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第一話 異世界転移に執事を巻き込んだ。


 私は竜宮院(りゅうぐういん)咲良(さら)十四才。

 世界で五本の指に入る程金持ちな竜宮院グループの令嬢。

 私は選ばれし者。だから異世界に行ってチート三昧出来るに決まってると黒魔術の本を読みあさり、ついにその時は来た。

 私室で転移の魔方陣を描いていたら本当に光始めたのだ。

 感激して魔方陣の中心に立っていると、ドアがノックされ、入ってきたのは、身長180センチメートルのメガネイケメン執事の亀浦(かめうら)海人(かいと)年齢不明。


「三時のおやつをお持ちしたのですが、それどころじゃなさそうですね」


 そう言うと私が入っている魔方陣に海人も飛び込み、その瞬間私と海人は現実世界から消え失せた。




 気が付くと、異世界ネタでよくある見るからに王様っぽい人がこちらを見ている。


「おお、そなたが勇者か」

 正確には私の横の海人を見て喋っている。


「いえ、私はただの執事ですよ。勇者は隣の咲良お嬢様です」


「鑑定士よ、本当にこの少女が勇者なのか?」


 王様っぽい人が水晶を持っている怪しげなお婆さんに訪ねると私に水晶玉を向ける。


「確かにこの少女が勇者みたいですな」


「では隣の男は何なのだ? 召喚出来るのは確か勇者一人だけの筈であろう?」


 お婆さんは今度は海人に水晶玉を向ける。


「この男性の言うとおり執事見たいですな」


「えっ、何で執事?」


 疑問に思っている王様に海人が告げる。


「それは咲良お嬢様の執事だからです」


「えっ、どゆこと?」


「お嬢様が行くところすべてについていく。それが執事なのです!」


 海人の発言にしばらく思考した王様だけど考えるのを放棄したみたいで「わかった。勇者サラの執事なのだな」と海人に確認する。 

「はい、咲良お嬢様の執事です」


「うん、わかった。それよりも勇者サラよ、よくぞ異世界召喚に応えてくれた。余はグラエスタ王国の国王アーセム·グラエスタじゃ。この召喚はお互いに魔方陣を描かないと成り立たないからな」


「そう、やっぱりここは異世界なのね!? やったーこれで異世界チート三昧よ!」


「勇者サラよ、喜んでいる所悪いが話を聞いてくれないかのう?」


 王様が困った顔をしている。いけないいけない。異世界に来れたものだからついはしゃいじゃったわ。


「ごめんなさい、王様。お話どうぞ」


「うむ、勇者サラよ召喚したのには訳がある。実はな」


「魔王を倒せば良いのよね!」


「合ってるけども合ってるけども最後まで話をさせてくれないかのう!!」


「ごめんなさい、異世界に召喚と言ったらだいたい魔王討伐だからつい先走っちゃった」


「こほん、勇者サラが言った通り今この世界エデンは魔王の脅威にさらされている。そこで勇者サラには、魔王が生み出した魔物共々魔王を倒して欲しい」


「わかりました、任せてください! 魔王なんてギッタンギッタンに倒してやるわ!」


「これは我が王家に伝わる勇者の装備じゃ。それとこれは旅の当面の資金にしておくれ。贅沢しなければ二人でも三ヶ月は暮らせるだけのお金、三十万ゼニーが入っておる。それでは頑張るのじゃよ」


 勇者装備一式と三十万ゼニーを渡され城から追い出された。


 とりあえず勇者装備を着てみたけどコスプレ感半端ない。


「ねぇ海人? この場合はどうすればいいのかしら?」


「まずはギルドに行って冒険者登録をした方が良いかと」


「よく知ってるわね」


「執事ですから」


 うん、答えになってない。まぁ、とりあえず海人に言われた通りギルドに向かいギルドのドアを開ける。

 すると強面の冒険者が沢山いた。

 ヤバいよ、これ絶対に絡まれるやつだと思っていたら一番ガタイがいい冒険者が近づいてくる。


「何だお前ら見ねえ顔だなぁ?」

 

 ヒィィ、絶対喧嘩売られる流れよ。

 

「今日この国の王様に召喚されたので見ていないのも当然ですね」

 何冷静に話してるのよ海人! 


