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レベルを上げよう!〜龍神の水郷〜④



〜龍神の水郷 名も無き墓の浮島 稽古45日目〜


稽古開始から一ヶ月と二週間が経過した。


今日は石碑と墓が並ぶ浮島での稽古だ。


時刻は午後16時。休憩を挟んではいるが戦い続けても傷を負う事も少なくなった。


ーーふん!


オルドの攻撃の隙を見て翼に淵嚼蛇で捕まり飛ぶ。一気にアジ・ダハーカに向かって駆け寄る。


ーーなに…?


ーーさせないわ。鉱壁よ。阻み聳え立て。


オルガが魔法を放つ。眼前に高い鉱石の壁が現れた。


魔槌・屠を構えブレイカーを放つ。


二週間前は壊せなかった壁を破壊し進んだ。


ーー!


そのまま左手の剛銃・アンチレイムでE・ショットを発動させた。防御する横をすり抜け待ち構えるアジ・ダハーカに突進。屠を握る手に力を込める。


「かかか。来るがいい」


渾身のジャッジメントを簡単に躱す。…これで終わりじゃない。


「デス・ペナルティ」


強力無比の一撃を斜め下から振り上げる。

龍斧と屠がぶつかって衝撃波が起きた。


「…ほぉ」


アジ・ダハーカが口の端を上げる。


「…二刀!」


武器を切り替え妖刀・金剛鞘の大太刀を抜く。斬撃は斧で弾かれたが狙いはここだ。


「蛇縄絡」


「む」


黒い闇の池が俺を中心に広がる。


地面から這い上がる無数の蛇がアジ・ダハーカの足に絡まりHPが回復していく。


真月之太刀と萬月之太刀を連続で繰り出し最後に淵嚼蛇を纏った全力の一刀・煌。二刀状態で放つ十字の飛ぶ斬撃がアジ・ダハーカに迫る。


龍斧を両手で握り直すアジ・ダハーカ。


「極煌斬・石動山いするぎ


繰り出す戦闘技と空中で相撃つ結果となった。暫し静寂が訪れアジ・ダハーカが武器を仕舞う。


「ーーーうむ。稽古はここまでじゃな」


「…あぁー…今日も一撃も入れられなかった…」


全力を出し尽くし疲れた俺が地面にへたり込むと同時にLv upのウィンドウが表示された。


ーーーLv13→Lv14へLevel upーーー

・戦闘数値・非戦闘数値が上昇しました。

・従魔との親密度が上がりました。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

名前:黒永悠

性別:男

種族:人間

称号:穢れと供に生きる者

職業:禍の契約者 Lv14

戦闘パラメータ

HP77000 MP12300

筋力6200 魔力1790 狂気7700

体力3950 敏捷5500 信仰-4000

技術5200 精神1790 神秘4000

非戦闘パラメーター

錬金:130 鍛冶:170

生産:119 飼育:101


耐性:狂気の極み 神秘耐性(Lv Max)

   不老耐性 不死耐性(Lv5)聖奪の極み


戦闘技:獣狩りの技法・ギミックブレイク

奇跡:死者の贈り物・蛇縄絡


呪術:禁呪・神樂蛇・禁呪・淵嚼蛇

   禁法・縛烬葬 蛇憑き面


加護:アザーの加護 夜刀神の加護

従魔:祟り神のミコト(親密度60%)

