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お宝をもらう。〜龍神の水郷〜①



〜龍神の水郷 遺跡居住区 88日目〜



水郷の案内をされて既に五日が経過していた。今日は古代人の居住区を案内して貰っている。


輝く水が流れる川と化した街路。新緑樹の葉が作る自然の屋根とアーチ。


退廃した遺跡群は古代の生活を連想させ価値がありそうな土器や家具が溢れていた。


考古学者には堪らない光景に違いない。


俺にはこの神秘的な風景だけで十分だ。


「……」


「悠〜。こっちじゃ」


見惚れているとアジ・ダハーカが俺を呼んだ。


「いま行くよ」


後を追って先を進む。



〜龍神の水郷 王の遺跡前〜



「水郷で一番大きい遺跡じゃ。遥か古代にこの地を治めていた統治者の住まいじゃな」


「でっけぇ…」


地球の世界遺産にある某神殿にも似た遺跡。


入り口は広く巨人でも入れそうだ。


「ふむ。此処で待ち合わせなんじゃが…」


「待ち合わせ?」


ーー主と悠よ。お待たせしました。


ーーこの子達の仕度に手間取って…。


ーーピュイィ〜。


ーーピュー!ピュイ!


オルドとオルガが空から舞い降りる。背には子供達も乗っていた。


「うむ。大丈夫じゃぞ。オルタも元気そうではないか…ってこ、こら!髪を噛むでない!」


ーーピュムピュム。


オルタとは逆誄歌で孵化したオルドの息子だ。


まだ生まれて五日だが元気に育っている。


竜の子は成長が早い。オルドとオルガは竜種の中でも特別な種でその子達も通常の飛竜とは成長速度が違う……ってアジ・ダハーカが言ってたな。


ーーす、すみません。…オルタ。こっちに来なさい。


ーーピュイ?


「…将来が楽しみじゃ。大きくなったら妾が稽古をつけてやるから覚悟するんじゃぞ」


ーーピュ〜。


「ははは。可愛いじゃないか。それで家族揃って今日はどうしたんだ?」


ーーアジ・ダハーカ様。悠にはまだ伝えてなかったのですか?


「ふっふーん。驚かせようと思って内緒にしてたわ」


首を傾げる。一体全体なんのことやら。


「内緒ってなんだよ」


「こほん。では話してやろう。じゃがその前にーー」


アジ・ダハーカが龍人変異を解き元の煌星龍の姿に戻る。


…久しぶりに見たが…うん。全く持って勝てる気がしないな。稽古開始前より格段に強くなった今でも変わらない。


ーーー……悠よ、此処に来たのは他でもない。其方に礼をする為じゃ。妾が従者…『金星竜オルガ』と『銀星竜オルド』の子オルタを己の生を代償に救った礼を龍峰の支配者として改めて言わせて貰おう。…ありがとう。


頭を下げるアジ・ダハーカ。


「…あ。いや、恐縮です」


いつものお菓子大好き幼女とは思えない尊厳に満ちた姿に萎縮してしまった。


ーー…貴方のお陰でオルタは家族(私たち)と出逢いこの世界に生を授けられた…。この恩を末代まで一生忘れない…血が繋がらず種族が違えど悠はもう家族よ。


ーー親愛なる人の友よ。我が息子を救ってくれたお前の偽りなき優しさ…この銀星竜がオルド…一生忘れん。悠が危機に陥れば例え大陸を跨ぎ幾万と離れてようと必ず馳せ参じると約束する。


同じく頭を下げるオルドとオルガ。


「気にしないでくれ。俺は当然の事をしたまでだ」


オルタとオルカの頭を撫でる。


「お礼なんてこの子達が幸せに育ってくれれば…それだけで十分さ」


ーーピュイピュイ。


ーーピュー。


甘噛みしてくる二匹。


ーーー…かかか!やはり其方は妾が見込んだ通りの益荒男ますらおじゃ。此れを授けるに相応しい者よ。受け取るが良い。


アジ・ダハーカが空に向かって吠える。すると昼にも関わらず煌めく星天が空に広がり隕石が落ちてきた。


「え」


猛スピードで迫り来る隕石はアジ・ダハーカの目の前でぴたりと静止する。


…あ、焦ったぁ!衝突するかと思ったぜ。


ーーー遍く星屑よ。我が名の下に集え。


強い光が隕石を包む。光に包まれた隕石は縮み、手の平に納まる小さな透明の玉となった。


…星を閉じ込めた…?


