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【第20話:衛星射撃】

 結局みんなで見学するという事になり、僕たちはみんなでぞろぞろと庭に出ることになりました。


「いい? 何か状況に変化があったら、すぐに孤児院の中に避難する事!」


 ローズが何度も言い聞かせ、うちの元気担当のセリアとソニアが落ち着くのを待ってから庭に出ます。


 孤児院の庭はそこまで広くありませんが、僕たち5人には十分過ぎる広さです。

 脇にはいくつかの野菜を育てている菜園がありますし、半年前に作ったブランコやベンチも置いてあります。

 それでも、軽く走り回れる程度の空間があるので、僕たちはかなり恵まれている環境でしょう。


 その開けた空間の真ん中まで行って立ち止まると、


「じゃぁ、ここでやろうかな」


 そう言って振り返ります。


「私、お義母さんの『癒し手』の力以外はじめてみるー!」


「ぼぼ、ぼくも!」


「えっと……ソニア、リンス、それからセリアもちょっと近い……」


 僕の足を踏みそうなぐらい近づいて、僕の顔を見上げるソニアとリンス。

 セリアはそこまで近くはないけど、僕の正面で三角座りをして同じように見上げています……。


 や、やりにくいです……。


「あなた達ね……ダインだってまだギフトに慣れてないんだから、集中できるようにちょっと離れてあげなさい」


「「「え~……」」」


 うん。ソニアとリンスはともかく、セリアは止める側になろうね……。


「えっと、まぁそれぐらい離れてくれたら大丈夫だよ」


「ダインも甘いんだから……」


 1mほどの距離で、じーーーっと見られるのはちょっと居心地が悪いけど、だからと言って異能を使うのに支障はないと思う。

 僕は、一度軽く目を閉じて集中してから目を開けます。


「それじゃぁ、いくよ? 『衛星射撃』!」


 その声と共に異能を発現させると、僕の視界がもう一つ増え、大空からこの街を見下ろすような景色が見えました。

 視界がもう一つ増えるという感覚が説明しにくいけど、それはとても自然に認識出来ていました。

 まるで、最初からそういうものだと感じるほどに。


「ローズ、確か救護所は守護者ギルドの近くだったよね?」


 僕は異能で得たもう一つの視界を維持したまま、ローズに話しかけます。


「えぇ。守護者ギルドから西に50mも離れてないと思うわ」


「あっ、あったあった。このテントだね。マリアンナさんは……いた! 何か忙しそうに指示をだしてるみたい。同じ治療院の人だね」


 マリアンナさんが話しているのは、前に僕も何度か会った事のある治療院のおばさんでした。

 残念ながらこの異能は音は聞こえないので、マリアンナさんが何を話しているのかまではわかりません。


 でも、マリアンナさんが大丈夫なのは確認できました。


「マリアンナさんは救護所で忙しそうにしてるよ。危険な場所に向かったりもしてないし、何も問題は起こってなさそう。大丈夫だよ。……次は戦戦いの状況を……」


 とりあえずマリアンナさんの無事が確認できたので、次は戦闘の様子を確認しようとした時でした。


「ねぇねぇ。ダインお兄ちゃん」


 ソニアがそう言って不思議そうに首を傾げています。

 セリア曰くソニアはあざといらしいけど、純朴でこういう仕草は本当にかわいいよね。


「ん? どうしたの? もう少しマリアンナさんの事を確認していた方がいい?」


「ダインお兄ちゃん、もうギフト使ってるの?」


 ソニアたちは、どうやらもっと派手なものを想像していたのでしょう。

 たしかに、この『衛星射撃』で遠くを覗き見るだけだと凄く地味だよね……。


「うん。魔眼系のギフトみたいなものだから、ちょっとわかりにくいよね」


 ただ、魔眼系のギフトの中には、目に魔法陣が現れたり、燃えるような赤い炎の光を瞳にやどすものもあるそうなので、そんな魔眼ならきっといろんな意味で目立つこと請け合いですが。


「そうなんだ……ぜんぜんわかんないんだね~」


 はたから見るとギフトを使っているのかさえわからない状況なので、ソニアがちょっと残念そうです。


「えっと、今も使ってるんだよ?」


 実際、今僕の視界は二つ存在しています。

 まるで衛星写真のような視界が僕の意志で自由自在に拡大縮小出来るし、他にもいろいろなことが出来るんですが、他人から見てわかるようにするには()()しかないので、ソニアの期待にはこたえられそうにありません。


「ソニア、わがまま言わないのよ? それより、お義母さんが何事もないのがわかって良かったわ……」


 平気なふりをしていましたが、ローズも心配だったのでしょう。

 ほっと胸をなでおろしているようです。


 そんな安堵を壊すように声をあげたのは、うちの元気担当()です。


「ねぇねぇ! ダイン!」


 セリアが何か良いこと思いついた! って顔で話しかけてきました。

 うん。セリアのこういうときの「良いこと」って、「良いこと」だったためしがないんですよね。


「ど、どうしたの?」


「そのギフトって、『えいせい()()』って言うんだよね!」


 衛星っていうのが何なのかわからないのでしょう。

 少し疑問の表情を浮かべながらも、後ろの射撃を強調して聞いてきました。


「そうだけど?」


「じゃぁさ! ずばん!って、敵を撃てるってことだよね!?」


 そう言って訓練用の魔銃を抜いて構えてみせるセリア。


「ダメよ、セリア。今はそんな事している場合じゃないでしょ?」


 ローズがいつものように反対しますが、僕は少し考えてから、今回はセリアの話に乗ってみる事にしました。


「いや、ローズ。試し撃ちはしておこうかな。いざって時に正確にこの能力の事を把握できていない方が危険だし」


「そ、そうよね! 試しておいた方が良いよね! 私もそう思ったのよ!」


 セリアが「その通り!」って表情を浮かべていますが、単に見てみたかっただけだよね?

 でも、僕も試しておきたかったので、良しとしましょう。ふっふっふ。


「なな、なにかダインおにいちゃんが、ちょっと悪い顔してる気がするよ……」


 あっ、リンスにバレちゃった。


「はっはっはっ」


「もう……ダインも笑って誤魔化さない。でも、ダインも男の子なのね。そんないたずらっ子みたいな顔もするんだ」


 うっ、そういう言い方されると恥ずかしくなります……。


「それよりダイン! 早く見せてよ!」


 まぁでも、皆もすっかり怯えた様子が消えたし、これはこれで良かったという事で。


「わかった! それじゃぁ、行くよ! 狙いはそこの収穫の終わったカボチャ畑で!」


 数日前に全部収穫して今は何もないから、的にしちゃっていいよね。

 第2の視界で元カボチャ畑の真ん中に狙いを定めると、


「狙い撃ちます! 『衛星射撃』!」


 そう言って、概念上のトリガーをひきます。


「あ! 待ってダイン!」


 ローズが止めようと叫んだ時にはもう撃ち放った後でした。



 そして、その次の瞬間……。



 大空から地表に向かって一本の閃光が走ったかと思うと、孤児院全体を覆う何かがパリんと音を立てて崩れ去り……、


「「「きゃぁ!?」」」


 ちゅどん! って言う轟音と共に、僕らは土まみれになったのでした。


***************************

ようやく異能の片鱗を見せ始めたダインなのでした☆


今回でようやく20話♪

まだまだ物語はこれからですよ~(≧▽≦)


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