固有スキル:鋼の探求心 閉心 兇劍 顕魔 魔人

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


遂にLv14に到達!Lv8以降はアップしても新たな能力アビリティの取得はなかった。練度を鍛えてる真っ最中だし戦闘数値の上昇だけで十分さ。


…しっかし全戦闘数値の項目が四桁か。昔と比較すると見違えたなぁ。


「格段に動きが良くなっとるし能力アビリティの扱いが稽古開始時に比べたら雲泥の差じゃ。…かかか!一撃を入れられる日もそう遠くないのぉ」


いやいや…アジ・ダハーカの強さは異常過ぎる。


これよりも強かったアルマってやべぇな…。


ーーええ。一ヶ月で大したものです。私の防御魔法を突破するなんて。ねぇあなた。


ーー……ああ。


「はは。ありがとう」


稽古以外に深夜まで自主練習した甲斐があった。


幸い秘湯と不死耐性の二乗効果で練習し放題だしな。


「戦闘数値に練度も追い付いておるのだろう。…夜遅くまで練習してる成果じゃのう悠よ」


ーー……。


バレてた。


「…知ってたのか?」


「こそこそと秘湯に向かうのを偶然、見てな。…一人で美味い菓子でも食ってるかと跡をつけたのじゃ」


「違うわい」


「…ふむ。菓子の話をしたら腹が空いたのう。うん。湯浴みして飯じゃ!ホットケーキじゃ!」


ーーはい。


…ホットケーキね。材料が無くなったんだが今は言わないでおこう。


大量に食材や調味料は腰袋に入れてるし代わりのデザートを作るか。


アジ・ダハーカとオルガが秘湯に向かう。


俺も行こっと。


立ち上がるとオルドが話掛けてきた。


ーー…悠。レベルアップだけが強くなる秘訣ではない。固有スキルの効果を理解し戦闘数値バトルパラメーター能力アビリティに結びつく。鍛え経験を積む事で練度は更に増すのだ。練度が極まれば何れ『奥義』へと至る。…お前には見込みがある。折角の力を持て余すのは勿体無い。


「え、ああ。分かったよ」


ーー努力は大切だ。向上心や心意気を忘れるなよ。


そう言い残し行ってしまった。


「…オルドって無口な割に意外と面倒見が良いよな」


一人呟く。


俺も秘湯へと足を進めた。



〜夕方18時 ドラグマの神樹前〜



アジ・ダハーカが絶叫する。


「…ホットケーキが…ない……じゃと…!?」


「元になる材料が切れたんだよ」


「ホットケーキ…ホットケーキ…ホットケーキ…妾のホットケーキェ…」


この世の終末を迎える様な絶望した顔。どんだけ気に入ってんだ…。


「別のお菓子を作ったからそれで我慢してくれ」


「……ホットケーキより美味しいのか?」


「まぁ、食べてみろって」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

焼きリンゴ。

・ベルカアップルの芯を抜き焼いたデザート。

シナモンパウダーとラム酒や砂糖を混ぜ詰めて

焼いてある。ほっとする甘みとリンゴの酸味が

体を温める一品。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「…匂いは良いが林檎を焼いただけではないか。手抜きじゃ!手抜きなのじゃ!」


「アジ・ダハーカは要らないらしい。オルガ。代わりに貰ってくれ」


ーーまぁ。


「た、食べないとは言っとらん!…寄越すのじゃ。もぐもぐ…」


引っ手繰る様に皿を奪う。


「!」


目が輝く。気に入ったみたいだ。


「う、うむ。ホットケーキには劣るが美味い」


「だろ」


最後の夜はケーキでも作ってやろうか。残った材料で何とかいけるだろ。


ホイップクリームは…確か腰袋に閉まったままだし……薄力粉も…うん。大丈夫そうだ。


バターと砂糖と…果物も…よし。


ーー…お前は美味い飯を拵えるが人間とは皆そうなのか?


