかし、ダメージを与えられないのは百も承知です。

 なにせこちらからのあらゆる干渉を無効化するのですから。


 ()()()()()のね。


 まず、狙ったのは地形破壊です。

 次々とハヤトっちの足元に撃ち込む事で、ちょっとした行動妨害を仕掛けます。


 僕の攻撃そのものでは干渉する事は出来ませんが、踏みしめる地面が崩れれば無視するわけにもいきません。


「ハッ! 嫌がらせのつもりかよ!」


 そう言って大きく飛びのきますが、その着地地点にも執拗に攻撃を撃ち込んでいきます。


「くっ!? うぜぇんだよ! 欠陥防御でこれを防いでみな!」


 はい。それを待っていました。


 さっき僕の『孤高の碇』のことを欠陥防御と呼んでいたので、揺さぶれば物理以外の攻撃を仕掛けてくると思ったんですよね。

 この異能は物理攻撃には絶対的な防御能力を発揮しますが、高温になるような攻撃や電撃のような攻撃には無力ですから、それを知っているハヤトっちは予想通りに『核撃』を放ってくれました。


「おら! 今度こそ『核撃』で息の根を止めてやるよ!」


 僕は『妖波動』の攻撃が一瞬止まった隙をついて『孤高の碇』を解除すると、予想通りハヤトっちは『核撃』を放ってきました。


 しかし僕は『影渡り』という異能でハヤトっちのすぐ後ろに瞬間移動します。

 これは影から影へと瞬間移動する凄く便利な異能です。


 ただ、対象が生き物の影限定なので、この事を知っている相手には注意が必要です。


 例えば……この事を知っている相手の影へと移動すると、移動直後に反撃を喰らいやすいとか?


「はんっ! その異能は知ってるんだよ!!」


 そう言ってもう一度『核撃』を放ってきました。


「まさか!? ……なんて、言ってみたり?」


 ただ、それこそ僕の狙いです。

 僕は『次元遮断』でハヤトっちごと包み込み、攻撃を防ぐと同時に爆風をハヤトっちに返してあげました。


「くっ!? 悪あがきを!! だから、効かねぇって言って……ゲホッ!?」


 もちろん爆破の衝撃や熱などはハヤトっちの異能『不干渉の衣』の前では無意味です。

 しかし、狙いはそこではありません。


「な、何をしやがっ……ゲホッ!?」


 何度も咳き込むハヤトっちは理解が出来ずに、慌てています。


「こちらからの干渉……この場合は爆発だね。それ自体は防げても必要なものが周りになくなったら……たぶん危ないよ?」


 ハヤトっちの『不干渉の衣』は、こちらからのあらゆる()()()()干渉を無かったものにします。


 しかし、()()()()()()()()()()()()()ような能力はありません。


 僕は、ハヤトっちの放った『核撃』を『次元遮断』でハヤトっちごと封じ込めることで、その空間にあった新鮮な空間を有害なものに変えたのです。


「くがっ!? くそっ!! やってくれたな!!」


 まぁ移動すればすぐに効果が切れてしまいますし、ハヤトっちの『不老不病』は状態異常系の攻撃は効果がすぐ切れてしまうので、ここからが本当の勝負です。


 とりあえず『妖波動』の()()()を抜け出せたので良しとしましょう。


「さぁ、どうせもう治ってるでしょ? 続きをやろう」


「あぁ! 当然だ! 楽に死ねると思うなよ!!」


 ほぼ同時に駆け出す僕とハヤトっち。

 その瞬間、飛んできた衝撃波を斬り捨て、一気に間合いを詰めると『衛星射撃』と『破壊の共鳴』で視覚と聴覚に揺すりをかけます。


「ア"ア"ア"ア"ア"ア"!!」


「くっ!? うるせぇんだよ!! 『核撃』!」


 直接的な攻撃は無効化されますが、不快な音と射撃による粉塵と地形破壊を嫌がって、大きく後ろに逃れます。


 しかし、昔からカッコつけて異能の名を口に出すのは変わらないんですね……。


「逃がさないよ? ……厨二っち(ぼそ)」


「てめぇ!? 誰が厨二だぁ!!」


 ハヤトっちは後ろに下がりながらも操っている魔物をけしかけたり、威力の小さい核撃で牽制してきますが、動きを呼んで魔物を撃ち抜き、核撃を遮断し、ある異能を狙って接近します。


 しかし、祢々切丸の斬撃も効かないため、純粋な接近戦になると圧倒的にこちらが不利になり、お互い決め手に欠けてしまいます。


 そんな一進一退の攻防を続けていた時でした。


(兄貴! 不味い! 街に魔物が向かってるぞ!)


 スナイパーからの報告を受け、第2の視界で慌てて周辺にいた魔物を確認しますが、特に変化がありません。


(ん? どういう事? ……まさか!?)


 そう思い第2の視界を引き延ばし、シグルスの街周辺に視界をあわせると、既に大量の魔物に取り囲まれているではないですか!?


「おっ? やっと気付いたか! もう街は手遅れだぜ! ()()()をようやく見つけたんだ! 普通のモンスターウェーブで済ますわけがないだろう!!」


 一瞬の油断。


 僕の頭上にキラキラと輝く光が見えたかと思うと、


「街が滅ぶのをそこで指をくわえて眺めてろ! 『星の牢獄』!!」


 その言葉とともに輝きが一気に増し、目も開けていられないほどの光と共に僕は逃げ場を失ってしまいました。


「っ!? 僕の知らないギフト!?」


 僕の周りを隙間なく埋める煌めきが、徐々にその包囲を縮めてきます。

 なんとか次元遮断でいくらかのスペースを確保しましたが、もう逃げ道はありません。


「その煌めきは壊せねぇぜ? 影移動を使って移動して来ても良いが、死ぬ覚悟を固めてから来いよ?」


 気が付けば、僕の周りにいた魔物の姿がありません。

 影移動の効果範囲は50mですから、今の戦闘中にわざと僕にぶつけて効果範囲内の魔物を殺させたのでしょう。


「ダイちゃん……お前とこうやって遊ぶのも久しぶりで面白いんだけどな……俺は俺で1200年のケジメがあるんだよ。じゃぁな……」


「待って! ハヤトっち! ケジメって何だよ!? せめて教えてから行けよ!」


 僕のその言葉に少し寂しそうに目を伏せたハヤトっちは、たっぷり数秒待ってからその口を開きます。


「……敵討ちだ……」


「敵討ち……?」


 どういう事だろう……国を滅ぼしたのはハヤトっちたちのはずだし、もしかして僕たち孤児の両親の?

 でも、それは前の世界での話なんじゃ??


「俺たち孤児とその両親、親族、友人、果ては知人まで……マリアの指示で殺されたんだ。あいつだけは許すわけにはいかねぇ……いや、今はマリアって名乗って無かったな……」


 何故だろう……僕の胸が早鐘を打ち、呼吸が乱れます。


「絶対に許さねぇ……あいつだけは……マリアンナだけは!!」


 そう言い残し、悠々と影移動の効果範囲から離れていったのでした。


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