「召喚だぁ? そう言えば国王陛下が今日勇者召喚するって言ってたが、まさかお前みたいなヒョロヒョロが勇者かぁ?」


「いえ、私はただの執事で横に居られます咲良お嬢様が勇者です」

 ちょっとぉぉお!? 何言ってくれてんの!? 私に矛先が向くでしょうがっ!!


「この嬢ちゃんが勇者? 格好はそれっぽいがありえねぇだろ」


 ぎゃはははとその大男が大笑いすると周囲のガラの悪い冒険者も大笑いしだす。


うー、この場から去りたい異世界ってもっときらびやかなものじゃなかったの? 


「今お嬢様を嘲笑しましたね」


 次の瞬間、一番ガタイが良くて大笑いした大男がぶっ飛んだ。


「あなたも笑いましたよね」

 次々と笑った冒険者を倒していく。

 相手が剣で反撃してもひらりとかわし、ぶっ飛ばしていく。

 恐ろしくなったのか謝りながら退散していく笑った者達。


「お嬢様、羽虫は追い払いましたので安心して冒険者登録をしてください」


「いやいやいや、あれだけの人数を瞬殺ってどういう事!?」


「執事ですから」


「答えになってないのよっ!?」


 私の家のメイドや執事は他の金持ちが羨む程万能だ。だけどこの亀浦海人はその万能さを越えている。

 料理を作れば、一流シェフ顔負けの頬が緩む程の絶品料理を作り、格闘すれば、幼い頃に数十人の銃やナイフなどを持った誘拐犯相手に一人で立ち向かい無傷で撃退。掃除や庭の手入れ、車のドライバーとしての能力もいずれも我が竜宮院ナンバーワン。

 それに容姿が私の幼い頃から全く変わっていない。

 その理由も「執事ですから」の一言で済ましてきた謎の執事。

 父や母、祖父、祖母に海人のおかしさを伝えても『執事だから』の一点張り。

 別に迷惑はかけられた事はなく、逆に助けられた事の方が多かったのでそのおかしさに目を背けていたが、やっぱりおかしい!

 

「やっぱりおかしいわよ! 執事だからっていきなり来た異世界でこんなに冷静でいられて、強そうな冒険者達を軽く倒してしまうなんて」


「そう言われましても私はただの執事ですから。それよりも冒険者登録を早くいたしましょう」

 

 そう言ってギルドの受付カウンターに誘う海人。

 相変わらずの笑顔で話を反らす海人に渋々受付に行く私。

 

「いらっしゃいませ。ようこそグラエスタ王国王都ノワール冒険者ギルド支店へ。勇者の咲良様と執事の海人様ですね。王宮から二人を冒険者にするように連絡を受けておりますのでさっそく冒険者登録するのでこの水晶玉に触れてください」


 受付嬢に言われた通り水晶に手をかざすと水晶青く光、水晶の中から指輪が出てくる。


「その指輪を嵌めてステータスと言って見てください」


 言われた通りステータスと言ってみる。

 すると空中に文字が浮かび上がる。


 

 ステータス


 名前  竜宮院 咲良


 職業  勇者


 レベル  1


 やっぱり勇者になってる、やった~。


 次は海人が水晶玉が同じように青く光、指輪が出てくる。

 海人もステータスと言う。


 ステータス


 名前  亀浦 海人


 職業  執事


 レベル 99


「ええ~!? レベルカンストしてますよ海人様。カンストしてる人なんて始めて見ました!」


 いや~せっかくの職業勇者が誰かさんのせいで、すっかり霞んでしまった。実に不愉快。


「いやなんでいきなり来た異世界でレベルカンストしてんの?」


「執事ですから」


「執事ですから執事ですからでなんでも片付くと思うなよ!」


「それではこれはいかがでしょう」


 一拍おいてからの、「咲良様の執事ですから」


 胸キュン来たー!! 


 咲良様をつけるだけでこの破壊力。


「もう一回言って?」


「咲良様だけの執事ですから」


 ぎゃぁぁぁあっ!! メガネイケメン執事最高!


「「「あのう、いちゃつくなら場所変えてもらえます?」」」


 ギルド内の全員から突っ込みが入った。

 

読んで頂きありがとうございました。

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