玉の中では集まった光が夜空に煌めく星の如く爛々と輝いている。吸い込まれそうなほど綺麗だ。


フカナヅチの嵐飛龍の風玉に似てるな…。


アジ・ダハーカは龍人変異しまた人の姿に戻った。


「ーーふぅ。…その宝玉には妾の魔力を封じてある。其方との愛と絆を示す証じゃ。月に一度しか呼べぬが天に翳しMPを消費すると富を齎す隕石を降らす事ができよう」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

煌星龍の宝玉

・アジ・ダハーカの愛と絆の証。宝玉には隕石

を呼ぶ魔力が封じられている。持ち主のMPを

消費し天に翳せば希少な鉱物と宝石で形成され

た隕石を降らせる事が出来る。(月一回限定)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「…良いのか?こんなすごい物を貰っちゃって」


「妾の愛と絆の証を要らんと申すか?…そんな戯言を宣ったら全力で殴り倒してやるわ」


「ありがたく頂戴致します」


全力で殴られたら即死確定じゃねーか。


「うむ!当然じゃな。妾と思って…大切に!丁寧に!大事に!…するのぞ。舐めても構わん」


舐めるわけないだろ。


…しかし愛と絆、か。


そこまで信頼してくれるのはめっちゃ嬉しい。


宝玉を腰袋に仕舞う。アジ・ダハーカの宝玉とフカナヅチの風玉…二つも貴重な品をゲットしてしまった。


オルガが俺を見て微笑む。


ーー悠。私は魔力を封じ玉石を作ることは出来ない。…この遺跡には昔、私とオルドが戦利品として集めた財宝を保管しているの。


オルドが続いて言う。


ーー…ああ。その財宝を全部お前にやる。


はっ?


「…いやいやいや。只でさえアジ・ダハーカにすごい物を貰ったし十分だよ」


ーーせめてもの感謝の気持ちよ。宝は何の価値もないわ。…この子達が一番の宝物だもの。


ーーその通りだ。受け取って貰わないと困る。我等の気が済まないのだ。…嫌と言っても聞く耳は保たん。


「…参ったな。じゃあ取り敢えず見ても良いか?」


ーー勿論だ。


「かかか!妾も行くぞ。悠、抱っこじゃ」


背中に飛び乗るアジ・ダハーカ。


「おふぅ…自分で歩けよ」


ーーほら、坊やたちは私の背に乗って。


ーーピュイピュピュイ。


ーーピュ〜。


全員で遺跡の中に移動した。



〜王の遺跡 財宝の間〜



「…う、そだろ…?」


口から掠れた声が出る。


ーー気に入ったか?今や全部、お前の物だ。


大広間に見渡す限りに積まれた金銀財宝の宝の山。


溢れんばかりの輝きに目が眩む。


「これ全部って……」


一体、幾らになるか想像もつかない。


「驚くのも無理はない。よくもまぁ集めたと妾も感心するわ」


抱っこ中のアジ・ダハーカが周りを見渡して言う。


ーー私たちも若い頃は血気盛んで人里や魔窟を襲ってましたので。…あの頃は荒れてましたし。戦利品を集めて悦に浸ってたなんて若気の至りって恥ずかしいわ。ねぇあなた?


ーー……ああ。


どんな若気の至りだよ。…こんな宝の山を貰ったら不安で夜も落ち着いて眠れなくなるわ。


意外と小心者なんだぞ。


「ちょ、ちょっと聞いてくれ。オルドやオルガの気持ちは嬉しいがこの宝を全部は貰えない。少し貰えたら十分だ。…頼む。それで勘弁してくれ」


変なお願いしてるよなぁ…俺。


ーー財宝を前にしても欲が無いとは……お前は謙虚だな。我が知ってる愚かな人とは格が違う。流石だ。


ーー夫がここまで褒めるなんて。貴方は大した人だわ。


「ふっふーん。妾が見染めた男だぞ。当然じゃ!」


何やら良い方向に誤解してる気が…まあ、いい。


適当に物色するか。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 久しぶりに当たり作品に出会えて楽しく読ませて頂いてます [気になる点] >アルマが龍人変異を解き元の煌星龍の姿に戻る。 アジ・ダハーカがアルマになっちゃってますw
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