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【第18話:片鱗】

 1分ほどかかって、ようやく脳内アナウンスが終わりました……。


『以上ノ異能ノ使用制限ヲ解除シマシタ。異能浸食ニヨル暴走ニ注意シテクダサイ』


 ん?? 何か最後にちょっと怖い警告があった気が……。


「ダイン、あなたの異能の組み合わせなら、かなり戦えると思うわ。まずは身体強化と気功法衣がどの程度使えるか教えてくれる? ……ダイン? どうしたの?」


「……え……うわっ!?」


 頭に流れ込んできた膨大な異能の知識に少し混乱していると、鼻と鼻が触れそうなほどの距離でフォレンティーヌさんが顔を覗き込んで来ていて、思わず驚いて後ろに飛びのいてしまいました。


 その距離5mほど……。


「あ……」


 壁際でセリアが騒いでいる気がしますが、僕もそれどころではありません。


「ダイン、力を使ってみたいのはわかるけど、何もいきなり使って見せてくれなくても良いのよ? 次からはちゃんと私の話を聞いて指示に従ってちょうだい。まぁ、とりあえず身体強化はかなり高レベルで使えるのはわかったわ」


 あれ? なんか僕が嬉しがって能力使ってみたみたいになってる気がします……。


「ダイン、これから私の指導を受けるつもりなら、ちゃんと私が話したら返事をしなさい」


「あ、はい。なんか、すみません……」


「まぁ力を得て嬉しいのはわかるから、次から気をつけるように」


「はい……」


 そういう意図は全くないのだけど、とりあえず頭の中の整理は置いておいて、まずはちゃんとフォレンティーヌさんの指示を聞くことにします。


「じゃぁ次は気功法衣よ。まずは常時展開時の防御力を測るから普通にしてて。当たっても()()()()()()()()に調整した氷の礫を放つから、怖がって避けないようにね」


「わ、わかりました」


 フォレンティーヌさんが「じゃぁいくわよ?」と確認をしたあと、


「放て!」


 と言うと、氷の木に生い茂っている氷の葉が、礫となってこちらに飛んできました。


 でも……、


「ちょっとぉ!? 避けないの!!」


 普通にしてたら脊髄反射で氷の礫を交わしてしまっていました……。


「す……すみません……」


「仕方ないわねぇ……もう一度いくわよ? 今度は避けないように! ……放て!」


 今度は強い意志で氷の礫を避けずに待ち構えていたのですが、当たると思った直前で何か膜のようなものにあたって威力を失い、氷の礫は僕の足元にカランと音を立てて転がりました。


「へぇ~……さっきのお仕置きに法衣を突き破ってちょっと痛いぐらいに調整したつもりだったのに……まさか常時展開の気功法衣だけで完全に威力を殺されるなんて。しかも触れる事も出来ないなんていうのは予想外だわ」


 え……? ちょっとプライドが……とか聞こえた気がします……。

 それに、なにかフォレンティーヌさんの目が笑ってない気がするのですが……。


「次は~どの程度使いこなせるか試してみるから~気功法衣(その異能)に意識を向けて出来る範囲で最大限の強化をしてみて~ふふふ~」


 この気功法衣などのパッシブに分類される異能は、意識を向ける事でさらに強化が出来るものが多いみたいなのですが……そんな事より、フォレンティーヌさんが何か黒い笑みを浮かべてほほ笑んでるのが凄く凄く怖いのですが!?


「ふぉ、フォレンティーヌさん?」


「さぁいくわよ!! 気をしっかり持たないと知らないわよ!! ……放て!!」


「うわぁ!? ま、待ってくださいぃ!?」


 さっきの比じゃないスピードで雨あられと氷の礫が飛んできます。

 僕は慌てて気功法衣に意識を向けて強化を図るのですが、強化云々以前に僕の軽い体重の方が耐えきれず、大きく吹き飛んでしまいました。


「「きゃぁ!? だ、ダイン!!??」」


 セリアとローズのハモるような悲鳴が遠くで聞こえます……。


「あ……ちょっとやり過ぎたかな……」


 そしてフォレンティーヌさんの「てへぺろ」て仕草も……。


 僕はこのままだと背中から落ちそうだったので、空中で猫のように身体を捻って両手両足で地面に触れると、滑るように威力を殺して着地します。


「ちょ、ちょっとフォレンティーヌさん! びっくりするじゃないですか!?」


 そして何だか目を見開いているフォレンティーヌさんに少し抗議します。


「え……? 嘘でしょ……まさか、あれを全くの無傷なの……これはちょっとダインの能力者ランクをかなり上方修正しないといけないわね……」


 さっきから能力者ランクって言葉が何度か出てくるけど、何なのだろう?

 それを確認しようとした時でした。


「っ!? 警報!?」


 この建物の中にも警報装置が設置されているのでしょう。

 ここは修練場の中ですが、けたたましい警報音が響き渡っています。


「え? え? ローズ! これってもしかして……」


「そ、そうね。普通の魔物の警報じゃないわ。第1ウェーブの予備警報よ」


 さっき聞いた話では、モンスターウェーブの予見がされると千里眼などの魔眼系ギフトを持った守護者や衛兵が総動員されるらしく、かなり余裕をもって予備警報>本警報と二段階で警報が発せられるという事です。

 今回はローズの言うようにその予備警報のようですね。


「うむ。しかし、モンスターウェーブの警報が発せられてから数時間で最初のウェーブが始まるなど、かなり珍しいケースじゃな」


 さすがにワグナー校長は何度もモンスターウェーブを経験してるみたいで冷静ですね。


「ダイン。悪いけど今日はこれで中断させて貰うわね。せめて最低限の指導が終わっていれば連れて行っても良かったんだけど、第1ウェーブを乗り切ってからまた声をかけるわ」


 フォレンティーヌさんは七枚盾(セブンズシールド)の一人ですから、当然のように都市防衛戦に参加するようです。

 僕も一瞬ついて行こうかと思いましたが、まだ自分の能力も把握しきれていないので、素直に指示に従う事にしました。


「わかりました。今日はありがとうございました。フォレンティーヌさんも気を付けて下さい!」


「ふふふ。魔物なんて蹴散らしてあげるから、あなた達も安全な場所に避難しておきなさい……『雪の羽衣(はごろも)』!」


 フォレンティーヌさんは、先ほど使った『樹氷』とは違うギフト……いえ、異能を使って地を滑るように駆け出し、あっという間に修練場を飛び出していってしまいました。


「では、儂も遊んでないでそろそろ行くかのぉ。守護者養成学校(ここ)の避難所としての解放は終わってるはずじゃが、色々指示せんといかん立場じゃからのぉ」


 この街では魔物の襲撃に備えて建物がかなり頑丈に作られていますし、保存食の備蓄が義務付けられているので普段は魔物の襲撃警報が出ても避難所に来る人はあまりいません。

 ですが、モンスターウェーブとなると心配になって集まってくる人も増えるのでしょう。

 今日の見学中もちらほらと避難している人を見かけました。


「ローズよ。お主もここはいいから孤児院に帰っておれ。最年長なんじゃろ?」


「ですが……いえ。校長ありがとうございます」


 断ろうとしたローズでしたが、自分の服の裾をセリアが掴んでるのに気付いて、その申し出を受ける事にしたようです。


 こうして僕たちの養成学校登校初日は終わりをつげ、一度孤児院に戻る事になったのでした。


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