腰袋を確認してるとオルドが聞いてきた。


「料理は得手不得手があるから皆ではないよ。俺より上手に作る人も沢山いる」


ーーそうか。人は欲に溺れ争いばかりしている下等な種族と思っていたが見識が浅かったな。


ーー…きっとイグニールは人の善き心に惹かれ力を貸したのでしょうね。当時は理解できなかったけど悠と過ごしてその気持ちが分かったわ。


「イグニール?」


「もぐもぐ…ごく…ん。かつて人と契約を交わした焔飛龍イグニールという龍が居たのじゃ。…彼奴は変わり者じゃったからなぁ」


ほっぺに食べ残しを付けて話すアジ・ダハーカ。


「ほっぺに食べ残しがついてるぞ」


タオルで拭いてやる。


「こ、子供扱いするでない!妾は龍峰のんん」


ったく世話が焼ける奴だ。


ーー最期は契約者と共に恐ろしき獣を討ち死んだと聞いている。…神獣となるより契約者に寄添い死ぬ道を選んだそうだ。


…人と契約した飛龍。何処かで聞いた話だな…。


ーー龍と人の友情…素敵なお話ね。アジ・ダハーカ様。私はそろそろ戻ります。あの子もお腹を空かせてるでしょうから。


「うむ」


「え、子供がいたのか?」


ーーふふ。言ってなかったわね。名前はオルカ。生まれたばかりの子竜なの。…あの子も孵ったらちゃんと紹介するわ。


ーー……。


そう言って飛び去る。


「赤ちゃんが居るのに稽古を手伝って貰って悪いな」


ーー水郷に外敵は居ない。人の赤子と違い竜の子は簡単には死なぬ。


「もう一つの卵は孵らんのか?」


ーーええ。…オルガは諦めず魔力を注ぎ暖めてますが無理でしょう。


「孵らないって…」


ーー…竜の卵は母親の竜の魔力で暖められ孵化する。オルカは無事に孵ったが…もう一つの卵は孵らなかった。……稀にある事だ。


「うむ。母親の竜は我が子への愛情が深い。オルガも簡単には諦められぬのだろう」


ーー……。


「アジ・ダハーカやオルドの魔力を注ぐのは駄目なのか?」


ーー…試したが無駄だった。


「妾は血が繋がって居らんし龍の魔力では下手をすれば卵自体を破壊してしまう」


「…そっか」


世話になってるし助けてやりたいが…。


最初の予定では竜の卵を持って帰るつもりだったが今の話を聞いた後じゃそんな気も失せる。


しんみりした空気のまま解散した。



〜2時間後 龍神の水郷 野営地〜



自主練習を終え野営中の遺跡に戻るとアジ・ダハーカが居た。


「漸く戻って来たか」


「どうかしたのか?」


「なに。偶には誰かと閨を供にするのも悪くないと思っての」


「えぇー…」


「ふっふーん!其方は真に運が良い男よ。妾と一緒に寝れるなぞ万夫不当の豪傑すら叶わぬ夢…。その身に余る光栄に打ち震えるが良いぞ」


ドヤ顔のアジ・ダハーカ。


「一人で寝ろよ」


「遠慮するでない。…ふにゅー。この毛布とやらは存外気持ちが良い物だのう…くんくん」


人の毛布に寝転んで匂いを嗅ぐな。


「…まぁ、一緒に寝てもいいが神樹の近くに居なくても大丈夫なのか?」


「ドラグマの神樹に干渉できる者はこの龍峰に妾を除いては居らん。…だが、悪意や敵意ある外敵は神樹を怯えさせる。妾は近付けんよう守護しているのだ。何れは其方の従魔のミコトを封じる楔となったクリファの神樹のような巨大樹に成長するぞ」


「へぇ」


にしても…クリファの神樹…神樹…?


大事な事を忘れてるような…あぁ!?



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


ーーーユウ…。ワタシハ…アマルティア!


ーーーオレイ!オレイ!


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



アマルティアに貰った神樹の種を腰袋から取り出す。


大事に持っておけってモーガンさんに言われてたが忘れてた。


何せ戦争を引き起こす物騒な種らしいからな。スイカの種にしか見えんけど。


手に持つ種を見てアジ・ダハーカが息を飲んだ。


「どうした?顔面蒼白だぞ」


「…嘘じゃろ。…信じられん。其れは神樹の種…悠よ。何処でこれを…」


アジ・ダハーカに神樹の種を貰った経緯を説明した。


〜数分後〜


「妖精アマルティアか。…其方には驚かされるばかりよ。神樹の妖精など永きに渡り神樹を守護した妾ですら見たことがない。種を授けるとは余程、気に入られたのじゃろう」


「これって凄いアイテムらしいもんな」


「凄いで済まんわ。世界中の金銀財宝より価値がある『神々の遺産』の一つじゃ。丁重に扱うのだぞ」


「ふーん…」


世界中の金銀財宝より価値がある神々の遺産…。


価値がある…?


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


『これは悠さんが大事に持っていて下さい。きっといつか悠さんの役に立つ…そんな気がします』


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「あぁ!!」


「なんじゃ。急に叫びよって。…ま、まさか妾に欲情して…し、仕方ないの。…其方は嫌いではないし…優しくするのじゃぞ…?」


毛布を被り顔だけだして頰を赤らめるアジ・ダハーカ。盛大に勘違いしてやがる。


「違うわ」


「なんじゃ。詰まらん…」


膨れっ面をする。


「なぁ、この種…つまり神々の遺産は貴重で滅多に入手出来ない代物なんだよな?」


「滅多にではない。手に入ること事態が奇跡じゃ。神にまつわる究極の秘宝の一つと言っても過言ではないぞ」


究極の秘宝。


アルマの封印を解く鍵が見つかった。神々の遺産である神樹の種なら十分な代償となる筈。


モーガンさんの言ってた通りだ。


アジ・ダハーカとの会話がきっかけになるとは思いもしなかったな。お礼に居る間は美味しい物を沢山、食べさせてやろう。


「…ふぁーあ…悠よ。妾は眠くなってきたぞ…其方も隣に来て寝るのじゃ」


「はいはいっと」


アジ・ダハーカと並ぶ一緒に寝転ぶ。悩みが一つ解決しそうだし今日はぐっすり寝れそうだ。


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